レビュー

電源挿すだけスマートスピーカー「Echo Flex」。2,980円の安さと機能拡張の魅力

Echo Flex

個性的な“スマートスピーカー”が11月14日に発売された。Amazonの「Echo Flex」は、機能を絞り込むことで2,980円(税込)とEchoシリーズ最安値を実現したほか、コンセントに直接装着するデザインを実現。さらに機能を追加できる拡張アクセサリーも用意され、個性的な製品になっている。

外形寸法は72×67×52cm、重量は150gで、サイズ感としてはMacBookの電源アダプタに近い。安価ながら、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n/acと、5GHz帯もサポートしている点も嬉しい。

本体前面には通知用LEDのほか、「Alexa」とウェイクワードを言う代わりにボタン操作で音声認識を開始するためのアクションボタン、マイクオフボタン、スピーカーを搭載。本体底面にはUSB Type-A×1ポートを搭載し、スマートフォンの充電(7.5W)や前述のアクセサリ装着による機能拡張が可能だ。

本体前面。上からLED、アクションボタン、マイクオフボタン、スピーカー
本体背面。コンセントに直接装着できる
本体底面。USB Type-Aポートで充電やアクセサリによる機能拡張が可能
右側面にスピーカー接続用の3.5mmミニジャック

機能は必要十分だが音質は物足りない。集音距離も短め

初期設定はコンセントにFlexを接続するとAlexaアプリをインストールするよう音声ガイダンスが流れる。アプリをインストール済みの場合はメニューの「デバイスを追加」から「Echo Flex」を選択、画面の指示に従ってアプリを操作していくだけで設定が完了する。Wi-Fi簡単設定にも対応しており、対応のAmazon製品を導入済みであれば無線LANの設定も不要だ。

コンセントに装着
Alexaアプリの「デバイスを追加」からEcho Flexを選択→Echo FlexのLED点灯状態を確認→位置情報を許可
LEDの色が変わったのを確認した上でデバイスを選択→Wi-Fi簡単設定対応機器を導入済みのため無線LANは自動的に設定→利用場所を決めてセットアップ完了

機能としてはEchoシリーズ(ディスプレイなし)とほとんど変わらない。ニュースや天気の読み上げ、タイマーといった基本機能に加えて、スマートリモコンを介した家電操作も可能だ。形状が個性的ではあるものの、基本的には「Echoシリーズの最安価モデル」だ。

ただし、本体に音量ボタンがなく、音量のコントロールを音声操作もしくはアプリから行なう必要がある。また、スピーカー性能もさほど高くはない。筆者はあまり音質にこだわりがなく、EchoやEcho Show 5で音質を気にすることはほとんどないが、Flexは明らかに「音質がいまいちだな」と感じた。

音量はアプリまたは音声操作でコントロール

なお、音質については本体の3.5mmミニジャックやBluetoothで外部スピーカーへ出力できるほか、「リビング」など同じ場所のグループに設定されている他のEchoシリーズへ音楽だけ出力する「優先スピーカー」という機能も搭載されている。音質や音楽を重視するなら、Flexは「マイク」=音声入力として割り切り、音楽は別のスピーカーで聴く、という運用がよさそうだ。

他のスピーカーへ音声を出力できる

細かな点ではリクエスト音も異なる。従来モデルは「ポワン」という柔らかめの音だったが、Echo Flexは「ピロン」と高めの音が鳴る。前述の通り、Echo Flexは「同じ部屋での複数台利用」も想定されているため、「どのEchoが音声認識したのか」という判断材料としては便利かもしれない。

Echo Flexのリクエスト音。既存のEchoシリーズとは音が異なる

集音性能は他のEchoシリーズほど高くないとのことだが、近くから話しかけるぶんには十分な精度だ。距離が離れると認識されにくいが、部屋の複数台運用を考えるならこのくらい低い方が使いやすい。

試しにリビングの片側へFlex、反対側へEcho Show 5を設置し、それぞれ近くであまり声のボリュームを上げずに「Alexa」と呼びかけてみたところ、Echo Show 5への呼びかけではFlexは反応せず、Flexへの呼びかけでは反対側のEcho Show 5が反応してしまった。

筆者宅のように複数台のスマートスピーカーを設置していると、同時に複数のスマートスピーカーが反応して操作に困ることがある。Echo Flexの集音距離が短いことは、仕様面からはデメリットに見えるが、誤動作を防げるという意味では、割り切って考えられた仕様といえそうだ。

底面のUSBポートで機能拡張。装着するだけで自動認識

Flex独自の特徴といえるのが「拡張アクセサリ」の対応だ。

アクセサリは、「ナイトライト」「モーションセンサー」の2種類が用意されている。価格は1,780円(税込)。Flexの拡張USBポートは1ポートだけなので、装着できるのは1つに限られる。

左からナイトライト、モーションセンサー、Echo Flex
底面のUSBポートに装着して一体化できる

どちらも初期設定は本体以上に簡単。FlexのUSBポートに装着すると自動で認識されて設定は終了だ。ただし、人感センサーがあるため前後がわかりやすいモーションセンサーに対し、ナイトライトは前後のデザインが同一のため装着する向きがわかりにくい。

