いつモノコト
指輪デバイスが問う本当のスマートさ SOXAI RINGを試してみた
2025年5月10日 09:30
最近増えている指輪型スマートデバイスのひとつ「SOXAI RING 1」を買ってみました。2月に購入し、3カ月程度使ってみた感想として、気付いたことや意外だったことなどを中心にまとめてみたいと思います。
「SOXAI RING 1」はビックカメラの店頭で販売されていて、製品と同じ形状のサイジングキットも店頭に用意されているので、その場でサイズを試せてすぐに買え、便利でした。マットシルバーの購入時の価格は35,980円です。アプリの利用はサブスクではなく無料で、買い切り型となっているのも特徴です。
スマートデバイスかどうかに関わらず、私は「指輪型のアイテム」を日常的に身に着けるのは初めてでしたので、根本的に慣れていない部分と、スマートデバイスならではの部分があり戸惑うこともいくつかありましたが、おおむね慣れることができました。
意外に気付くことが多い“指輪型”のポイント
まずは機能以前に、指輪型スマートデバイスを装着するということについて、です。バッテリーやセンサーを搭載しているということで、アクセサリーの指輪と比べてしまうと、やはり少し厚みがあります。このことはいろんな部分に影響があると感じました。手首と違い、指はあらゆる対象に触れるので、使ってみて気付くことがたくさんあります。
私は日常的にPCのキーボードでタイピングをするので、中指や薬指にはめると隣の指とぶつかって違和感を感じてしまいます。また、右手の指は利き手なのでカチカチといろいろなものにぶつけそう、小指はすっぽ抜けた際に気付かなさそう、ということなどを勘案し、左の人差し指にはめることにしました。私の場合、同じ人差し指でも左右でサイズが違いました。後からはめる指を変更したり、それを前提に選ぶのは避けたほうがよいと思いました。
厚さがそこそこあることで、例えば朝起きて顔を洗う時、リングをはめたままだと顔をガリガリとこする形になるので、メガネといっしょにリングも外す、という癖をつけるようにしました。外から帰ってきて、ハンドソープをつけしっかりと手を洗いたいときも同じです。ほかにも、食器を洗う際は、洗剤でヌルヌルになってすっぽ抜けやすくなりますし食器にカチカチとあたって煩わしいので、外すようにしています。あとはお風呂に入る時で、理由はだいたい同じですが、こちらは充電時間として活用しています。
外出時に身にまとうアクセサリーとは異なり、日常生活で四六時中着けているので、思わぬところで違和感に気付くこともあります。例えばブーツの靴紐をきつく締める際や、ゴミ袋を結んで閉じる際などです。リングを外すほどではないですが、このような手や指にグッと力を入れる場面では、リングが隣の指を圧迫し軽い痛みを感じます。SOXAI RINGの形状は真円ではなく、両サイドを少しフラットにしてスリムにしていますが、それでも手に力を入れる作業では違和感が出ます。
ほかには、ゲームのコントローラーを持った際でしょうか。操作しずらいほどではありませんが、左肩にあるLボタンを操作するとコツコツと当たるので最初は少し違和感を感じていましたが、これはしばらくすると慣れました。
睡眠計測に最適
では、指にはめるメリットは何でしょうか。まず、指は手首よりも正確に計測できると説明されていますので、データの信頼性に関して、手首よりもアドバンテージがあるといえそうです。
最大のメリットだと感じているのは、睡眠時の計測についてです。スマートウォッチなどの手首に装着するデバイスと比較して圧倒的に異物感がなく、違和感なく自然に入眠できます。手首にモノを着けて寝る、ということにどうしても慣れなかった人も、試してみる価値はあると思います。
機能・性能の詳細はWebサイトに譲りますが、睡眠、体調、運動の計測・分析と、昨今のスマートデバイスの機能はだいたいカバーしています。最もウリにしているのは「睡眠の質」の計測や分析で、2週間以上計測すると、朝型・夜型といった分析もできます。体力回復のキーになる「深い睡眠」は、手首で計測するデバイスよりも正確に計測できていると感じられます。
歩数やアクティビティの計測ももちろん可能ですが、前述のようにハイライトは睡眠計測といえそうです。ベッドサイドに置いておき、寝る時だけ使うというスタイルでも十分良いように思います。
ただしリアルタイムでは何も分からない
こうした計測とアプリによる分析を組み合わせて利用する際、スマートウォッチなどほかのスマートデバイスとは全く異なる特徴があります。それは、リアルタイム型ではなく蓄積型である、という点です。前述の物理的な厚みはともかく、機能面では存在がほぼ“ステルス”です。ステルストラッカーなんて名前にしてもいいぐらいです。
「SOXAI RING 1」では、計測している内容はすべて事後に確認する形です。データをリアルタイムに把握することはできません。これが(相対的に)睡眠計測に向いているとする最大の理由です。例えば、ランニングをしながら心拍数や運動強度をリアルタイムに確認したいという場合、スマートウォッチに軍配が上がることになります。デスクワークをしている時の「しばらく動いていないので軽く歩きましょう」なんて通知もありません。
スマートリングに搭載されるバッテリーは非常に小さく、「SOXAI RING 1」は計測以外の動作をしません。そもそもディスプレイは搭載されていませんし、何かの状態を示すインジケーターランプもありません(光学式センサーの点滅は漏れて見えますが)。音や振動機能も言わずもがなです。
通信は、アプリを立ち上げた時に、リングに蓄積されたデータをアプリに受信するのみで、リングが自発的にデータを送ったり、計測データをリアルタイムに確認する機能はありません。リング側が、スマホアプリの通知やスケジュールのリマインドなどと連携して動くこともありません。
リングのバッテリー残量はアプリとの通信時に把握され情報が更新されます。それ以外はアプリ側の推測になり、そろそろバッテリーが切れます、といった予測に基づいた通知がアプリから届く形です。昨今のスマートデバイスと比較するまでもなく、驚くほどに“沈黙のデバイス”です。
こうしたステルスぶりは一見デメリットのように思えますが、人によっては「これぐらいが丁度いい」という、メリットに感じられると思います。「デジタルデトックス」の文脈でも最適なデバイスかもしれません。
スマートウォッチは多機能化が著しいですが、おせっかいな機能を煩わしく感じたり、アルゴリズムに「束縛されている」ように感じたりする人がいるのではないでしょうか。「SOXAI RING 1」のデータ分析はあくまで事後の確認。装着している時に「監視されている」と感じることはありません。
こうした意味では、日常生活を隅々まで見直したい・改善点を次々に指摘してほしい、と考える人よりも、ある程度自分の生活ぶりが分かっていて、粛々とデータを計測して蓄積・分析したい人向け、と言えそうです。
スマートデバイスの“スマートさ”の解釈は人により様々かもしれませんが、ステルス型で蓄積型、淡々とデータを集めるこのスタイルもまた、スマートさのひとつだと思えました。スマートウォッチのスマートさを逆に息苦しく感じているなら、このほどよい距離感の指輪型スマートデバイスは新たな選択肢になってくれそうです。