キャッシュレス百景

第8回

Suica統一キャッシュレスライフを阻む愛媛・松山のご当地電子マネー by 柳英俊

四国で一番大きな街・松山市

筆者は、四国で一番大きな街・松山市(愛媛県)に引っ越して4年目。日頃は松山城を望むマンションに引きこもって原稿を書きつつ、年に2回ほど東京に出て、実家に数週間ほど滞在をするという生活を送っています。こっちでお嫁さんをもらえる見込みは一向に立ちませんが、知り合いは少しずつ増えてきました。今では温泉とお城と路面電車のある、のんびりとした雰囲気のこの街が結構気に入っています。

主力の電子マネーはSuica! 全部これで決済させてほしい……

そんな筆者が愛用する電子マネーは、みなさんお馴染みの「Suica」。もともとポイントカードだの電子マネーカードだのというモノは嫌いな性格で、財布には余計なカードを入れておきたくはないのですが、東京ではこれがないと電車での移動が不便ですからね!

しかし、以前のSuicaカードはもっぱら“東京専用”でした。松山にいるときは使い道がないため日頃は財布に入れず、東京へ出かけるときだけ持ち運ぶスタイルです。

しかし、そのせいで東京へ出張する際、ついSuicaカードを財布に入れるのを忘れてしまい、現地で何度も新しいカードを発行する羽目に。一時期は同じ記名の「Suica」「PASMO」カードを3枚も4枚も持っていました。

そんな状況を解決してくれたのが、2017年9月に登場したiPhone 7/7 Plusです。iPhoneがSuicaに対応してくれたおかげで、財布にSuicaカードを入れる必要はなくなりました。また、いつもSuicaをモバイルするようになった結果、使えるところでは積極的にSuicaを利用するようになりました。小銭の管理はしなくて済むし、クレジットカードから簡単にチャージできるし、あとで使途を確認できるし。使い始めると、なかなか便利ですよね。

スマホで「Suica」が使えるようになってから、利用頻度があがりました(スクリーンショットは現在利用しているGoogle Pixel 3)

最近は、愛媛だろうが東京だろうが、どこでもSuicaもしくはクレジットカードで決済。むしろ財布に現金を“チャージ”するのが億劫になってしまいました。

そんなわけで、筆者はSuica一筋、他の電子マネーは管理が面倒なので一切使っていません。今回の“キャッシュレス百景”はこれで終わり!――といいたいところなのですが、愛媛・松山ならではの事情でそうもいかないのが悩みです。

我が電子マネー生活は三国鼎立! 頼む、誰か統一してくれ!!

まず、松山市内の電車はSuicaに対応していません。その代わりに、伊予鉄道が発行する交通系ICカード「ICい~カード」が流通しています。もちろん、筆者の財布にも入っています(物理カードのみ、アプリ非対応)。あまりやる気のない(?)デザインですが、よく見ると表情に味があってかわいい気がしないでもない。

伊予鉄道の交通系ICカード「ICい~カード」

もともと伊予鉄エリアでは「い~カード」というプリペイドカードが使われており、全国に先駆けて「おサイフケータイ」にも対応していました。これをSuicaに遅れること4年、2005年にIC化したのが現行の「ICい~カード」です。これに伴い、伊予鉄道の駅から自動改札機が撤去され、愛媛県が“自動改札機のない県”に逆戻りしてしまったのは痛し痒しですが、けっして技術トレンドに遅れた田舎というわけではありません!