モーションセンサーの接続時
ナイトライトの接続時

操作は、Alexaの定型アクションと組み合わせて行なう仕組み。モーションセンサーは定型アクションの指定条件、ナイトライトは指定条件に合致したときに動作するアクションとして割り当てられる。また、ナイトライトはオンオフや明るさ、色変更などをAlexaアプリから直接行なうこともできる。

装着するだけで自動的に認識して設定が完了

ナイトライトは「本体に装着できるスマート照明」。人感センサーとの排他が課題

ナイトライトは、本体に装着するという外見を除けば、動作自体は一般的なスマート照明と変わらない。スマートフォンのアプリやEchoシリーズから電源のオンオフや明るさの調整、16色のカラー変更などが可能だ。また、光センサーを搭載しているため、周囲が暗くなると自動的に明るくなり、明るくなると自動でオフになる。

明るさや電源オンオフ、カラー変更が可能
16色から好きな色に変更できる

形状からして、夜に足下を照らすフットライトとしての利用を想定していると思われるが、自動点灯が光センサーのみのため、夜中はずっと点灯、昼間は消灯、という運用になる。

「人が通ったときだけ点灯」という使い方をしたい場合は人感センサーが必要だが、モーションセンサーとナイトライトのどちらか1つしか装着できない。上記のような使い方をしたいのであれば他社製スマートセンサーを組み合わせることになる。

また、定型アクションに設定できる実行条件は、音声フレーズか時間、アラーム、モーションセンサーに限られるが、前述の通りモーションセンサーは排他のため、実際に使えるのはフレーズと時間、アラームのみということになる。

ナイトライトに割り当てられる実行条件
デバイスで割り当てられるのはモーションセンサーのみのため指定できない

Alexa対応のスマート家電やWebサービスを実行条件にできるのであれば「リビングの電気が付きっぱなしの時は色が変わって教えてくれる」などとアイディアも浮かぶのだが、現状の実行条件は条件が少ないため利用できるアイディアも限られる。基本的には「暗いときに自動で点灯するフットライト」として使うことになりそうだ。

フットライトもモーションセンサーも米国のThird Realityが開発した「Made for Amazon」対応製品。今後、両機能を備えたサードパーティの拡張製品の登場なども期待したい。

動き検出でスマート家電をコントロールできるモーションセンサー

モーションセンサーは120度の視野角、最大6mでの動作検出が可能。手動で操作する機能は搭載しておらず、すべて定型アクションの実行条件としてのみ設定することになる。

指定できるアクションは動作を検出した場合、もしくは指定した時間に動作が検知できない場合の2通り。さらに曜日や時間帯の組み合わせも可能だ。

モーションセンサーは定型アクションで操作
動作検出・非検出を条件に指定
曜日や時間帯、再実行間隔も組み合わせられる

一番シンプルな組み合わせはスマート照明やテレビとの連動だろう。動作を検知した場合にスマート照明をオンにする、一定時間動きがない場合に自動で電気を消す、といった運用が可能だ。また、時間帯を設定することで「深夜は自動では照明を付けず、必要なら音声やスマートフォンから照明を付ける」といった運用が可能になる。

センサーが動作したらダイニングの電気を点灯する定型アクションを作成

モーションセンサーと組み合わせられるアクションは、ニュースや予定、天気予報の読み上げ、スキルやスマート家電の動作、音楽の再生など幅広い。ナイトライトに比べるとアイディア次第でいろいろな活用ができそうだ。

任意のメッセージを音声で読み上げる機能も用意されており、誰かが帰宅したタイミングで伝言を再生する、ということも可能だ。毎回違った伝言の設定は現状の仕様ではやや手間だが、今後「メッセージで送った伝言を人感センサーと連動して読み上げる」といった機能が実現されたら面白そうだ。

モーションセンサーと組み合わせられるアクションの一例

低価格だが機能は十分。アクセサリの機能拡張に期待

Echoシリーズの最安値モデルという位置だが、Echoとしての基本機能はほぼ揃えており、音質面も外部スピーカーや他のEchoシリーズ連携でカバー。集音性能も「近くでないと認識しない」ことが複数台の運用ではメリットとして活用できる。

アクセサリによる機能拡張は、非常に面白い。しかし、1台のみと言う制限にもったいなさを感じる。特にナイトライトは人感センサーで動作できないため、夜中は点灯しっぱなしという状態か指定した時間だけ消灯するという運用になってしまい、「夜中に起きたときだけ足下を照らす」というフットライトの使い方ができないのが惜しい。

一方、モーションセンサーについてはスマート家電と連携できる人感センサーとして考えると面白い。Echo Flexと合わせても5,000円以下という価格で、人感センサーと連動して家庭内のスマート家電をコントロールできることを考えると、むしろ「Alexa機能を搭載したスマート人感センサー」という見方もできる。

基本的にはキッチンや寝室、廊下などの2台目用途で、利用シーンを限定すると便利という製品だ。ただ、使う場所が限られるなら1台目としても十分だ。また、USBを利用した拡張アクセサリも今後のラインアップ拡充を期待したい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