ミニレビュー

Apple Watch Series 6の“ウェルネス”だけじゃない魅力

9月に発売されたアップルの「Apple Watch Series 6」。スマートウォッチの定番とも言えるApple Watchの最新バージョンですが、Series 6の特徴となっているのが、酸素飽和度(SpO2)の測定など、「ウェルネス」「健康」関連の機能が強化されたことです。

筆者はApple Watch Series 5を約1年、全く不満もなく使っています。ただ、海外ではスマートウォッチでSpO2で計測できる(と謳う)製品が出てきたこともあり、気になっていたところで、Apple Watchまで対応してきたことで期待は高まります。それ以外にも、ディスプレイの改良や動作の高速化なども図られているとのこと。

今回、Series 5からSeries 6に付け替えて、ウェルネス機能を中心に、1カ月ほど新Apple Watchを試してみました。

Apple WatchはApple Watch

試用したのは、ケース径40mmのブルー・アルミニウムケースのApple Watch Series 6で、Apple Store価格は42,800円です。新しいブルーの質感がなかなか良い感じで、個人的には従来使っているスペースグレイより好みです。

筆者のSeries 5はケース径が44mmなので、40mmのケースは最初はやや小さく感じましたが、慣れればより“着けてる感”が無く、手首に馴染むような気がします。

Series 6(左)とSeries 5(右)

また、Apple Watch Series 6では、常時表示の「Retinaディスプレイ」も強化しています。Apple Watch Series 5以降は、Watchを見ていない時(手首を下げている時)でも常に“時計”として使える常時表示ディスプレイを採用していますが、見ていないときの明るさを最大2.5倍にしたとのこと。2.5倍ほどは明るくは感じませんが少し明るくなった印象はあります。

他にSeries 6と5の違いとしては、フィットネス目標達成時の通知がアニメーションになったりと細かな違いはあります。ただ、慣れるとどちらも同じApple Watchという印象。これまで使っていた人も全く違和感無く使えると思います。OSもwatchOS 7で共通で、多くの新機能はSeries 5でも利用できます。

ワークアウトの種類も追加

血中酸素ウェルネスセンサーを試す

個人的に、一番気になっていたのが「血中酸素ウェルネスセンサー」。アップルの説明によれば、酸素飽和度(SpO2)を測定できるということ。ただし、医療用目的ではなく「フィットネスとウェルネスのみを目的としたもの」と説明しています。

血中酸素ウェルネスアプリケーションでの測定は、一般的なフィットネスとウェルネスのみを目的として設計されており、自己診断や医師の診療などの医療使用を目的としたものではありません。

血中酸素ウェルネス App で、血中に取り込まれた酸素のレベルを測定する

とのことで、健康状態の“目安”として活用するものです。

ここで測定する血中酸素濃度は、「血液の働きがどれほどうまく行われているかを把握することで、全体的なウェルネスの状態を知ることができる」というもの。「ほとんどの人の血中酸素濃度は95~99%だが、95%以下になっても通常の生活を送れる人もいる」(アップル)とのこと。

使い方は簡単。Apple Watchをしっかり装着し、[血中酸素ウェルネス App]をタップ。文字盤を上に向け、手首を平らにして動かさないようにする。[開始]をタップし、腕を動かさずに15秒間そのままの状態に保つと、測定結果が表示されます。

血中酸素ウェルネス App

ただし、測定に失敗するときも結構多く、3回に1回ぐらいは失敗します。その場合はApple Watchを付け直したり、手首をしっかり平らにする、といった対策でうまくいくこともありました。また、自動的に測定する「バックグラウンド測定」にも対応しているので、基本的にバックグラウンド測定に任せてもよさそうです。

血中酸素濃度の目安は95~99%。ただし、実際に測定してみると、安静時でも、80%後半から90%前半の数字がでることも珍しくありません。

測定結果は、iPhoneのヘルスケア Appに保存され、「ブラウズ」>「呼吸」>「血中酸素ウェルネス」から確認できます。都度の測定結果のほか、日/週/月/年単位でも確認できますが、筆者の2週間の平均値は「94%」。95%以下でした……。特に健康に問題は無いと思うので、低すぎのように感じます。

