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ライバルの食品6社が協同「プロジェクトA」 食物アレルギーでも楽しい食事を

6社で協力して考案・完成させた、食物アレルギーに配慮したお子様ランチ

子供に多いとされる食物アレルギーは、保護者を大いに悩ます問題です。しかし、子供だけに限った話ではありません。成長とともに耐性化して気にならなくなる人もいますが、大人になっても悩まされている人は少なくありません。また、大人になってから発症する人もいます。

食物アレルギーがあると家族で外食を楽しむことが難しいこともあります。また、大人になると仕事上での飲み会など断りにくい会食の機会も増えますが、同様に対応しなければなりません。

各食品メーカーは食物アレルギーを低減する努力を続けていますが、2018年9月にオタフクソース・永谷園・日本ハム・ハウス食品の4社が、「食物アレルギーの有無にかかわらずみんなで食事をおいしく楽しめる社会の実現」を掲げて食物アレルギー配慮商品の普及やレシピの開発、情報発信・啓発活動に取り組む「プロジェクトA」をスタートさせました。

4社から始まったプロジェクトAは2021年1月にケンミン食品、2024年4月にエスエスケイフーズが参画して6社にパワーアップ。2025年2月には、6社による初めてのコラボメニューとして特定原材料8品目不使用の「夢のお子様ランチ」レシピを発表しました。

プロジェクトAに参画する全6社に、プロジェクトAの活動理念や食物アレルギーに配慮した商品の開発について話を聞きました。

ライバルであっても手を組む理由

――プロジェクトAへの立ち上がりからお話をお伺いしたいと思います。

永谷園 渡部:プロジェクトAの前段階として、業界紙の座談会がありました。その座談会は弊社とハウス食品、日本ハムの3社の担当者が集まって食物アレルギーについて話し合う内容です。座談会後、お互いの考えていることや悩み・課題が共通していたので各担当者が意気投合したんです。

その中で、なにか一緒に取り組めることがないかという話し合いに発展しました。そして、ともに取り組むことでもう少し可能性を広げていこうと合意し、さらに賛同したオタフクソースも加わって、プロジェクトAの最初の会合を行ないました。

永谷園 渡部さん

――日本ハムとハウス食品のお話をお伺いしたいんですが、座談会後すぐに、「やりましょう」という話になったということは、以前から問題意識を持っていたからだと思います。扱う食品の種類は違っていても、一応はライバル企業です。一緒にやろうとした理由は何でしょうか?

ハウス食品 高倉:食品を扱っている企業は、多かれ少なかれ食物アレルギーに対して何かしらの取り組みをしています。そうした取り組みの中で、やはり1社だけでは限界があることも以前から感じていました。

例えば、食物アレルギー配慮商品を新発売しても、その思いが伝わらずに商品が消費者まで届けることができないといったもどかしい経験をしているはずです。一緒にできることがあれば、より広く消費者に届けられると考えました。

ハウス食品 高倉さん

日本ハム 廣渡:食物アレルギーに対しては、弊社もさまざまなアプローチで取り組んできました。しかし、同じ想いを持つ複数の会社で切磋琢磨しながら取り組むことで、より大きな波及効果を出していけるという思いがありました。座談会を機に3社で取り組むという話は自社にとってもプラスになると判断しました。

日本ハム 廣渡さん

オタフク 田中:弊社はプロジェクトAのきっかけになった座談会の存在を知りませんでした。ただ、以前からハウス食品が活発に食物アレルギーの取り組みをしていることは聞いていました。そして、弊社が食物アレルギー配慮商品を発売するタイミングで、ハウス食品がどんな活動をしているか聞きに行くことになりました。

担当者からは、どのように食物アレルギー配慮商品に対して取り組んでいるのかとか、苦労されている点などを聞くことができました。その流れで、「そういえば、先日3社でこんな話をしたんだけど……」といった形で声をかけてもらいました。

こうして2018年9月に4社が集まり、プロジェクトAの活動が始まりました。それまでの食品業界で横串をさす取り組みといえば、スーパーのイベントでの販促などで協力したことは何度もあります。しかし、プロジェクトAのような共通の社会課題に対して協同で取り組むことはありませんでした。そういった意味で、画期的な取り組みと言えるかもしれません。

オタフクソース 田中さん

――プロジェクトAの理念は素晴らしくても、食物アレルギー配慮商品となると売上的に通常商品と比較して規模が小さくなります。ニッチな分野への参入は社内で反対はなかったのでしょうか?

