いつモノコト

北海道行きフェリーで「スターリンク」を試した 船上で24時間使い放題

旅行で北海道などに行くときは必ずカーフェリーを利用するのですが、船上でいつも当たり前のように諦めているのが、ネット回線の利用です。日本近海とはいえ、海上を移動するフェリーは当然ながらほとんどネット回線が繋がりません。しかし、このあたりまえの状況を変えてくれそうな存在が登場しました。言わずと知れた「スターリンク」です。先日利用したフェリーで利用可能になっていたので試してきました。

フェリー上では基本的にネット回線は使えないと書きましたが、実はまったく使えないわけでもありません。フェリーの中でも陸に面した側では比較的通信が届くことがあります。例えば、新潟から小樽まで日本海側を北向きに航行するフェリーでは、フェリーの東側の部屋ならばネットが繋がる機会がけっこうあります。もちろん、微妙な航路の違いによって状況が違うことがあるので必ずとはいえませんが。

このため、往復のフェリーで進路上、陸側に近い部屋を取ると、ネットが使える「機会」が増えると思っています。ただ、筆者は毎回犬と泊まれるウィズペットルームというのを利用していて、この部屋は数が限られ船内の位置も決まっているため、部屋の位置の選択肢がありません。陸と反対側になる航路では、ネット利用はほぼ絶望的です。まあそれはそれで諦めが付くのですが。

船内でWi-Fiを用意し、陸上からの電波が届く範囲でネット回線を提供してくれるフェリーもありますが、速度が遅かったり利用時間が決まっていたり、陸から離れればやはり使えなかったりと、あまり使い勝手はよくありません。

導入が始まったスターリンク

そこでスターリンクの登場です。今回筆者は新日本海フェリーの新潟=小樽航路を利用しましたが、同社では同航路でスターリンクの導入を4月から開始しています。筆者は6月に乗船しましたので実際に試してみました。

導入方法は簡単で、事前申請などはいりません。船内に貼られたポスターのQRコードをスマホで読み込んで手続をするだけです。新日本海フェリーではKDDIによるスターリンクサービスを導入していますので、au回線を持っている人は無料で使う事ができます。

使用方法。船内にも同じものが貼ってありました(出典:新日本海フェリー)

筆者はauの回線ではありませんでしたので、24時間1,500円での利用になります。QRコードを読み込んでから5分程度で申込みは完了しました。

筆者はKDDIの回線ではないので1,500円を支払いました

さっそく通信速度を計測してみましたが、Googleのスピードテストでは下りで200Mbpsという速度がでました。使っている人が少なかっただけかもしれませんが、なかなか頼もしい速度です。これなら大抵のコンテンツは楽しめます。

これまでフェリーでのネット回線は基本的に諦めるのが当たり前でしたが、スターリンクのお陰でこの状況が変わりつつあります。

特に新潟=北海道や大洗=苫小牧などの長距離航路では、乗船時間が16時間~19時間と非常に長いです。航行中ネット回線が使えるようになれば、船内の過ごし方がガラッとかわります。

せっかくの旅行なのだからネットなんてなくても、という気持ちもなくはないですが、使えたら使えたで、利用してしまいますね。船内で旅行中にどこへ立ち寄るかなどを調べるのも楽しいです。

ただ、注意点もいくつかあります。まず、筆者が乗船した新日本海フェリーでは、いまのところ各客室での利用ができません。船内のロビーなどアクセス可能なエリアは限られていて、自室でのんびりネットを使う、ということはできません。実際ロビーから少しでも離れると回線は切れていました。このあたりはいずれサービスを拡大してくれることを期待したいですね。筆者の場合はロビーで動画をダウンロードして自室で視聴しました。

スターリンクを利用可能なエリア(出典:新日本海フェリー)

また、手続は必ず「利用したい端末」で行なう必要があります。テザリングは行なえず、申込んだ端末のみでしか利用できません。筆者はタブレットで動画を視聴しようと思っていたのですが、スマホで手続をしてしまいました。パソコンでも申込みができず、使えない点も注意が必要です。

新日本海フェリー以外にも、国内のフェリー運行事業社は続々とスターリンクのテスト運用を開始しています。調べてみると、かなりの数の企業が導入済み、または検討していることがわかります

「新日本海フェリー」「東京九州フェリー」「東海汽船」は既に本格運用を開始していて、「商船三井フェリー」「阪九フェリー」などはトライアル・限定運用の段階です。今後も導入企業は増える見込みです。

各キャリアが人口カバー率99%を達成するのが当たり前になって久しいですが、残りの1%にはいまでもけっこう遭遇します。少し山奥の林道に入るとネットが使えないことは珍しくありません。

スターリンクは、こうした地上局がカバーできないエリアを軒並みカバーすることが可能で、電波がこれまで届かなかった山小屋などへの導入も進んでいます。人があまり来ない場所だからこそ、いざという時にネット回線を使えるようになる意義は大きいです。

近い将来、海上においても、スターリンクでネットを使えるのが当たり前になるのかもしれません。

清宮信志