レビュー

“3代目”に感じた安心と課題 「Pixel Watch 3」を普段使いする

Pixel Watch 3(41mmモデル)

Googleが独自に展開するスマートウォッチ「Pixel Watch」シリーズ。早いもので、9月10日には“3代目(3世代目)”となる「Pixel Watch 3」の販売がスタートしました。今回はケースサイズの異なる41mm・45mmの2モデル体制です。

スマートフォンと同様、最新モデルには、最新機能・最新仕様が満載されていて当然。しかし、1日中持ち歩くのではなく、1日中ほぼ“身に付けている”スマートウォッチは、求められる機能や質感が、スマホのそれとはちょっと違う……というのが、Android系スマートウォッチを約8年間、毎日使い続けてきた筆者の意見です。

今回お届けするのは、Pixel Watch 3の41mmモデルの試用レビューです。基本性能の部分を中心に、従来モデルと比べてどんな点が強化されたのか? 詳しくみていきたいと思います。

スマートウォッチは長く使い込むほど、利用機能が収れんされる

いきなりの自分語りとなりますが、筆者はこれまで、Android系スマートウォッチにはかなり時間とお金を注いできました。2016年4月発売のモトローラ「Moto 360(2nd Gen)」にはじまり、フォッシル「Fossil Q Explorist HR」(2018年)、オッポ「OPPO Watch」(2020年)などの機種をそれぞれ1年~2年程度、毎日ガッツリ使ってきました。Pixel Watchシリーズについても、Pixel Watch(2022年)、Pixel Watch 2(2023年)をしっかり自腹で買いました。

筆者がかつて使っていたAndroid系スマートウォッチ。左からFossil Q Explorist HR、OPPO Watch、Pixel Watch(初代)、Pixel Watch 2。Moto 360(2nd Gen)は見つかりませんでしたが、家のどこかにあるはず。そんな訳で、使わなくなった腕時計であっても、どうも手放せなくて……。ぬいぐるみを捨てられない感覚とでも言いましょうか

そんな身からしますと、スマートウォッチは「絶対に要るが、かといって毎日気張って使うものではない。使いたい機能が簡単に使えればいい」という境地に辿り着きました。盤面を見ながらタッチパネルやリューズを操作する時間など、1日10分もありません(腕が疲れてしまうので長く操作できない)。

よって、以下に挙げた7項目くらいが“確実”に実行できれば、それでもう満足なのです。

  • 腕を構えて時間と歩数を確認する
  • 電話の着信に気付く。電話するのはスマホ
  • 中身を精査するまでもないプッシュ通知をさばく(消去する)
  • ラーメンタイマーをかける
  • (極めて稀に)早歩き目に散歩する時、消費カロリーや移動距離を測る
  • 再生中の音楽の曲名をチェックし、音量などを操作する
  • 入浴前に充電し、就寝時に装着して、睡眠時間を測る。それで次の充電時まで動作してくれればOK

散歩の量は見える化したいですが、しかしバーベル上げの消費カロリーを測定する必要性は、筆者にはほぼありません。もちろん転倒検知だったり、緊急時電話通報のような先進機能は、“万一のお守り”という意味では大歓迎です。とはいえ毎日利便を感じる要素かと言えば、そこまではありません。

究極的にはまぁ、電話の着信に通知してくれて、かつ歩数を測ってくれればOK。かろうじて、メッセージアプリでいいね!を付ける時があるかというぐらいです

そこで今回は、筆者が重視する基本性能・機能について、愛用中のPixel Watch 2との比較目線で語っていきます。なお試用したモデルは、Pixel Watch 3の41mmモデル。カラーは本体部分がChampagne Gold(アルミケース)、バンドはHazelで、私物のPixel 8 Proにペアリングして検証しました。詳しいスペックについては製品発表時の記事をご覧ください。

なお特記なき限り、本稿における「Pixel Watch 3」とは「Pixel Watch 3(41mm)」を指します。

未装着時のサイズ感は、こんな具合
本体カラーは、正面からはよく分かりませんが側面を見ると明らか。今回試用したモデルは、本体カラーがChampagne Gold、バンドはHazelです
側面にはリューズ(押し込み操作可)と、独立したサイドボタン
バンドは器具などを使わずに手だけで付け外しできます
バンドはPixel Watch 1/2/3間で原則的に互換性あり。3付属のバンドを1にも問題なく装着できました。複数カラーをまぜこぜにする荒技も可
パッケージとおもな付属品。充電台(ケーブル)は同梱されますが、充電器はUSB Type-C対応のものを別途用意しましょう
ちなみにPixel Watch 2とはパッケージのテイストが全く違います
初期セットアップやその後の設定調整には、「Pixel Watch」アプリを使います
この「Pixel Watch」アプリを使えば、1台のスマホに対して複数台のPixel Watchをペアリング・管理するなんてことも可能

