文具知新
大人の万年筆デビューに「ライティブ」を全力で推す理由
2026年1月28日 08:40
文房具について書いたり描いたりしている仕事柄、友人・知人から文房具に関する相談を受けることがあります。その流れで「万年筆を使ってみたいんだけど、おすすめは?」と聞かれたら、ここ数年は迷わず「ライティブ!」と答えています。
言わずと知れた筆記具界の雄であり老舗の万年筆メーカーでもあるパイロットが作る「ライティブ」(2,750円)は、エントリーモデルの位置付けでありながら万年筆が万年筆であることの良さをしっかりと味わえる1本なのです。それでいて、ボールペンやシャープペンシルに慣れた人でも気軽に使える万年筆として、全力でおすすめしたい理由をご紹介します。
万年筆らしい柔らかく滑らかな書き心地
万年筆の最大の持ち味といえば、なんといっても軽い筆圧でサラサラと書けることです。ボールペンやシャープペンシルは、ある程度の力で紙に押し当てなければ書くことはできませんが、それは「書く原理」から考えれば仕方のないことです。ボールペンはインクのついたボールが回転することで、シャープペンシルは芯が紙に擦れて削れることで「書く」を実現しています。
万年筆はそれらと違い、毛細管現象で染み出すインクによって書きます。つまり原理上は、ペン先と紙がほんのわずかでも接してさえいればOK。筆圧をかけなくても自然とインクが出るので、紙に押し当てる力はほとんど必要ありません。
力がいらないということは、疲れにくいということ。例えば、長時間に及ぶ会議でノートを取り続けなければいけないような時には、その効果を強く実感します。また、サラサラと抵抗なく書けるので、思考の妨げになりにくいというメリットも。パソコンで資料を作り始める前の企画やアイデア出し、下書きにもぴったりです。
ライティブも、そんな万年筆らしさをしっかりと味わえる1本となっています。初めてペン先を紙に乗せた瞬間から、長年使い込んだかのように柔らかな書き味は、一度使えば病みつきになること間違いなし。ペン先の太さはF(細字)とM(中字)の2種類が用意されています。潤沢なインクフローでより滑らかな書き心地を堪能したいならM、手帳などに細かく書き込みたいならFを選ぶと良いでしょう。
手に取りやすい価格
万年筆といえば、しなりのある18金や14金などの金を使ったペン先(いわゆる「金ペン」)が最良というのが定説です。しかし昨今の金価格高騰の影響もあり、金ペンは安いものでも3万円前後と、「ちょっと試してみようかな」で手を出すことのできる価格ではなくなってきています。高価な万年筆は持ち運びや取り回しにも気を遣いますし、ガシガシ使う日常の筆記具としての気軽さはありません。
そこで入門者向けの万年筆で用いられるのは、ステンレスなどの合金を使ったペン先、いわゆる「鉄ペン」です。先に述べたように筆圧をかけずにサラサラ書けるのが万年筆の良いところなのですが、安価な鉄ペンの中には、ペン先がカリカリと紙に引っかかる感じが気になるものがあるのも事実です。
ライティブは2,750円というリーズナブルな価格でありながら、鉄ペンとは思えないほど滑らかな書き心地を実現しています。おそらく、ペン先の加工や研磨の技術が優れているのでしょう。この価格帯の製品にこの仕上がりを持ってくる辺りは、さすがパイロットと言うほかありません。
3,000円弱という価格は普段使いのボールペンやシャープペンシルと比べると高価かもしれませんが、社会人が使う高級筆記具としては決して高過ぎることはないでしょう。鉄ペンなのに金ペンにも迫る書き心地が味わえるライティブは、コスパで言えばむしろ安過ぎるとさえ思います。
普段使いに便利なはめ込み式のキャップ
もうひとつ、ライティブがいいなと思うのはキャップがはめ込み式になっているところです。
万年筆の最大の敵は乾燥です。しばらく使わずに放置してしまって、書き出しが掠れるだけならまだしも、最悪の場合はインクが内部で固まって詰まってしまうことがあります。そのため、本格的な万年筆はその多くがはめ込み式よりも気密性の高いネジ式を採用しています。