自動改札機の代わりに設置されている読み取り機

裏面を見るとなんとなくわかると思いますが、カードの仕組み自体はSuicaと同じ「FeliCa」が採用されています。しかし、Suicaなど、他社の交通系ICカードとの相互運用性はありません。伊予鉄のほか、バス(伊予鉄バス)やタクシー(伊予鉄タクシー)、広島へのフェリー(石崎汽船)などでも使えるのですが、基本的に松山でしか利用できません。松山に観光にきた人にとっては、少し戸惑うポイントだと思います。

「ICい~カード」に対応した自動販売機も(伊予鉄・本町六丁目電停)

ちなみに、「ICい~カード」はオートチャージにも対応していますが、いよてつ髙島屋のクレジットカード「ローズカード」に加入する必要があります。「ICい~カード」のチャージ機が設置されている場所は限られているし(ほぼ主要駅のみ)、路面電車やバスの運転手さんに声をかけてチャージを頼むのも気が引けるので、オートチャージは魅力的なのですが……カードタイプの電子マネーをオートチャージにしてしまうと、落とした時が心配で、発行に踏み切れていません。クレジットカードを無闇に増やしたくないし……。

Aコープ西日本が発行する「エピコカード」(Aコープ西日本ホームページより引用)

そしてもう1枚、筆者の財布に入っているドメスティックな電子マネーカード(物理)がこれ。Aコープ西日本が発行する「エピコカード」です……実質、わが家から徒歩3分のところにあるスーパー“ハトマート”専用の電子マネーカード!

先ほど“ポイントカードは嫌い”と言っておいてなんですが、週に1度は行くスーパーなので、ポイントは馬鹿になりません。チャージはレジでお願いする方式で、残高はレシートでしか確認できないのが不便ですが、スーパーの買い物は毎回使う額がある程度決まっている(自分の場合、1週間に1回、3,000円程度)ので、慣れると“3回買い物したら1万円チャージする”というリズムができてきて、あまり問題にならなくなりました。それよりも、お釣りをじゃらじゃらと用意しなくて済むのがうれしい。

地域電子マネー「マチカ」

そのほかにも、最近普及に力が入っているものとして、地域電子マネー「マチカ」があります。これは市内随一の商店街“大街道(おおかいどう)”や“銀天街”で使える電子マネーカード、商店街の共通ポイント(マチピ)、お買物券(マチケット)などを一緒にしたモノ。

お城を中心に環状に巡らされた路面電車のおかげか、松山は必要なものが中心部にコンパクトに集まった街なのですが、それでも近年は郊外型のショットツールへ人が流れがちです。「マチカ」が誕生したのも、こうした状況への危機感があるのではないでしょうか。街でショッピングするときだけでなく、イベントやボランティアへの参加でもポイントが貯まるなど、独自の工夫もあります。

財布の中に物理カードが増えるのはイヤなのですが(早く統一して!!)、この「マチカ」はスマホアプリでも使えるみたいなので、次に街へでかけるときに備えてインストールしてみました。今度使うときが楽しみです。

地方マネー VS 全国マネー?

筆者が利用している「Suica」(Google Pixel 3)、「ICい~カード」、「エピコカード」

なんでもシンプルに済ませたい筆者にとって、「Suica」(とクレジットカード)だけでお買い物を完結できない現状はちょっと残念です。しかし、それでも「ICい~カード」「エピコカード」のおかげで、愛媛・松山でも現金を出さなければならないシーンは結構減りました。いまだに現金決済なのは、タクシー(クレカは使えるけど、お願いしづらい……)、散髪屋さん、近所の居酒屋さん・飲食店ぐらいでしょうか。

しかし、今年に入ってからは「PayPay」が普及の兆しを見せており、伊予鉄タクシーと近所のうどん屋さんで使えるようになりました。やはり決済手数料がタダというのが大きいのでしょうね。海外からの観光客も増えているので、これからは地元の人が使う“ドメスティックな電子マネー”と、他所からきた人が使う“グローバルな電子マネー”(PayPayなど)に二極分化していくのかも?

今年に入ってからは「PayPay」が普及の兆し

どちらにしろ、さまざまな電子決済サービスの綱引きがひと段落するまでは、“決済手段を一つにまとめたい!”という筆者の思いとは裏腹に、新しいカードを作ったり、アプリを入れたりする生活が続くのだろうなと思います。

柳 英俊