永谷園 渡部:食物アレルギーで困っている人の割合は全体から見ると少ないのも事実ですが、その一方で深刻に悩んでいる人はいます。弊社は、食物アレルギー配慮商品をニッチな分野と捉えていません。割合が少ないからといって、食品メーカーが食物アレルギーで困っている人を見過ごすわけにはいきません。

食物アレルギーに対する取り組みは、それ以前から社内でも広がっていましたので、他社と協同することで取り組みを拡大できるならば前に進めていこう、とすぐに社内で話はまとまりました。

ケンミン食品 田中:販売面で売り上げ規模が小さいため、販売を継続できるかという不安はあったと思います。

また食物アレルギー配慮商品を開発するためには、原料や製造設備に課題が生じます。例えば、卵は特定原材料8品目に該当しますが、それを使わず製品をつくるなら、代替原料の確保をしなければなりませんし、アレルゲンなどが混入してしまわないような設備も必要になります。反対をすることはありませんが、現場から何かしらの反応があるとは思っていました。

しかし、会社が食物アレルギーに対応する方針を決めたわけですから、それを第一にして取り組んでいます。ただ、食品メーカーですので、原料が使えないことを理由に味を犠牲にした商品を開発する気はありません。

ケンミン食品 田中さん

まずは存在を知ってもらうことが重要

――4社で始まったプロジェクトAに、ケンミン食品とエスエスケイフーズが加入します。ケンミン食品は、どういった経緯から参画をしたのでしょうか?

ケンミン食品 田中:社長がプロジェクトAの活動を各所で見聞きしまして、参画することになりました。弊社はビーフンを取り扱っている食品メーカーです。世の中に流通している麺の大半は原料が小麦です。小麦アレルギーで麺を食べることができない方は多いのですが、ビーフンはコメを原料にした麺ですから、小麦アレルギーがある方に対応することができます。

プロジェクトAに加わることで、小麦アレルギーで悩んでいる人たちにビーフンをはじめとするコメの麺を知ってもらいたいという思いがあったのと同時に、小麦の代わりにコメを使った麺を食べてもらう機会を増やしたいという考えもありました。

エスエスケイフーズ 高石:弊社が参画した経緯は、ケンミン食品と同じで経営陣がプロジェクトAの理念を知って、その活動に興味を抱いたからです。また食物アレルギーの人から意見をもらうことが多かったので、こういった場に参加して食物アレルギーについて考えることが重要だという判断をしました。

弊社は業務用、主に学校給食における取引が多くを占めています。学校給食は喫食者の多くが小中学生ですから、早くから食物アレルギー対応には取り組んできました。

しかし、スーパーをはじめとした小売店への販売・流通は難しい面があり、そういった中でプロジェクトAに参画し、より多くの一般消費者に知っていただく機会をつくれたらと思いました。また、食物アレルギー配慮商品を普及させることは社会貢献につながりますし、自社の商品を世間に知ってもらうこともできます。

エスエスケイフーズ 高石さん

――扱う商品が業務用・家庭用と異なると、食物アレルギーへの対応内容や情報提供・発信の対象も違ってくるんですね。

ハウス食品 高倉:弊社は家庭用の商品がメインです。バーモントカレーやシチューミクス、完熟トマトのハヤシライスソースといったロングセラーブランドで食物アレルギー配慮商品も販売しています。

グループ会社では、業務用食品も扱っています。例えば、学校給食のカレールウでも特定原材料8品目不使用のものを開発しています。そうした学校給食のカレールウは、給食に関するフェアなどで情報発信・提供をして普及に努めています。

ハウス食品のロングセラーブランド「バーモントカレー」や「シチューミクス」「完熟トマトのハヤシライスソース」も特定原材料8品目不使用

日本ハム 廣渡:弊社は市販も業務用も取り扱っていますが、各販売チャネルでそれぞれの難しさがあると感じています。そうした部分はプロジェクトA全体で取り組めると思っています。

