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楽天グループの「AIアバター」決算で困ったこと【Watch+】

楽天グループ 三木谷 浩史社長(本人)

楽天グループは5月14日、2025年1〜3月期(第1四半期)の連結決算を発表しました。事業・業績的な注目ポイントはいくつかあったのですが、そこは別記事に譲るとして、内容“以外”のトピックと言えるのが、質疑応答以外の発表本編部分が三木谷浩史社長など登壇者の「AIアバター」で行なわれたことです。

楽天グループの決算会見は、近年は基本的にオンラインとなっています。加えて今回は、三木谷社長をはじめとする登壇者による、業績説明がAIアバターによる読み上げで行なわれました。実際に見ていただけるとわかると思いますが、アバターの動きは滑らかで声質も本人に近いのですが、読み上げが平板で抑揚なく、文章の区切りがやや不自然だったりと、聞きにくさを覚えました。

楽天グループ 2025年度第1四半期決算説明会(連結)

AIアバターの三木谷社長が決算発表

ちょっと眠くなるというか集中して聞けないという印象で、オンラインとはいえ、普段は表情や抑揚から多くの“情報”を得られていたのだな、と感じました。

率直に言うと、本人による決算発表よりも「退屈」でした。編集部でも、これだったら原稿をそのまま公開してほしいね、みたいな話をしながら発表を聞いていました。

このAIアバター発表で、編集部内で議論になったのが、「これは三木谷社長のコメントとして使っていいのか?」という点です。例えば楽天モバイルの戦略として「2025年はオフラインチャネル強化とローカライズマーケティングを強化する」というAIアバターの発言は、三木谷社長の発言として引用するか、それとも「三木谷社長(AIアバター)」などと表記すべきか、といったことです。

実際、質疑応答では記者から、「AIの三木谷さんの発言をそのまま記事で引用してよいか?」という質問がありました。

三木谷社長(本人)からの回答は、「AIに関する私の発言については、スクリプトも確認した上で発言しているので、私の発言として引用していただいて問題ありません」とのことでした。

AIアバターを導入すると、発表側だけでなく、報道側でもそれに応じたルール作りなどが必要になってくるのかもしれません。ともあれ、楽天グループの発表においては、もう少し聞きやすさが向上することを期待したいと思います。

課題だけでもなく、メリットも少し感じられました。AIについて発表したティン・ツァイChief AI & Data Officerの説明では、AIアバター採用の理由について「日本語で話すのは私よりAIのほうが上手だから」と言及していました。確かにAIアバターならではの良さはまだまだありそうです。

個人的には、AIアバター決算について「大歓迎」というわけではないですが、新たな価値やわかりやすさの向上につながることを期待したいと思います。

臼田勤哉