西田宗千佳のイマトミライ

第134回

2画面スマホ「Surface Duo 2」、使い勝手とコスパの課題と可能性

Surface Duo 2。別売の「Surface Slim Pen 2」と「Surface Duo 2 ペン カバー」をつけた状態

マイクロソフトは1月11日から、同社製2画面スマートフォン「Surface Duo 2」を発売した。27日には、プレス関係者向けに、特徴や販売施策を説明するためのオンライン説明会も行なった。

テレワーク時代にマッチした「Surface Duo 2」の優位性とは?

Surface Duoシリーズは、マイクロソフトが「Surface」ブランドで販売するスマートフォンであり、日本では第二世代の「Duo 2」から販売されることになる。Duo 2の特性を実機で確かめつつ、マイクロソフトの戦略を考えてみよう。

「プロダクティビティ」に特化。Androidで「Surface」の理由

「Surface Duoはゲームチェンジャーになる。Surface Duo 2はまさに『Surface』だからです」

プレス向け説明会に登壇した、米マイクロソフト・バイスプレジデントのマット・バーロウ氏はそう説明した。

米マイクロソフト・バイスプレジデントのマット・バーロウ氏

SurfaceはマイクロソフトのPCブランドだが、彼はなにもSurface Duo 2がPCである、と言っているわけではないだろう。

Surfaceは「プロダクティビティ(生産性)の向上」を重視したPCを標榜している。2画面スマホであることを活かし、スマートフォンのアーキテクチャでありながらプロダクティビティの向上を目指したのがSurface Duoであるならば、狙いは同じなのでこれもまた「Surfaceであることに違いはない」という主張なのである。

マイクロソフトはプレゼンテーションの中で、「ユーザーの72%が、スマートフォンでの生産性に限界を感じている」と説明している。

説明会の資料より。スマホでは72%のユーザーが生産性に限界を感じているという

確かに、狭い1画面の中でタイプと表示の両方を行なうのは限界がある。PCと同じ効率、とはいかない。

そこで、2つの画面をつなげて広くし、2つのアプリの同時使用をやりやすくし、持ち方によってはキーボードを広く表示し、タイプしやすくする。タブレットを持ち運びやすくしたような構造と言えるのが、いわゆる「2画面」スマホであり、同じことを折り畳みの画面で実現したのが「二つ折りスマホ」だ。

Surface Duo 2の場合に二つ折りと違って中央に「継ぎ目」が出てしまうが、本体を薄くし横幅を広くすることを狙った作りになっている。

Surface Duo 2は2画面を横につないだ構造で、薄さと画面の広さを両立している

アプリを並べた時の横幅が広いことから、使ってみると、確かに使いやすい。Galaxy Z Foldは二つ折りなので継ぎ目が目立たないが、一方で1アプリあたりの横幅が狭い。複数のアプリを同時に使うというより、「広い画面で1アプリを使う」ような使い方に向く。

メールアプリとオフィスアプリを同時に開いてコピペしながら書類を仕上げたり、Microsoft Teamsで会議をしながら資料をチェックしたりするなどの使い方をするなら、アプリを2つ同時に立ち上げるのがいい。そういう使い方をするなら、Duo 2は便利である。

別売になってしまうが、今回からSurface Slim Pen 2にも対応し、メモを書くにも楽だ。

また、コミックを読む場合、「見開きで読める」のはかなり快適だ。

Kindleアプリで、コミックを見開きで表示。使用したのは、鈴木みそ氏のコミック「銭」。著者より許諾を得た上で利用している

問題はコスパの悪さ、アプリを含めた最適化の課題

とはいうものの、Surface Duo 2には課題もある。

一番の課題は「コストパフォーマンス」だ。

Surface Duo 2はスマホの中でもかなり高い製品に当たる。ストレージ容量が128GBのモデルでも18万4,580円もする。

Surface Duo 2は、カラーが2色あり、ストレージ容量(128GB、256GB、512GB)によって価格が異なる

動作はかなり快適なのだが、iPad miniが6万円ほどで買えることを思うと、「似たことをするために払うコスト」で言えば高い、と言わざるを得ない。これは二つ折りであろうが2画面であろうが、スマホをベースとした機器に共通の欠点で、Duo 2独自の欠点というわけではない。

