キャッシュレス百景

第7回

2018年キャッシュレス比率98%。100%への挑戦と高すぎる壁 by 徳田匡志

2018年始に今年は支払いをするときに現金をなるべく使わずにクレジットカードや電子マネーなどを使う「キャッシュレス生活」を目指してみようと決めました。

もともと財布やポケットの中でじゃらじゃらして場所を取る小銭を持ち歩きたくないと思い、小銭を生む可能性が高い現金利用は控えていました。数年前から、あえて小銭入れが付いていない財布にしていました。小銭はジーンズのコインポケットに入れ、毎日帰宅したら箱に投げ込み、ある程度溜まったら、郵便局の窓口で小銭入金するという手抜き貯金もやっていました。1-2カ月で数万円と意外に貯まるのです。

また、ログを残して見返すのが好きなのに面倒くさがりというたちなので、家計簿は付けたいけど、手入力は極力避けたい。そうなると、おのずと現金ではなく家計簿アプリと連携して自動入力してくれるクレジットカードや電子マネーを使いたくなります。同様の理由で、行動履歴を自動的に可視化してくれる「Googleロケーション履歴」もオススメです。

そんな私が主に使っている決済手段は、クレジットカード(物理カード)とAndroidスマートフォンGoogle「Pixel 3 XL」に紐付けたGoogle Pay(おサイフケータイ)のSuica、楽天Edy、nanaco、iDです。

「Pixel 3 XL」にFelicaが搭載されGooglePay(おサイフケータイ)が利用できるように

最近はQRコード決済が話題ではありますが、Felicaの非接触決済の「体験」にはかないません。やはりスマホ端末や特定のアプリを立ち上げなくても、かざすだけで決済ができるのは手軽で良いですよね(ただし、QRコード決済各社が時折実施する還元キャンペーンでは利用させていただいております)。

Pixel 3 XL

この記事では、一年間キャッシュレス生活に挑戦してみて、キャッシュレス生活の阻害となった壁や、逆に使える便利なサービスやアプリ、決済手段について、お伝えしようと思います。

最も高い壁は飲食店での支払い

外食をする機会が多いので飲食店で支払いをする機会がそもそも増えることも要因ではありますが、キャッシュレス生活への一番の壁が「飲食店」でした。

年初は、店の前を通って美味しそうだなと気になっても現金のみしか利用できない店だと入らない判断をしていましたが、年の途中からは「食べたいものは食べよう」と妥協していました。

飲食店の中でも特にクレジットカードの決済手数料がビジネスに影響しやすい個人経営の飲食店は、まだ「現金のみ」が多いですね。また、ディナーではクレジットカードが使えたとしても、ランチや何円以上ではないと利用不可などクレジットカード加盟店規約違反についてレジ前で堂々と張り紙しているところもあります。

また、カフェ・ベローチェ、サイゼリヤ、ゴーゴーカレーなどチェーン店でも現金しか使えないところもありますが、今後キャッシュレス決済の導入が進んで欲しいですね。

飲食店におけるキャッシュレス生活で便利なサービスは、私も仕事でお手伝いしている、モバイルオーダーアプリ「O:der」です。

まだまだ店舗数は多くないのですが、アプリにクレジットカードを登録しておけば、店に行く前に商品を注文でき、決済も終わらせられます。店に行ったらレジで支払いをすることなく受け取るだけなのは便利です。

キャッシュレス生活の味方モバイルオーダーアプリ「O:der」

店舗によっては、レジが注文待ちで混んでいてもファストパスのように優先レーンで受け取れたりします。また、店頭だと現金のみのお店が、O:der経由だとクレジットカード決済できることもあるのは、キャッシュレス生活では欠かせません。

ハレの日は「現金」が主役

日常での支払いではないため回数は少ないのですが1回あたりの金額が大きいため、キャッシュレス生活の壁として立ちはだかったのは冠婚葬祭でした。

2018年の「現金はじめ」、つまり完全キャッシュレス生活の失敗となったきっかけは、初詣におけるお賽銭でした。さすがに、お賽銭を友達から借りるのは気まずく、(神様にお願いするのに不謹慎ですが)泣く泣く現金を使いました。

期間限定で愛宕神社(東京)は楽天Edyで、日光二荒山神社(栃木)は微信支付(WeChatPay)や支付宝(Alipay)などの電子マネーでのお賽銭の決済はできるようですが、全国の寺社仏閣への普及は時間がかかりそうですね。