みんなの食卓お米で作ったまあるいパン(5個入)

オタフク 田中:弊社は主に家庭用がメインです。食物アレルギー配慮商品を最初に出したのは2008年です。これは食物アレルギーをメインにしたものではなく、「1歳からの」というシリーズで発売しました。

「1歳からの」シリーズは、もともと離乳食を終えた幼児向けの商品でした。この頃は、まだ塩分や香辛料を多く摂取するには早い月齢ですので、それらを低減した商品として販売したのです。

このシリーズ以外にも、食物アレルギーに配慮した家庭用商品を開発しました。今では業務用でも特定原材料8品目不使用のお好みソースを販売しています。

お好み焼きを1歳から楽しめるように開発された「1歳からのお好み焼きソース」と特定原材料8品目不使用の「KAKOMUごはん お好み焼・たこ焼の素」

ケンミン食品 田中:弊社は家庭用がメインですが、学校給食に向けても以前から販売しています。時代の変遷とともに、食物アレルギーに配慮する方向へ変わっていくきっかけになったのが、給食で取り扱うようになったことです。

食物アレルギー配慮商品は決して大多数にリーチする商品ではありません。だからといってネット通販だけで販売すると、求めていても商品を知らない消費者には届きにくいという難点があります。

スーパーなどの店頭で販売している商品は広く手に取ってもらいやすいと思います。それによって食物アレルギー配慮商品を知ってもらう入り口にはなります。そうした理由から、できるだけスーパーのような小売店で陳列したいと、どこの会社も考えているはずです。

――スーパーはネット通販と異なり、空間的な制約があります。スーパーに置いてもらうために各社で工夫されていることはありますでしょうか?

ハウス食品 高倉:食物アレルギー配慮商品を新発売しても、爆発的に売り上げ伸びることはありません。ただ、小売業の方々も食物アレルギーという社会問題があることは十分に認識しています。

そうした商品を扱うことは小売業の社会貢献にもつながり、長期的には売上に結びつくことも理解していると思います。そのため、食物アレルギー配慮商品を否定的に捉えている小売店はないはずです。

プロジェクトAでは、商品の特徴を分かりやすく伝えられるようにリーフレットやPOPを協同で作成することもあります。1社単独では訴求しづらいこともありますが、6社で営業・販促することでより多くの人に知っていただくことができます。それが小売店にも波及し、商品棚に置いてもらえるようになればよいと考えています。

日本ハム 廣渡:普段、私はサステナビリティ部に所属しています。スーパーに置いてもらうための工夫という点からは少しずれますが、近年、投資家や消費者は企業のESGに対する取り組みを注視しています。サステナビリティの観点からも食物アレルギーへの配慮が求められることが増えました。

メーカーや小売店がそれぞれ単体で対応するのは難しく、協力していくことが重要です。これは食品メーカーだけでなく、小売店にも同じように求められる風潮は強くなっていると感じます。

オタフク 田中:プロジェクトAは分科会形式を取っています。その分科会のひとつに営業支援分科会があります。小売店に置いてもらうためには、営業担当者に食物アレルギーの知識がなければ仕入担当者に説明ができませんし、消費者に安心して購入してもらえる環境づくりにつながりません。社内の営業から食物アレルギーに関する質問も増えてきていて、関心も高まっています。

そこで知識がなくても提案がしやすく、求められた際にも対応できるよう営業をサポートするための活動をしています。例えば、小売店に向けての6社共通の提案フォーマットといったツールを作成しており、食物アレルギー配慮商品の販路開拓にも弾みがつくと考えています。

エスエスケイフーズ 高石:昨年プロジェクトAに参画したことをきっかけに、1社単独ではできない取り組みや活動を各社と協力することで進めることができると考えています。プロジェクトAの活動理念「食物アレルギーの有無にかかわらず、みんなで食事をおいしく楽しめる社会の実現」につながるよう今後も努力していきます。

食物アレルギーがあると「お子様ランチ」は選びにくい

――2025年2月に6社で考案・作成したお子様ランチのメニューを記者発表しています。単に、食物アレルギーに配慮したと言っても漠然としていますが、お子様ランチのようなメニューを提示されると視覚的に一般消費者はわかりやすいように思います。お子様ランチで工夫された点はありますでしょうか?