しかしノック式のボールペンやシャープペンシルに慣れた人からすると、ネジ式のキャップはちょっと面倒です。「せめて引っぱるだけでキャップが外れるはめ込み式が便利だけど、乾燥しやすいんでしょ? そうなるとメンテナンスも大変そう……」と思ったそこのあなた! なんとライティブのキャップは、はめ込み式でありながら乾燥しにくい仕様になっているのです。
秘密は、独自開発のインナーキャップ。これがペン先をしっかり密閉し、乾燥から守ります。使用頻度がそれほど高くないライトユーザーには嬉しい工夫ですよね。私のようにペン先の乾燥にさんざん泣かされてきた身からすると、しばらく使っていなくてもササッと書き出せるライティブはちょっと感動ものなのです。
シンプルでモダンなデザイン
余分な装飾のないシンプルでモダンな佇まいも、私がライティブを推したいポイントのひとつです。万年筆というと、ちょっとレトロでクラシカルなイメージがありませんか? もちろんそれも素敵ですし、革の手帳やスーツに合わせてビシッと決めればとてもカッコいいと思います。しかしオフィスシーンでもカジュアル化が進んだ昨今、Tシャツ&ジャケットにスニーカーのようなコーディネートだと、ちょっと万年筆だけ浮いてしまうかも? な感覚も否めません。
じゃあ、とエントリーモデルのカジュアル万年筆に目を向けてみます。同じパイロットの「カクノ」などが有名です。しかしそれらは子供でも使えるようにというコンセプトでデザインされたものも多く、ビジネスシーンに持ち込むにはちょっとポップでかわいらし過ぎるかも……という印象です。特に男女問わずクールなテイストを好む方は、普段の服装や持ち物に合わないと感じることもあるかと思います。
ライティブはその点、キチンと感とカジュアル感のバランスが絶妙にちょうどいいのです。軸のカラーバリエーションもモノトーンやネイビーなど落ち着いた色味がそろっているので、お仕事シーンにも違和感なくマッチします。
コンバーターでインク替えも楽しめる
万年筆に少し慣れてきたら、色々なインクを入れて楽しみたくなるかもしれません。そんな時にはコンバーター(インクカートリッジの代わりに万年筆に差し込んで使うインク吸入器)を使います。パイロットのコンバーターは2種類あり、ライティブはそのどちらにも対応していますが、私のおすすめは「CON-70N」(1,100円)との合わせ使いです。
CON-70Nを推す理由は、まず容量が1.1mlとカートリッジと遜色ない(むしろちょっと多い?)ほどインクがたっぷり入ること。また、インクの吸入方法がプッシュ式なことです。コンバーターは先端を回転させてインクを吸い上げるものが多いのですが、プッシュ式は先端をシュポシュポと押すだけで良いので片手でも出来ますし、比較的手間がかかりません。
そして何よりもこの見た目! 特に透明軸のライティブにCON-70Nを入れると、初めからこういう製品だったのかな?という一体感です。なんていうかもう、ただただカッコよくないですか? インクの色や残量も一目瞭然で、個人的には一番好きな組み合わせです。
もちろん、カートリッジにも予備のインクを持ち運びやすい、出先での急なインク切れにもすぐに対応可能などのメリットがあります。カートリッジで手軽さと安心感を選ぶか、コンバーターで好きなインクと遊ぶか。目的やシーンに合わせて使い分けるのも、万年筆の楽しみのひとつです。
万年筆ライフを気軽に楽しもう!
まとめると、「書き心地の良さ」「コスパの高さ」「初心者でも扱いやすい気軽さ」「TPOを選ばないデザイン」「慣れればインク替えも楽しめる拡張性」、この全てにおいて絶妙にバランスが取れていることが、私がライティブを「大人の初めての1本」として全力で推す理由です。
万年筆は、たしかにボールペンやシャープペンシルと比べると扱いに手間がかかる筆記具です。しかしその書き心地はやはり唯一無二。多少の手間をかけてでも、使う価値はあると思っています。
それに手間といっても、そんなに難しいことではありません。万年筆にとって一番のメンテナンスは、とにかくこまめに使うことなのです。その点、気軽でアクティブに使えるライティブなら、自然と出番が増えるので意識的なメンテナンスの手間も減る、というわけ。今年は万年筆にチャレンジしてみようかな? という方は、まずライティブから始めてみるのはいかがでしょうか。