使い込みで発見したポイントをねちっこく紹介

さて、ここからが本題。気になったポイントをピックアップしながら、詳しくご紹介していきます

同じ41mmでも、画面がちょっと大きくなった

今回の試用期間は約10日間だったのですが、旧機種との比較で最も違いを実感したのは、画面サイズでした。

Pixel Watch 3は本体ケースサイズが41mmで、これはPixel Watch 2と変わりません。にも関わらず「10%以上画面が大きくなった」とアピールしています。これは額縁(ベゼル)がスリム化した影響です。

その差を一番実感できるのが、Google マップの表示です。以下の画像は東京駅周辺を表示したもの。左側がPixel Watch 2、右側がPixel Watch 3になります。何となく違いを実感できるでしょう。

左側がPixel Watch 2、右側がPixel Watch 3

このGoogle マップの表示領域を手持ちの定規で実測したところ、Pixel Watch 3が約33mmに対し、Pixel Watch 2は約30mm。数字的にも大きな差がありました。

Pixel Watchシリーズでは「画面サイズ○○インチ」というような説明がなく、筆者も実際に試用するまでは「多少大きくなったかもしれないけど、言うほどではないんじゃない?」くらいの温度感でした。Pixel Watch 3を数日使っていても、そうでした。

しかし、いざ旧機種のPixel Watch 2に戻ってみると、思わず「なんじゃこりゃ」と口を滑らせるほど、額縁を太く感じてしまうのです。それに気付くと、ウォッチフェイスもPixel Watch 2は何となく狭いような……。スマートウォッチは画面を見る機会が本当に多いので、一度気になり出すと、新機種の効能というか強みを増幅して感じてしまいます。

そして、この額縁部の変化の影響もあるのでしょう、スワイプするために画面の端を触ってみると、Pixel Watch 3はPixel Watch 2と比べてかなりエッジが立っています。丸みが減って、直角により近くなった印象です。触って痛いとか操作感が悪くなったという意味ではないので、その点はご安心を。

ディスプレイ面を突き合わせた状態。左がPixel Watch 2で、右がPixel Watch 3です。画面中央上側、へりのような黒い部分、丸みが若干違うのがわかるでしょうか? このおかげか、触ったときの指の感触はかなり違います。

またディスプレイの最大輝度も2,000ニトへと向上しています(Pixel Watch 2は最大1,000ニト)。強烈な日差しのもとでも、表示が確認しやすくなっているといいます。画面サイズに比べて違いは実感しにくいものの、色のコントラストなども含め、ディスプレイ周りには色々手が入っているのは間違いありません。

なおPixel Watch 2の設定画面には、直射日光下でも画面を見やすくするための「サンライト ブースト」という項目がありますが、Pixel Watch 3ではなくなっていました。

真夏の炎天下でも、画面が明るく表示されて確認しやすい
Pixel Watch 2の設定画面にある「サンライズ ブースト」
Pixel Watch 3では「サンライズ ブースト」の設定がなくなった模様です

充電ケーブルがPixel Watch 2でも使い回せる!

Pixel Watchシリーズでは、本体裏面にあるセンサー部に、平たいお皿形状の充電台をマグネットで固着させ、充電する方式をとっています。ただしPixel Watch(初代)とPixel Watch 2の充電台は、見た目こそ似ていますが互換性は一切なし。無接点充電のPixel Watch(初代)に対し、Pixel Watch 2の充電台は4つの金属端子が露出する構造のため、根本的に別物です。

ケース裏面部。ここに充電台(専用ケーブル)のお皿の部分をマグネットで固定して充電する
実際に固定した状態。4つの金属端子がある関係で、ケーブルを這わせる方向は1方向に固定されます。狭いベッドサイドなどで充電しようとすると、取り回しに結構苦労します

筆者はこの非互換化が、本当に本当に不満でした。Pixel Watch(初代)の発売直後、「きっと将来的に発売されるPixel Watchでも充電台は使い回せるだろうから、予備を買っておこう」と、実際に購入。そして1年後に出たPixel Watch 2で、その期待が裏切られた訳です。

左がPixel Watch(初代)の充電台、右がPixel Watch 2用。似ているようで全然違う! もう!

