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進化した電子チケット事情。スクショ不可で不正転売抑止に

昔は紙チケットが主流でしたが、今は電子チケットが台頭してきています

コンサートやスポーツ観戦などイベント時に必須のチケット。昔は紙チケットが主流でしたが、ここ数年で電子チケットがかなり台頭してきています。

その多くはスマートフォンでQRコードを表示し、入場時に機械にかざす方法。しかしQRコードは不正がしやすいという一面があり、スクリーンショットを撮って悪用されるということも。チケットが手に入りにくい人気公演の場合、1つのQRコードスクショが複数人に転売され、入場できない人が続出するということもありました。

こうした問題を受け、時間制限付きのQRコードチケットや、入場時に身分証の提出が義務付けられるイベントが増えるなど、各社さまざまな不正転売対策を講じています。また、2019年にはチケット不正転売禁止法も施行されました。

しかし、SNSやチケット転売サイトでは、今でも定価以上で高額転売されているチケットを多く見かけます。

QRコードのチケットは、スクリーンショットで複製しやすいという一面があります

筆者は普段、ミュージカルや芝居の観劇、野球観戦に行くことが多く、10年以上電子チケットを使ってきました。コロナ禍でイベントに参加する機会は減りましたが、その中でもこれは新しい、転売対策がかなり進化したな、と思ったのが「MOALA Ticket」の電子チケットです。

イベントによってさまざまなチケットの販売方法がありますが、ここでは筆者の経験を一例として紹介したいと思います。

なおMOALA Ticketは、チケットぴあなど大手チケット販売サイトと連携。わざわざこのサービスのためだけに新規でアカウントを作る必要がなく、今回はチケットぴあで抽選申込みから受け取りまでスムーズに行なえました。

MOALA Ticketの電子チケットは今までとどう違うのでしょうか

スクショ不可の電子チケットと専用スタンプ

MOALA Ticketの電子チケットは、スマートフォンでチケットを表示すると、入場スタッフがスマホの画面に専用のスタンプを押して、チケットの“もぎり”に相当する行為をしてくれるというもの。

最初はよくわからなかったのですが、実際に入場のときに電子チケットを見せると、スタッフが画面の空白部分にスタンプを押してくれました。スマホの画面に物理的なスタンプなんてどうなるのかしら、と思いましたが画面上のチケットにしっかり押印されています。新感覚……!

このスタンプの特徴は、「スクリーンショット画像には反応しない」こと。国際特許を保有している技術とのことで、一度電子スタンプが押されたチケットを他の人が使用することはできません。

MOALA Ticketのサンプル画面。スマホ上の電子チケットに専用のスタンプを押します。スクリーンショットの画像には反応しません
実際に使用したチケット。左が使用前。右がスタンプ押印後。一度電子スタンプが押されたチケットを、他の人が使用することはできません

電子チケットの表示は、購入サイトからIDとパスワードを入力してマイページにログインして行ないます。これらにより、問題視されていた「スクリーンショット画像での転売」はできなくなります。

なおイベントによっては第三者へチケットを譲れる「分配」機能なども使えますが、筆者の経験上チケットが取りにくい人気イベントは分配機能を使用不可にしていることが多いです。

今回筆者が観劇したミュージカルも同行者以外には分配不可で、さらに電子チケットを受け取る際に、抽選申込時に登録した電話番号でのSMS認証が必要でした。

チケットが2枚以上欲しい場合は、申し込み時に同行者の名前と電話番号も登録が必要で、当選してチケットを受け取る際には同行者もSMS認証をしなくてはいけません。

試しに申し込み時と異なる電話番号を入力してSMS認証を行なってみましたが、当然認証はされませんでした。さらにセキュリティの厳しいイベントだと、顔写真の登録も必要になります。

電子チケットを引き取る際に、抽選申込時に登録した電話番号でのSMS認証が必要でした

チケットを譲りたい場合は公式リセール

気になるのが、体調不良などでイベントに参加できなくなった場合のこと。ですが、こうした転売対策をしているイベントだと正規のリセールサービスを用意していることが多く、個人間での金銭のやり取り不要でチケットの取引ができます。

リセールは、所持しているチケットを出品した後、買い手がいた場合に取引が成立します。もちろん定価での販売となり、筆者が使ったサービスは売り手側がリセール申込み手数料としてチケット代の10%と口座送金手数料275円を負担するシステムでした。

第三者にチケットを譲りたい場合は、リセール機能を使います

紙チケットが主流だった以前は、人気公演のチケットが余った場合、チケット転売サイトやSNSを通して定価以上の高値で転売する人が多くいました。転売ヤーと呼ばれる人以外にも、同じ公演を複数のアカウントで何枚も申し込み、当選した中から一番良い席で自分は観劇し、残りは高額転売するという人がいるのも実情です。

しかし、上述の対策がされているイベントの電子チケットは、紙チケットのように簡単に人に渡すことはできません。今回筆者が参加したイベントは紙チケットでの販売もあったため、高額転売が完全になくなった訳ではありませんでしたが、それでも以前よりはかなり減っていました。

その代わりに定価販売のリセールサービスが活発に利用されており、効果はしっかりあるなぁと感じました。

筆者もリセール機能を使いましたが、すぐに買い手が見つかりました

1つだけ面倒だったのは、申し込み時に同行者の名前と電話番号も登録しなくてはいけないこと。チケット申込み期間からイベント当日までは3カ月ほど日が空くことも多く、友達と行きたいと思ってもお互いの予定がまだわからないということは多々あります。

当選してから同行者登録だと転売対策の意味がないので難しいですが、良い改善策ができてほしいところです。まぁ友達の予定がわからなければ1人で行くのですが……。

筆者はチケットの申し込みや購入に慣れているので複雑に感じることはありませんでしたが、申し込みが面倒と感じる人もいるでしょう。しかしチケットが取りづらい人気公演の場合は、これだけやらないと不正転売が減らないのも事実。

まだ課題はありますが、新たな仕組みが生まれたことで不正転売の抑止には一定の効果があったと思います。今後さらに浸透していくことに期待したいです。