いつモノコト

ZEISS調光レンズで“掛け替え不要”のサングラス生活を満喫

調光レンズ「ZEISS PhotoFusion X」(エクストラグレー)を入れたメガネ。フレームはTaylor with Respectのbebop

夏の日差しに、肌だけでなく眼にも危険を感じることが増えた昨今。調光レンズを入れたメガネのおかげでとても便利に過ごせるようになった話をします。

メガネ常用人とサングラス

筆者は近視ですがコンタクトレンズを使ったことがなく、いつもメガネをかけています。すると、サングラスにはなかなか手を出しにくいのです。度入りのサングラスを買って2本持ちするのか、コンタクトにするのか......。どちらにせよハードルが高く感じていました。

調光レンズとは、ざっくり言うと普段は透明で、紫外線を浴びると色が濃くなってサングラスに変化するというものです。今年はお手頃メガネチェーン店でも大きくアピールされており、知名度が高まっている気がします。

ZEISSの最新レンズがスゴいらしい

筆者が調光レンズを意識したのは、いつものメガネ店で「今年からZEISSのレンズを扱うことにしました。いい調光レンズがあるんですよ」という話になり、そんなにスゴいのなら1本オーダーしてみようと思ったわけです。それが「ZEISS PhotoFusion X」という新製品でした。

レンズにZEISSロゴ

ZEISSとはドイツの光学メーカー、カールツァイスのこと。眼科ではZEISSの青いマークが入った検査機器を見かけることがあると思います。近代写真レンズの基礎を築いた存在でもあり、カメラ愛好家から特別な尊敬を集めています。

カールツァイスのWebサイトの解説によると、レンズに含まれるフォトクロミック色素化合物が紫外線に当たると「展開」して、レンズの色が濃くなります。紫外線がなくなると分子が再び畳まれて元の色に戻るとのこと。この反応速度を高められたことで、従来モデルより最大60%速く濃くなり、最大80%速く透明に戻るとあります。

この色の変化スピードの向上が、ここへ来て調光レンズをより身近なものにしたようです。メガネのレンズというと馴染みがあるだけに、いまさら技術革新もないだろうと思いがちですが、普通のメガネレンズでも地道にコーティングが改良されたりと進化があります。

ちなみにこのレンズですが、正式には「デジタルレンズ」という弱めの遠近両用レンズに、オプションとしてPhoto Fusion Xという調光機能を付けたような順序です。デジタルレンズの“デジタル”には、パソコンやスマホなど、手元のデジタル機器を見るため、みたいなニュアンスがあります。カラーは現在、グレー、ブルー、エクストラグレー、ブラウン、パイオニア、ブラックがあり、筆者が注文したのはエクストラグレーでした。メガネ店でサンプルレンズを見ながら決めればいいでしょう。

視界の違和感ゼロで、手放せない1本に

仕上がったメガネには、しみじみ満足しています。日中の屋外に出て「太陽がまぶしいな!」と思った頃には色が変わり始めていて、視線をメガネレンズの外にやったときに初めて色の変化に気付きます。それぐらい自然な使い心地です。

変化のイメージ。屋外に出て直射日光を浴びると、体感20秒ぐらいで右の状態(濃度MAX)に

そのため基本的に「調光レンズのメガネを掛けている」ということは意識が向いていないので、室内に入るときに「早く透明に戻らないかな」と思うこともありません。鏡などに反射する自分の姿を見てようやく、調光レンズを掛けてきたことを思い出すぐらいです。

ひとつ残念だったのは、ZEISS PhotoFusion Xにはブルーライトカットが入ったレンズしか用意されていないこと。青色光をカットするということは、つまり青い反射がレンズに出てしまうので、ちょっと人相的にビミョーだなと感じています。願わくば、ブルーライトカットがないバージョンが出てほしいです。