ケンミン食品 田中:2023年ぐらいに広報分科会で「2024年は何に取り組もうか?」という議題が出まして、その議論からお子様ランチが選ばれました。

お子様ランチに決まった経緯を説明しますと、コロナ禍でそれまでプロジェクトでやっていたイベントや人が集まるような取り組みができなくなったことが影響しています。その間はイベントの代わりに食物アレルギーに関する副読本を制作して学校への配布をしました。また、副読本を活用した出前授業も始め、現在も食物アレルギーへの理解を深めてもらう活動として取り組んでいます。

そうした小学校高学年を対象にした出前授業を4年ぐらい続けてきましたが、コロナ禍が収束した現在は当初の考えに立ち戻って食物アレルギーのことを広く知ってもらえる機会をつくろうという話になりました。

そこで過去にも取り組んできたレシピ作成に取り組みますが、アンケートをもとにテーマをお子様ランチに決めました。お子様ランチに決まった後も、お子様ランチで何を食べたいかというアンケートを取りました。その意見をベースにして、レシピ分科会で試行錯誤しながらお子様ランチのレシピが完成したのです。

プロジェクトA「お子様ランチ」記者発表会の様子

オタフク 田中:そのアンケートでは、食物アレルギーがあると家族で外食に出かけにくいという悩みが寄せられていました。特に、多くの食材を使っているお子様ランチは選びにくく、お子様ランチを食べたことがない家族が43%もいたのです。

そうした家族に、特定原材料不使用のお子様ランチだったら食べたいですか? という質問をしています。その質問には、9割以上の家族が食べたいと回答しました。そのような強い要望を受け、このテーマで提案するという結論に至ったのです。

ハウス食品 高倉:プロジェクトAで考案したお子様ランチは、小麦・乳・卵・落花生・そば・えび・かに・くるみを使わず、食物アレルギーがある人も、ない人も「おいしい」と思える味になっていて、挑戦した価値があったと思っています。

弊社はカレー・シチュー・ハヤシの食物アレルギー配慮商品を販売していますが、お子様ランチの中に、カレー風味の鶏から揚げなどを加えました。いわゆるカレーを、そのままカレーとして食べるのではなく、アレンジにも幅があるということを同時に提案できたのではないかと考えています。

食物アレルギーがある方は、メニューが定番化してしまうという悩みを抱えています。プロジェクトAのお子様ランチをきっかけに、こういったアレンジもできるんだということを消費者に伝えられました。従来、アレンジは非常に手間がかかると思われがちですが、そうしたイメージも刷新できたと思っています。

日本ハム 廣渡:商品開発において多くの工夫を取り入れていますが、情報発信の面でお子様ランチに取り組んだことには大きな意義があると感じました。

一般的に食物アレルギーに配慮した食品は美味しくないというイメージが強く、開発での努力やおいしさが伝わりにくいという実情がありました。しかし、今回のお子様ランチを通じてそのイメージを払拭する一助となったと思います。

オタフク 田中:食物アレルギーに配慮した食品だと味が落ちるというイメージもあって、家族一緒に食べることがないという声も多くありました。そこで家族全員で食卓を囲み同じ料理を楽しんでいただくことを目指して、2016年に「KAKOMUごはん」シリーズを発売しています。このシリーズでは、家族みんなが喜ぶような人気メニュー用の商品をラインアップしています。

ハウス食品 高倉:弊社の食物アレルギー配慮商品はバーモントカレー、それからシチューミクス、そして完熟トマトのハヤシライスソースと世間的にもロングセラーとして認識されているブランドを活用することを念頭にして開発を進めてきました。これは食物アレルギー配慮商品を開発する話が出てきたときから大事にしているコンセプトです。

特にバーモントカレーとシチューミクスは、牛乳のまろやかさが重要なポイントになっています。それを牛乳不使用で開発するので苦労しましたが、こだわり抜いて実現に漕ぎ着けました。

