ミニレビュー

成熟の第7世代。Apple Watch Series 7の鮮やかな画面と変わらない体験

スマートウォッチの定番とも言えるApple Watchの第7世代「Apple Watch Series 7」が10月15日から発売開始されました。価格は48,800円から。

Series 7の最大の特徴が、ディスプレイの改良。ケースの外周の丸みまで表示できるようになり、表示領域がSeries 6比で20%拡大したとのことです。ケースサイズも41mmと45mmの2種類となり、Series 6までの40mmと44mmから1mm大きくなっています。

また、充電時間も33%高速化。加えて、血中酸素ウェルネスセンサーなど、健康とウェルネス関連ツールを搭載するほか、サイクリング、ワークアウト、転倒検知など、自転車に乗る人向けの新機能も強化しています。一部の機能はwatchOS 8の機能なので、従来機種でも利用できるため、Series 7の主な特徴は、ディスプレイの大画面化と充電速度の高速化と、やや地味なアップデートとも感じます。

筆者はApple Watch Series 5を約2年、大きな不満もなく使っています。今回はSeries 7の強化点を中心に試してみました。

画面が大きくなったApple Watch

Apple Watch Series 7では、ミッドナイト、スターライト、グリーン、新しいブルーと(PRODUCT)REDを含む、5つの新しいアルミニウムケースカラーを用意。ステンレススチールケースはシルバー、グラファイト、ゴールドの3色。今回試用したのは45mmのミッドナイトアルミニウムケースとスポーツバンド(グリーン)のセットで、価格は52,800円です。

グリーンの色も新鮮ですが、触れた感触がソフトでとても気持ちよく感じます。手持ちのSeries 5はスポーツバンドを2年間交換セずに使っていますが、比較すると少し固く感じられ、バンドは消耗品として頻繁に買い替えたほうが気持ちよく使えそうな気がします。

Series 7のケースサイズは45mmと41mmの2サイズですが、試用モデルのケースサイズは45mm。小さめの時計のほうが好みなので、1mm大きくなったのは個人的にはマイナスかなとは思いましたが、付けてみるとSeries 5の44mmとあまり違いは感じません。逆にいうと「新製品を買った感」もほとんどありません。

外周まで“ディスプレイ“に

Apple Watch Series 7では、「常時表示Retinaディスプレイ」を搭載し、ユーザーが自分に画面を向けると明るくなり、離すと暗くなります。Series 6でも同様ですが、明るさ70%明るくなり、自分の方向に向けずに“暗い“状態でも時間などを確認しやすくくなっています。つまり「腕時計」としての使い勝手は向上しています。

Series 7の最大のポイントが、画面の表示領域が拡大したことです。Series 6比で20%(Series 3比で50%以上)拡大し、ケースとシームレスに情報を表示できるようになりました。

Series 5とSeries 7を比べてみると、確かに情報量に違いはあり、例えば「計算機」を並べてみるとより見やすく感じます。ただ、使い勝手としてはさほど大きく変わりません。

使っていて違いを感じるのは「通知」などで、画面の大型化と発色が鮮やかになっているため、例えばスタバの通知などもより美味しそうに見えます。また、アクティビティ達成時のアニメーションもちょっとゴージャスに感じられます。このあたりは、“アップグレード感”が少しあります。

ただし、体験として大きく変わった印象はなく、Series 7にして2日ぐらいで馴染みます。Series 5に戻した時にちょっとさみしく感じられますが、これも2日ぐらいで慣れます。そういう意味ではApple WatchはApple Watchという共通の体験が得られるといえます。

ディスプレイの改良という点では、耐亀裂性の高い前面クリスタルガラスを新たに採用。また、Apple Watchで初というIP6X防塵対応と、WR50の耐水性能を備えるなど、耐久性、防水性の向上もポイントと言えます。耐久性は向上しているものの本体の厚みは変わりません。

Series 7には、新たにデザインされた文字盤「輪郭」「モジュラーデュオ」などの文字盤も追加されています。「輪郭」は、目盛り盤をディスプレイの端まで広げ、滑らかなアニメーションで動き、現在の時刻を強調してくれるなど、Series 7独自のものになります。これがあるからといってSeries 7を選ぶ動機にはならないと思いますが、交換するバンドのデザインの選択肢は広がりそうです。

輪郭

SpO2が測れる「血中酸素ウェルネスセンサー」も

ヘルスケア、ウェルネス関連機能もApple Watchの特徴ですが、電気心拍センサーと心電図アプリ、酸素飽和度(SpO2)を測定できる「血中酸素ウェルネスセンサー」なども搭載しています。血中酸素ウェルネスセンサーはSeries 6からの対応で、筆者のSeries 5には搭載していないので、2年間の進化としてはプラスです。

