いつモノコト

ありそうで無い? ラチェットハンドルを“モンキーレンチ化”するパーツ

アストロプロダクツ「AP 3/8DR モンキーヘッド」(画像下)

先日、配管の途中にあるナットを規定のトルク値で締め付ける必要がある、という作業に出くわし、トルクレンチを用意する必要に迫られました。筆者はすでに、自転車のカーボンパーツを締め付ける目的でデジタル式でラチェットハンドルのトルクレンチを持っていましたので、これを流用できないかと思い、時間をかけて探したところ、“ラチェットハンドルに付けられるモンキーヘッド”という製品にたどり着きました。アストロプロダクツの「AP 3/8DR モンキーヘッド」という製品で、3,278円でした。

ラチェットハンドルを流用して、配管途中のナットなどを締め付けるためには、一般的にはクロウ(クロー)フットレンチなどと呼ばれるパーツを使います。ただ、クロウフットレンチはサイズごとに用意する必要があり、今回の作業には2つのサイズが必要で、またメジャーなサイズではなかったことから欲しいサイズの在庫がない状況でした。そこでいろいろと探した結果、さまざまなサイズに対応できる“モンキーヘッド”にたどり着きました。

ラチェットハンドルを流用する場合、一般的にはクロウフットレンチ(画像下)などを使います。モンキーヘッド(画像上)はひとつでさまざまなサイズに対応できます

アストロプロダクツのモンキーヘッドは、差込角3/8インチ(9.5mm)に対応した、ラチェットハンドルをモンキーレンチ化できるヘッドパーツです。対応幅は5~30mmです。

モンキーレンチは通常、つな揚げのようなギヤを回してレンチの幅を調整しますが、今回の製品はラチェットハンドルを差し込んだ根本が歯車になっており、この回転とレンチの幅の動きが連動しています。ナットを締め付けようとしてヘッドの根本が回転すると、レンチの幅が狭まり、ナットをガッチリとつかみ固定されるという、他ではあまり見かけないアイデア商品になっています。表裏の区別なく使え、緩める方向に使うこともできます。

ラチェットハンドルに取り付けた場合、締め付けるナットとラチェット機構で回転軸が別になるので、ラチェット機構はほぼ意味がなくなりますが(このモンキーヘッドに限らずクロウフットレンチなどでも同様です)、トルクレンチとして活かす、という意味では無事機能しました。

特徴的な根本のギヤ

ちなみにですが、トルクレンチは通常、ナットをつかむ部分やラチェット機構の中心などの「中心点」(支点)と、手で力を入れるグリップ部分を「入力点」(力点)として、これを結ぶ「有効長」を前提としてトルク値が計算されています。クロウフットレンチやモンキーヘッドなどを取り付けて有効長が伸びている場合、換算式を用いて減算した、少し小さいトルク値を設定する必要があります。

計算自体はそれほど複雑ではなく、「有効長÷(有効長+伸びた分の有効長)×必要なトルク値」という計算です。例えば有効長150mmのトルクレンチで、目的のトルク値が10N・m、モンキーヘッドなどで伸びた有効長が30mmだった場合、「150÷(150+30)×10≒8.3」となり、トルクレンチには8.3N・mを設定します。ラチェット機構が回転しモンキーヘッドなどの先端に“角度”がついていると計算は変わるので、換算式を使うならすべて真っ直ぐに配置するのが良いと思います。

何度も繰り返し作業をするなら、最初から先端がモンキーレンチになっているトルクレンチを用意するのがいいと思いますが、筆者のように使用回数が少ないと予想される場合、何万円もするトルクレンチを追加で買うのは厳しいものがあります。ラチェットハンドルのタイプのトルクレンチをすでに持っている人には、モンキーレンチ化できる今回のパーツは、なかなか便利ではないかと思います。

通常のラチェットハンドルに取り付ければ、モンキーレンチとして使えます(ラチェット機構は実質的に意味がなくなります)
モンキーヘッドを付けたデジタル式のトルクレンチ(上)、一般的なモンキーレンチ(下)
太田 亮三