価格の問題を解決するため、サムスンなどは、携帯電話事業者と連携し、買取りプログラムなどを使って、できるだけ安価に端末を手にできるような施策を用意している。

しかし、Surface Duo 2はそれがない。日本マイクロソフトも「現状、携帯電話事業者を通じて販売する予定はない」とする。

すべて5G対応のSIMロックフリー製品なので、なんの契約も考えず、オープンな市場で端末だけをシンプルに購入すればいい……というのは1つの魅力だが、コスパの面ではマイナスである。

ソフトがDuo 2向けに多数最適化され、Duo 2を使うことが圧倒的に有利な状況であるなら、また話は別だろう。だが、現状はそこまで最適化されたアプリが多いわけでもない。マイクロソフト製アプリは最適化されているが、Gmailを含むGoogleのアプリはそうではない。

マイクロソフト側は電子書籍に期待しており、「Kindleの最適化を進めた」としているものの、実際には、日本語で重要な「縦書き表示」では最適化が行なわれていない。日本語・英語を問わない横書きの表示と、コミックのような見開き表示の時だけ見やすくなる……といったところだろうか。どうも、日本市場でのアプリ開発は後手に回っているように思える。

Kindleアプリで日本語の縦書き書籍を表示した場合。最適化がなされていないので、中央が一文欠ける時がある
同じくKindleアプリだが、横書きなら、英語・日本語とも最適化されているので、中央が欠けることはない

こうした部分に改善を加えることが、日本でSurface Duo 2を売る上で重要なことではないだろうか。企業向けなどで、ソリューションとセットで導入する場合はあるかもしれないが、コンシューマ市場での販売を増やすなら、やはり、携帯電話事業者との連携は目指すべきだ。

印象は「良好」だが、今後の改善をさらに期待

と、苦言を述べたものの、筆者個人として、Surface Duo 2にはかなり良い印象を抱いている。

冒頭でマイクロソフトが述べた「プロダクティビティの向上」という点は、確かに向上しているからだ。使っていて面白く、快適だ。2画面でアプリを複数使う前提なら、筆者の目で見ると、サムスンよりもマイクロソフトの方が快適で、好みではある。

数週間前、発売前に試用機を使った時には、アプリ切り替えなどで不安定になるタイミングがあったものの、その後のアップデートで安定性・操作のなめらかさは向上した。マイクロソフトが積極的に機能改善を進めているのは間違いない。

2画面をつなげる関係上、左右のディスプレイが視野などによって色が変わって見えることはある。この記事で掲載する写真で多少色が違って見えるのはそのためだ。だが、筆者が購入した私物のデバイスは、大きな問題は感じられない。ただし、製造のバラつきからか、色の違いがより大きな個体もあるようだ。気になるようなら、サポートに連絡した方が良い。

個人的には、メモアプリである「Outlook」の機能改善と、Android 12Lの導入は進めてもらいたいと思う。「Android 12」や「Android 12L」の導入について、マイクロソフト側が明確なコメントを避けている状況だ。その点では、機能も使い勝手もいいメモアプリである「Galaxy Note」を持ち、Android 12への移行を明確にしているサムスンに比べ、明確に劣っている。

「良い製品だがコスパが悪く、進化待ちな部分がある」という点が、Surface Duo 2の現状である。

結局は、より良い部分を伸ばすために、マイクロソフトがどこまで注力するかにかかっている。日本では現状「まずは出してみた」ところに近い印象を受けるので、まずは体制づくりから始めることを期待したい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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