ブルーライトカットレンズ特有の青い反射

余談:運転や写真撮影で。オーバーサングラスとの使い分け

自動車を運転するときは、調光レンズがフィットしない可能性もあります。クルマのフロントガラスは多くがUVカット仕様になっており、これだと調光レンズはサングラス化しません。そのため筆者は偏光レンズ入りのオーバーサングラスをクルマに積んでいて、普通のメガネの上にこれを掛けています。偏光タイプなので視認性も高いです。

TALEXのオーバーサングラス。運転時に使用するためクルマに常備
装着例。既存のメガネを包み込む必要があるため、どうしても横幅が大きく存在感が強くなってしまう

しかし偏光サングラスには落とし穴がありました。デジタルカメラで写真を撮影する場合、縦位置に構えると背面モニターやEVF(電子ビューファインダー)が黒くなり、見えなくなってしまうのです。これは液晶パネルの偏光板との兼ね合いで起こる現象。そのため、運転時は視認性第一でオーバーサングラスを使いますが、それ以外では偏光ではない調光レンズを使っています。

偏光レンズを通してデジタルカメラの背面モニターを見たところ
角度が90度変わると、表示が全く見えなくなってしまう。縦位置撮影に不都合です

便利で愛用。メガネをもっと気軽に買おう

初めて買ってみた調光レンズ。これを含めて計4本のメガネが現役ですが、近所に買い物に出るなど、日中に外を歩くときはつい調光レンズ入りの1本を手に取ってしまいます。レンズとフレームがそれぞれ6万円ぐらいと決して安くない価格でしたが満足しています。筆者は近視が強いため、同じレンズの中でも最も屈折率の高いレンズを選ばなければならず、そもそも高くつきがちなのです。そしてメガネの着用時間が長いので、多少高くてもいいかなと思ったりします。

紹介した調光レンズ入りの1本に加え、普通の遠近両用レンズ(すべてニコン・エシロールの「シフトオン」)を入れた3本の計4本が現役。筆者はまだ“老眼”というほどではありませんが、早いうちから遠近両用レンズに慣れておくとイザ老眼になったときにもストレスが少ないと聞き、数年前から使っています

メガネはファッション目的がなければ、度数が合わなくなるか、壊れるまで同じ1本を使い続ける人も少なくないかもしれません。私もそうでした。しかし、メガネレンズには経年劣化があります。具体的に言うと、プラスチックレンズは紫外線などを吸収して経年で黄色くなりやすいのです。すると透過率が落ちてクリアさが損なわれますし、表面のコーティングも劣化します。メガネ店やレンズメーカーのWebサイトを見ると、メガネレンズの寿命は概ね2~4年と記載されていました。

それぐらいの年数が経つと、フレームのデザインの流行りも変わってくるでしょう。私のようにメガネが必須の生活で、どうせ安からぬお金を払うなら、メガネ購入を必要経費ではなく楽しみにしてしまおうと思い立ったのです。メガネの本数が増えれば旅行や非常時の予備にも使えますし、いろんなデザインがあれば服や腕時計のデザインに合わせたりする楽しみも増えるはず。新しいメガネを掛けているだけで、なんだか“ファッションに意識がある人”みたいに見られる場面もありました。

何はともあれ、まずはメガネ店に行って専門家の意見を聞いてみるのがオススメです。自分の姿を見慣れていない他人にフレームを選んでもらったほうがイメチェン効果は高いでしょう。あと、近視の度数が強いと目が小さくなってしまうことに悩む方も多いですが、これもフレーム選びやフィッティングで目立たなくするコツがあったりしますから、プロに相談すると奥深い世界が見えて面白いです。というわけで、まずはサブの1本ぐらいの感覚で調光レンズ、オススメです。

鈴木 誠

ライター。デジカメ Watch副編集⻑を経て2024年独立。カメラのメカニズムや歴史、ブランド哲学を探るレポートを得意とする。インプレス社員時代より老舗カメラ誌やライフスタイル誌に寄稿。ライカスタイルマガジン「心にライカを。」連載中。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。 YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究」