これに対してPixel Watch 3の充電台は、Pixel Watch 2の仕様を踏襲しています。また別売のアクセサリーとして「Google Pixel Watch 3 対応 USB-C 急速充電ケーブル」が存在しますが、これはPixel Watch 2でも使用できることが明言されています。

そしてこちら。左がPixel Watch 3、右がPixel Watch 2の充電台です。USB Type-Cの仕様も含め、外見的にはほぼ同一。ただし公式アクセサリー的には、それぞれ別の製品が用意されています

ここからは筆者独自の検証になりますが、Pixel Watch 2に同梱されていた充電台で、Pixel Watch 3を充電することはできました。ただし同じく設定されている別売アクセサリー「Google Pixel Watch 2 USB-C 急速充電ケーブル」の対応機種は、あくまでPixel Watch 2のみである点にはご留意ください。

ただ今後の方向性として、2025年にもし「Pixel Watch 4」が出たなら、充電台はPixel Watch 2/3のものを踏襲する可能性が高そう。アクセサリーに関する動向が見えてきたことは、1つの安心材料でしょう。

常時表示かつ睡眠計測しても、充電は1日1回でほぼ問題なし

2010年代中盤頃から発売が本格化したスマートウォッチですが、その登場初期は、腕を構えたときだけ、画面が表示されるというものがほとんどでした。バッテリー消費を抑え、駆動時間を少しでも長くするための工夫です。

その状況は少しずつ改善され、いかなる時でも主要情報を表示し続ける「常時表示」が当たり前になってきました。ただPixel Watch(初代)がリリースされた頃でもまだ、常時表示を行なうと極端にバッテリー駆動時間が短くなってしまっていました。就寝時と、朝起きて仕事に出かける前の2回に渡って充電した時期もありましたが、やはり煩雑。いつの頃からか、常時表示をオフにし、睡眠時間計測もしなくなってしまいました。

これが通常表示状態
対して「常時表示」オン設定で、非アクティブの状態。時刻表示が若干簡素化され、一応の節電状態になります。アナログ表示だと秒針などが省略されます
「常時表示」は設定で適宜変更できます

ですが今回、改めて常時表示でPixel Watch 3を使ってみたのですが、1日1回の充電で、常時表示かつ睡眠時間計測を併用しても、途中でバッテリー切れになることはありませんでした。筆者の場合、平均して30~40%程度、最悪でも20%は残るケースが大半でした。

もちろん、1日の運動量が多かったり、Google マップによるナビゲーションを頻繁に利用すれば、この時間は短くなるでしょう。ただし、全体的に余裕を感じられるのも確か。常時表示はオプションで簡単に変更できるので、不安だったり、逆にバッテリーの短さに不満を感じているなら、オン/オフによる変化を一度試してみてください。

入眠直前に満充電にし、起床~日中まるまる行動しても、バッテリー残量が30%を切るケースは、今回の試用期間中には10日中1日程度でした。もちろん、運動量計測を頻繁に実施すれば、だいぶ変わるでしょう

なお、充電にかかる時間も、Pixel Watch 3はPixel Watch 2に比べて20%向上したとのこと。スペック的には24分で50%、60分で満充電になるとされており、試用した範囲でも概ねその通りでした。これであれば、入浴のタイミングで充電を開始し、就寝前に再び装着するというリズムで、無理なく安定運用できそうです。

また、次項で解説するAndroid 14対応の影響かも知れませんが、充電中の画面表示が親切になりました。Pixel Watch 2では単にバッテリー残量を示していたのですが、Pixel Watch 3では残り充電時間が「残り25分」などの単位で示されます。この変更は地味ながら有り難い!

Pixel Watch 2の充電ステータス画面
一方、Pixel Watch 3の充電ステータス画面では、充電にかかる時間の目安が表示されるように。これは便利

アプリ一覧表示がより柔軟に

今回試用したPixel Watch 3は、Androidのバージョンが14となっていました(私物のPixel Watch 2はAndroid 13)。その影響とみられるユーザーインターフェイス(UI)変更も一部ありました。

試用したPixel Watch 3にはAndroid 14が適用されていました

目に付いたのは、アプリの一覧画面です。本体側面のリューズを押して、インストール済みアプリの一覧を表示するのは従来と変わりありません。ただし、この一覧画面は、アイコンとアプリ名が1つの項目となり、縦に延々と並ぶ方式でした。アプリ名をしっかり確認できる利点はありますが、画面サイズが限られたスマートウォッチでは、一覧性が犠牲になっていました。