それほど利用頻度が高い機能ではありませんが、昨年のSeries 6での試用時は数値のブレが大きく、一般的な血中酸素濃度の目安とされる95~99%を大幅に下回る数字がでることが多く、実用性に疑問が残りました。今回、Series 7で試したところ、95%を切ることは少なく、数値としてはそれなりに信頼できそうに見えます。

まだ、ムーブ、エクササイズ、スタンドなどを検出して、日々の移動量や運動量を把握できる「アクティビティ」など、基本的な機能は変更ないので、従来のApple Watchユーザーはそのままデータを継承して、健康管理が行なえます。

また、watchOS 8では、新しいワークアウトやマインドフルネスアプリ、アクセシビリティの向上なども行なわれています。

ワークアウトはサイクリングを強化

サイクリング、ワークアウト、転倒検知など、自転車に乗る人向けの新機能も搭載しています。

便利なのは、「屋外サイクル」ワークアウトを自動で開始できること。従来は開始する時に、Apple Watchのワークアウトで「屋外サイクル」を選んでスタートする必要がありましたが、watchOS 8では、GPS、心拍数、加速度計、ジャイロスコープのデータを解析し、ユーザーが自転車に乗り始めたことを検知。ユーザーがワークアウトを選んでいない場合も、「ワークアウト中のようです」と表示し、ワンタップで「屋外サイクル」ワークアウトを始められます。

それ以前の走行データも取得されており、しっかりワークアウトとして記録できるのは便利です。これまでも「屋外ウォーキング」では同様の機能が用意されていましたが、自転車に乗る頻度が高い人にとっては、日常的に運動を記録しやすくなったと言えそうです。

また、ランニングやサイクリングで信号などで一時停止した際に計測を停止し、再び走り出すと計測を始める「自動一時停止」も搭載しています。より正確なワークアウト計測という意味では、かなり便利な機能です。

また、新しい音声フィードバックも追加し、ワークアウトの経過などを自動で伝えてくれる機能を追加しています。ただし、今回5kmのサイクリング、10分のランニングを試したのですが、音声フィードバックは特に受けられませんでした。「1km走りました、タイムは~~」みたいな通知が受けられると思っていたのですが、もう少し高負荷なトレーニングでないとフィードバックしてくれないのかもしれません。

充電も高速化

もっとも“実用的”と思われる機能強化が充電の高速化です。新たに付属のケーブルが「Apple Watch磁気高速充電 - USB-Cケーブル(1m)」となり、高速充電できるようになりました。

Appleによれば、45分の充電で0%から80%充電できるほか、8分の充電で8時間使えるようになるとのこと。

実際に試したところSeries 7の場合、充電56%から10分で71%になりました。Series 5の場合、充電55%から10分で65%だったので、確かに高速化されているようです。なお、新しい充電ケーブルを使っても、高速充電に対応するのはApple Watch Series 7のみです。

地味ながら確実に進化。成熟のApple Watch

順当な進化を果たしたと感じられる「Apple Watch Series 7」ですが、若干物足りなさを感じるのは、Apple Watchユーザーにとってはあまり体験が変わらないことです。

画面が大きく・美しく、充電が早くなったのはもちろん重要ですが、「新製品を買った」的な高揚感はあまり感じられません。Apple Watch Series 5でもwatchOS 8で多くの機能がSeries 7相当になるので直接比べない限りは違いは感じられません。Apple Watchのバンドを追加・交換するほうが、気分が変わるかと思います。

ただし、2年も使えば少しづつバッテリが劣化してくるため、「買い替え時」としてはちょうどいいかもしれません。1年前のSeries 6だと、ちょっと買い換える動機には弱いかと思います。

Apple Watchという製品が成熟してきたということの証左だと思いますが、ガジェット的な魅力よりは、時計であり健康管理のためのフィットネストラッカーとして、とにかく“外せないもの”になってきているように感じます。

32,800円からのApple Watch SEのほうが1万円以上安く、機能も充実しているので、こちらを選ぶのもありだと思います。ただ、個人的にはディスプレイの「常時表示」が腕時計としては必須と考えているので、Apple Watch Series 7のほうがよいと思っています。

iPhoneユーザーにとっては、Apple WatchでiPhoneのFace IDのロックが解除できるという重要な特徴もあります。iPhoneを使うための必須装備として、地道ながらも見過ごせないモデルチェンジと感じます。

臼田勤哉