カレーもシチューもハヤシライスも、小麦粉を使ってとろみを出すことがおいしさの秘訣です。その小麦粉を使えないので、米粉で代用しながらも中華丼のあんかけようなとろみではなく、カレーやシチュー、ハヤシライス独特のとろみを再現することにも気を配っています。こうした試行錯誤の成果もあって、通常品と変わらないおいしさを実現できたと自信を持っています。

また、粉末状にするといった形状を変えることで通常商品と区別できる工夫をしています。

永谷園 渡部:弊社は食物アレルギーがある方もない方も、同じものを同じように楽しくおいしく食べていただきたいという思いを持っています。商品展開として食物アレルギー配慮商品ということをことさら強調してはいません。子供向けの商品は、大部分は食物アレルギーに配慮した品質にしています。

「くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生・大豆」不使用、「香料・着色料」無添加の「A-Label(エー・ラベル)」のふりかけは「おかか」「さけ」の2種類を販売

日本ハム 廣渡:日本ハムは「みんなの食卓」というブランドを展開しています。このブランド名には、食物アレルギーがある方も、そうでない方も、家族や友達と一緒に同じ食卓を囲んでほしいという思いが込められています。

弊社は山形県で食物アレルギー対応の専用工場を運営しています。この工場では、食物アレルギー特定原材料8品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに・くるみ)の持ち込みを徹底的に防止する運用をしています。原材料の調達や管理に細心の注意を払い、検査キットを使用して厳重にチェックしながら開発・製造に取り組んでいます。

ケンミン食品 田中:弊社は創業から75年になりますが、創業当初からお米だけを使ったビーフンがメインの商品です。原料は米だけですので、もうそれ以上のアレルゲンはありません。

そうしたビーフンの製造技術を活かして、ライスパスタという商品も出しています。これも原料は米だけになりますが、パスタのような食感と味を楽しめるように工夫をしました。ライスパスタは食物アレルギーに特化した商品として売り出しているわけではありませんが、食物アレルギーのある人でも食べられるということを少しでも知ってもらえたらと思っています。

さらに、昨年からはグルテンフリーのラーメンを販売しています。これは米とかんすいで中華麺を作り、さらに小麦を使わない醤油でスープをつくっています。こうして、昨年春には醤油ラーメン、今年の春にはとんこつ風ラーメンを新発売しました。

お米100%ビーフンやなどお米だけでつくる麺はコシのある食感を楽しめる

エスエスケイフーズ 高石:弊社はドレッシングを扱っています。マヨネーズやごま、シーザーサラダなどの乳化ドレッシングは製造過程で卵を使うことが一般的です。そのため、卵不使用でマヨネーズやドレッシングを製造することは一番悩ましい問題でした。特定原材料8品目不使用ですと、まず味の面が気になりますが、開発や製造工程を工夫することで、通常の商品と遜色ない味をつくりました。

また、外部の管理栄養士に味の評価をお願いし、9割以上の管理栄養士が食物アレルギーのある方におすすめしたいと評価していただいております。

たまごアレルギーがあっても安心して食べられるマヨネーズタイプの調味料

――プロジェクトAでは、次は何に挑戦したいという話は出ていますか?

ハウス食品 高倉:今回はお子様ランチになりましたが、それぞれ使用した食材を単品で見ていくと、どれも子供から大人まで楽しめるようになっています。

食物アレルギーは子供のイメージが強いのですが、今年の法改正で表示が義務化されたくるみ、そのほか果物系などは、大人になってから食物アレルギーになる人も多いんです。これまで平気だった大人でも食物アレルギーの当事者になる可能性もあります。さまざまな形で食物アレルギーへの理解を深めることができたらと考え、今後も情報発信・情報提供を継続・強化することが重要だと考えています。

小川 裕夫

1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経て、フリーランスに転身。専門分野は、地方自治・都市計画・鉄道など。主な著書に『鉄道がつなぐ昭和100年史』(ビジネス社)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『都電跡を歩く』(祥伝社新書)、『封印された東京の謎』(彩図社文庫)など。