ですがPixel Watch 3では、アプリ名を省略してアイコンだけ格子状に並べる設定が選択できます(むしろ、こちらがデフォルト扱いの模様)。アイコンを覚える必要はありますが、利用するアプリ数が限定的な場合はむしろこちらのほうが便利。なお、メニュー最下部には表示法をこの2種から選ぶためのスイッチアイコンがあります。

こちらが新しいアプリ一覧。アイコンだけズラッと並んでいます
一覧の最下段に、このような切り替えスイッチが
従来のビューにも戻せます。アプリを把握しきれていない段階では、こちらのほうが便利なはず

側面ボタンを押した時に表示される、直近利用アプリ一覧については特に変わらず。ただし、アプリの上限表示数がやや多くなった可能性はありそう。これまでだと5個程度でしたが、7個に増えたような?

また画面を上から下へスワイプした際に表示されるクイックメニューには、「Connected Fitness」という項目が追加されていました。これは、スポーツジムにあるエクササイズマシンなどとの間で、簡単に心拍数を共有するための機能だそう。接続先マシンの対応も必要なので、おいそれとは使えないでしょうが、かなり目立つ位置にアイコンが表示されているがなんとも印象的です。

最近使ったアプリの一覧
設定パネル右上に見慣れぬアイコン
「Connected Fitness」という機能のアイコンでした

「自動おやすみ時間」で睡眠中の通知を抑制

「自動おやすみ時間」も、目新しい機能でした。気付いたのは、たまたま昼寝していた時。起きて目を覚ますと、ペアリングしたスマートフォンにおやすみ時間モードが適用されていて、通知音などが鳴らないように設定されていたので、最初は正直、ビックリしました。

これはPixel Watch 3の本体設定画面→アプリと通知→サイレントモードと進んでいくと、自動おやすみ時間の設定があります

実態としては、Pixel Watch 3側でユーザーの睡眠を検知すると、まずPixel Watch 3自体が「おやすみモード」へ自動移行します。このモード中はディスプレイの常時表示がオフになり、バッテリーを節減。その上でさらに、スマートフォンと一部設定を同期するようにしておくと、スマートフォン側にも「おやすみモード」が適用されるという流れです。起床から15分経つか、充電を終了すると、通常モードへ自動移行します。手動ですぐにオフにすることも可能です。

筆者は夜24時になると、スマートフォンで自動的におやすみ時間モードが起動するようスケジュール登録しています。その点からすると、若干蛇足感も……。ただし「自動おやすみ時間」の適用有無は設定1つで変更できます。用途に応じて使い分けるのが良さそうです。

おやすみ時間モードが適用されると、腕の動きに応じた画面点灯は効かなくなります(リューズを押せば点灯)。月のマークで適用状況は判別可能。設定によっては、スマホ側もおやすみ時間モードに自動移行・自動再復帰します

Fitbitには色々想うところあり

さて、歩数であったり、消費カロリーであったり、睡眠時間などを計測するための中核アプリがFitbitです。かつては「Google Fit」が一翼を担っていましたが、GoogleによるFitbit買収以降は目にする機会が減少。アプリ間で測定データを同期・共有する機能は「ヘルスコネクト」にほぼ移行しました。

Fitbitがさまざまな運動・ヘルスデータを自動測定してくれます

基本設定を済ませれば、あとはPixel Watch 3を身に付けているだけで、さまざまな運動・健康指標データをFitbitが計測してくれます。上述の3項目以外には、「エナジー」と呼ばれる独自指標、有酸素運動負荷、走行距離などなどが該当。また睡眠時にも装着していれば、呼吸数、心拍変動、皮膚温、血中酸素ウェルネスなど、一般的な歩数計では到底お目にかかれないデータも詳らかにしてくれます。

スマホアプリとも当然連動

Pixel Watch 3では「朝のブリーフィング」という機能が追加されました。朝目覚めたタイミングで通知が届き、これを開くと前日までの運動状況の要約が表示されます。スマートフォン側のFitbitアプリではなく、Pixel Watch 3の画面だけで確認できるというのが、大きな意義です。

「朝のブリーフィング」というプッシュ通知が届く
要点をかいつまんで説明してくれます。スマホアプリを開かずに確認OK

またランニング・ジョギングを行なう人向けの機能が強化されていますが、今回はスルーします。散歩オンリーの人間が、ランナー向け機能を説明するのはちょっと憚られまして……。