また、結婚式のご祝儀はそのためにわざわざ新札を準備するなど、現金がより主役です。現場での盗難や紛失のリスクを考えると、現金ではなく事前振込や電子決済できると便利なのですが、慣習としても心象的にもキャッシュレス決済の導入の壁は高そうですね。ご祝儀袋の中にQRコードを入れておいたり、受付で記名しつつピッとFelica決済する未来はやってくるのでしょうか。

東京以外は「地方」だったキャッシュレス生活

著者は東京で生活をしているので、「キャッシュレス化の波」はひしひしと感じています。最大の壁である飲食店でも、大手チェーンからではありますがキャッシュレス決済の導入が進んでいますし、タクシーでSuicaなどの電子マネー決済端末を導入していたり、クレジットカードが使える車両は急激に増えてきた実感があります。

ただそんななか、筆者の地元である大阪に帰ると状況が一変します。大阪のタクシーで電子マネー決済端末を導入している車は東京に比べると圧倒的に少ないですし、クレジットカードが使える車でも、あからさまにクレジットカードの利用を嫌がられるドライバーに遭遇することも多いですね。

大阪万博開催も決まりましたので今後変わっていく可能性はありますが、現時点では大阪でタクシーに乗ったら、基本的に現金以外使えないと思っていたほうが良いかもしれません。

地方都市に仕事で行くこともありますが、東京に比べるとまだまだ現金率が高いですね。ただし、大阪や名古屋など大都市と比べて圧倒的に現金率が低いわけではなく、キャッシュレス化率は「東京」と「東京以外」での差が大きいように思います。

ちなみに、伊豆諸島・八丈島では、他の電子マネーは見かけませんでしたが、楽天Edyは地元のスーパーで唯一利用できました。

伊豆諸島・八丈島のスーパー「八丈ストア」の精算機。唯一電子マネーで楽天Edyが使える

飲み会での割り勘は「Kyash」が便利

飲み会をする際に、自ら幹事をする場合は店の選定時にクレジットカードを使える店を優先的に選んで、キャッシュレス生活を続けていました。

ただし、幹事ではなく参加者として飲み会に参加した場合、幹事への支払いは「現金」になりがちです。そんなときに便利なのが、送金や割り勘できるアプリ、そのなかでも「Kyash」はお得で便利なスマホアプリです。

送金だけでなく高還元率もお得なスマホアプリ「Kyash」。送金リンクを作成して相手に送るだけで送金できる

Kyashは、インストールや新規登録する際の手間が少ないのが便利。このようなアプリを利用する際に最も大変なのが、まだアプリを使っていない人にインストールして登録してもらうことのため、その手間が少ないのはありがたいですね。

ちなみに、2018年末にキャッシュバックキャンペーンが話題となってインストール・登録率が急増したであろう「PayPay」も同様に使いやすいアプリになりましたね。

そしてKyashで個人的に最も好きなのが、KyashのUI/UX。特に送金する際のアクションで、シュッと画面の手前から奥(下から上)にフリックして送金するのが気持ち良いのです。

送金する際に下から上にスライドするアクションが気持ち良い

また、Kyashは送金の利便性だけでなく、2%+αの高還元率も魅力の1つです。いつかは還元率は下がりますし、月額の利用上限金額もあるのでメインのクレジットカードにはなりませんが、サブカードとしてKyashを使わないメリットはありません。

2018年のキャッシュレス比率は98%。無理なくキャッシュレス推進

2018年が終わり、ざっとキャッシュレス比率を計算してみると98%でした。

年始には意気揚々と100%を目指していましたが、早々にお賽銭やご祝儀で完全達成がなくなり、また地方都市や海外での現金率の高さに直面しました。年途中からは、年始には我慢していた現金のみの店の利用も何度か解禁するなどして、現金を利用しました。

そして2019年も引き続きキャッシュレス生活に挑戦しています。

ただし2018年キャッシュレス生活に取り組んでみて、現状「完全キャッシュレス生活」はほぼ実現不可能であることがわかりました。

2019年は無理をせずに、より高いキャッシュレス化率を目指したいと思います。

徳田 匡志

collabo合同会社 代表社員。広報寺子屋主宰。 広報/PRやイベントなど主にコミュニケーション領域についてのコンサルティングやサポートを実施。本文に記載した「O:der」を運営しているShowcase Gigもクライアントの1社。 大学卒業後オズマピーアールにてマイクロソフトのゲーム機Xbox 360のローンチプロジェクトに参画。その後、マザーズ上場企業のドリコム、ミクシィで広報・IRの責任者を務める。スタートアップを経てフリーランスになり、2018年2月にcollaboを設立。