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「充電器は自分で用意」がPCの新常識? 新Surface Proの挑戦【Watch+】

6月10日、マイクロソフトのPCシリーズ「Surface」の新型として、Copilot+ PCの「Surface Laptop 13インチ」と「Surface Pro 12インチ」が発売開始されました。最新のAI機能を搭載したCopilot+ PCが、比較的手頃な価格で販売されることもあり注目度は高いようです。

一般的なノートPC型(クラムシェル)の「Surface Laptop 13インチ」は164,780円から。キーボードが外れる2in1の「Surface Pro 12インチ」は149,380円からとなっています。

発表会には行けなかったのですが、個人的にも、価格やパフォーマンス、新機能等を含めて注目している製品です。その中で「おや?」って思ったポイントが「充電器」についてです。笠原一輝氏によるSurface Pro 12インチのレビュー記事を読んでいたところ「ACアダプタが付属しない」とのこと。PCでACアダプタが付属しないというのは、あまり聞いたことがありません。

調べてみると、デルの一部PCでは、「オプション」として非同梱を選べるようですが、一般的とは言えなさそうです。

Surface Pro 12インチ

一方、スマートフォンにおいては、充電器が付属しないのはこの数年の「当たり前に」なっています。iPhoneでは、2020年10月のiPhone 12シリーズから標準で充電器が付属せず、Androidにおいても同様に充電器が付属する製品を探すのは難しい状況です。

スマホにおける充電器の非同梱化については、環境対応やコスト削減などを背景に進んでいます。iPhoneの充電端子がLightning端子からUSB Type-Cに統一されたのは2023年以降ですが、この環境対応等を目的とした規制がその背景にあります。こうしたこともあり、USB Type-Cの充電器はほとんどの人が所有しており、機器を買い替えたからといって新たな充電器を買う必要性は相当低くなっています。

こうした流れが、PCの世界にも波及しだしたというのが、今回のSurface Pro 12インチの対応からも感じられます。スマホと似たアーキテクチャの「Snapdragon X Plus」を搭載したCopilot+ PCから対応するのも象徴的なように感じました。

マイクロソフトに聞いたところ、充電器が付属しないSurfaceは今回のSurface Pro 12インチが初とのこと。今回充電器を非同梱とした理由についても聞いてみました。

Surfaceは、より良いユーザー体験を提供しながら、廃棄物の削減にも取り組んでいます。マイクロソフトは2020年に、2030年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、ゼロウェイストを達成する目標を発表しました。充電器を同梱しない決断は、この取り組みの一環です。これはEUの「共通充電器指令」にあるように、電子廃棄物の削減を促進する国際的な動きに沿った対応です。

とのことです。やはり環境対応や廃棄物削減が大きなテーマになっているようです。

一方スマホに比べると、一般的にノートPCのほうが消費電力は高く、スマホ用の充電器などでは十分な速度で給電できないなどの不安もあります。Surface Pro 12インチでは、仕様上は充電器として「45W以上のUSB Type-C PD」を推奨していますが、自身が持つUSB PD充電器がこの能力を満たしているかを把握していないと、PCの性能をフルに発揮できません。

とはいえ、自分が使っている充電器のスペックは詳しく把握している人がすべてではありません。その意味では、すべてのパソコンで充電器を非同梱とするのは、まだ時期尚早でしょう。

新Surfaceにおいても、一般的なクラムシェル型の「Surface Laptop 13インチ」は、ACアダプターが付属します。Surface Pro 12インチは「わかっている人」向けという判断がなされているのでしょうか?

Surface Laptop 13インチにはACアダプターが付属する

この判断についてマイクロソフトは、「市場動向や一般的なユーザーのニーズに基づいて、異なる梱包の決定を行なうことにしました。Surface Proは最低27Wの充電器が必要ですが、(出力としては)スマートフォンの充電器などでも一般的です。新しいSurface Laptop 13インチは、最低40Wの充電器が必要で、持ち合わせている人は少ないと考えられる」とのこと。電子廃棄物の削減等の目標と、ユーザーの適切な電源利用のバランスを取って判断しているようです。

ともあれ、これから徐々にノートPCも充電器非同梱が増えていくことにはなりそうです。前述のように自分のパソコンでどのACアダプターが適合しているかわからない、という人もいるとは思いますが、このあたりは、販売店や周辺機器メーカーにとっては新たなチャンスになるのかもしれません。

臼田勤哉