ランニングや散歩する際は、計測モードをオンに。移動距離や心拍がリアルタイムで把握できるのは楽しいです

そしてPixel Watch 3と厳密な意味では直接関係しないのですが、Fitbitは昨今、PC版ダッシュボード機能を廃止してしまいました。計測値をPCのブラウザーから閲覧することはできず、原則としてアプリを利用しなければなりません。

Google FitもPCからデータは閲覧できませんでしたし、実際Fitbitのデータを閲覧するのも、アプリからは週に1回だったのがPCでは半年に1回くらいで、利用頻度が低いのは事実です。しかしマルチデバイス対応が当たり前の時代を考えますと流石に……。なにか、より根本的な機能アップデートのための、布石としてのPC版アクセス廃止であってほしいものです。ヘルスコネクトに保管してある体重データを、Fitbitアプリに自動反映する機能も未だにありませんし(あるのかもしれないが発見できない)。

戦略的な決定とは思いますが、しかしやっぱりPC版から統計値にアクセスできないのはどうかと

年に1回新機種が出て一部の周辺機器を使い回せる その安心感よ

この他、完全な新機能として気になったのは「レコーダー」機能でしょうか。Pixel シリーズの音声レコーダーアプリは日本語文字起こし機能が組み込まれていたり、大変高機能です。Pixel Watch 3のレコーダーは、スマートウォッチ側から録音スタート操作を行い、マイクもスマートウォッチを利用。それでいて音声データは、Pixelスマホ側の録音データ一覧と統合的に管理できるのが魅力です。

実際の録音データを聞いてみますと、Pixel Watch 3のマイクによる集音は、それなりというレベル。スマートウォッチを口元に近づけ、筆記メモ代わりに30秒程度を限度に録音するというのが現実的でしょう(マイクが遠いと露骨に録音音量が下がります)。Pixel本体録音時と比べ、日本語文字起こしの精度もかなり低いです。

「レコーダー」で録音中

さて、まとめです。Pixel Watch 3は“順当進化”という表現がまさに適切かと思います。ビックリするような見た目の変化はないが、しかし使ってみると、細かな部分がキッチリと改良・改修されている。特に画面サイズがそうでした。

額縁のスリム化云々と言われても、シリーズ未体験ユーザーには響かないかも知れません。しかしスマホ連携のアプリの完成度も含め、6~7年前のスマートウォッチ体験を知る身からすれば「ご新規さんはいきなりこの完成度を体験できるのか……いいなぁ」とボヤきたくなります。

そして、Pixel Watchが1回こっきりのリリースに終わらず、毎年きちんと新機種が発売され、3年目・3代目に到達した。この事実も大変重要です。どれだけお気に入りのデバイスでも、売れ行きが悪いのか、後継機がなかなかリリースされない事態を、筆者はこれまで目の当たりにしてきました。

Pixel Watchシリーズは3年連続で新モデルがリリースされました。Googleの覚悟の一端だと、筆者は理解しております。今後も大丈夫……だと信じたい

そんな中、Pixel Watchシリーズは1年1回の発売ペースを3年、維持してくれました。長く続く飲食店が偉大なように、デジタル機器もブランドとして信頼を得たいなら、それなりのリリース間隔を守るべきです。そして、それを3年とはいえやり遂げた。これこそが3代目に対して感じた“安心”の正体です。Pixel Watch 2からPixel Watch 3への移行にあたって、充電器の仕様を踏襲してくれた点も、評価できます。

そして課題ですが……やはりこの時期、価格と言わざるを得ません。Android系スマートウォッチをご利用の方はまだまだ少ないと思いますが、52,800円から(Googleストア価格。Wi-Fiモデル)という価格は、ご新規さんにはなかなか薦めづらいところです。転倒検出機能などを考慮すれば、シニア層にもフィットしそうなだけに、悶々とする日々です。

筆者の願望込みの予測ですが、恐らくPixel Watchはリリースが着実に継続されるでしょう。先々の製品に期待を馳せるのもいいですが、今現実に入手できるPixel Watch 3にも是非目を向けてほしいと思います。

例年どおりであれば、Google ストアはブラックフライデーセールを実施するでしょう。それ以外の期間限定キャンペーンなどの動向も見ながら、ぜひ“Pixel Watchのある生活”を体験・実感してみてください。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。