「ブラウズ」>「呼吸」>「血中酸素ウェルネス」

折しも新型コロナウイルス感染拡大で、肺炎等の症状を判定するために「酸素飽和度(SpO2)」が注目を集め、SpO2を測定できる「パルスオキシメーター」という医療機器(医療従事者向けに販売)もひところ品薄になっていました。パルスオキシメーターは、指先に装着するだけでSpO2が測定でき、筆者も約半年間、月に数回測っていましたが、数値は97%~99%の範囲内に収まっており、95%以下がでることはほとんどありません。

パルスオキシメーターとApple Watchをほぼ同時に使っても、両者の誤差は大きく、基本的にApple Watchのほうが低い数値が出ます。また、Apple Watchは測定ごとの誤差も大きく、92%の直後に測ったのに98%が出るなど直接的に数値を参考にするには心もとない印象です。

パルスオキシメーターとの誤差は大きい

いまのところ、日常的な用途では「血中酸素ウェルネスセンサー」の活用はなかなか難しそうに感じます。例えばハイキングやスキー、スノーボードなど、標高の高い場所での運動時に参考にするといった使い方が、現状の活用法となりそうです。

なお、Series 6と同時に価格を抑えた「Apple Watch SE」も発売されていますが、発売血中酸素ウェルネスセンサーは、現時点ではSeries 6だけに搭載した機能です。

高度計が意外に楽しい。OSアップデートで対応できないこと

血中酸素ウェルネスセンサーだけでは、Series 5からSeries 6に乗り換えるほどでも無いかなというのが個人的な感想ですが、「高度計」も気になるSeries 6の強化ポイントです。

コンパスとともに「高度計」が追加

高度計は常時動作し、リアルタイムで高度を取得。地上での小さな高度の変化を約30cm刻みで検出でき、新しい文字盤のコンプリケーションやワークアウトの指標として表示できます。登山やサイクリングなどのワークアウトの精度を上げることができるため、それらのアクティビティには重要な機能となりそうです。

インプレスが入居するビルで試してみたところ、一階では高度1~3mですが、22階まであげると79~81mと表示。また、エレベーターに乗ってみると、きちんとリアルタイムで高度が取得できていることがわかります。

また、目を引く機能としては、「手洗い」もあります。watchOS 7の新機能なのでSeries 6以外でも利用可能です。ユーザーが手を洗い始めたことをApple Watchが検知すると20秒のタイマーが開始し、途中で手洗いをやめると、最後まで洗うよう促します。

最初は面白いのですが、室内でちょっと作業した後で手を洗う時でも20秒カウントするのは少し面倒に感じます。個人的には「歯磨き」でこの機能が欲しいと感じました。

加えてwatchOS 7は、睡眠記録の強化や新しいワークアウトの追加なども行なわれています。これらは、Series 5や新しいApple Watch SEでも利用可能です。

Series 6と同時発売のApple Watch SEは、29,800円からとリーズナブルで、しかも高度計も搭載。「これでもいいかな?」とは思いますが、個人的には「常時表示Retinaディスプレイ」が重要と考えています。常時表示でなくても、手首(Watch)を顔に向ければ時間が表示されるのですが、“チラ見するだけで時間がわかる”という腕時計としての基本機能はこの常時表示で実現されます。1万円プラスすると普通の腕時計機能が追加されるというイメージで、Series 5を購入した決め手も「常時表示になったから」でした。

また、Series 6とSEの違いとなるのが、U1チップと超広帯域アンテナの搭載。これにより、次世代の車のデジタルキーなどに対応可能な短距離ワイヤレスによる位置取得が可能となります。また、5GHz帯の無線LAN(Wi-Fi)もSeries 6のみのとなります。

バッテリー駆動時間は18時間でSeries 5と同じです。ただし、Series 6では、充電が高速になり1.5時間以内でフル充電が完了します。また、0%から80%の充電も1時間(Series 5では1.5時間)なので、かなり充電が高速化されています。

充電も高速化

Series 5ユーザーとしては、高度計や充電の高速化はかなり魅力的です。ただ、“機能面”ではwatchOS 7で大幅に強化されたこともあり、すぐにSeries 6に買い換えるほどの決めても無いかな、と感じました。

ただし、今回Series 6を使ってみて気づいてしまったのが、「自分には44mmより40mmのほうがフィットする」ということです。普段使いには40mmのほうが手首に馴染み、“着けてる感”が少なくなります。

特に違いを感じるのが就寝時です。44mmは大きさを感じてしまうので外していましたが、40mmだとさほど気になりません。watchOS 7では睡眠記録も強化されているので、これらの機能を使う上でも、40mmケースのSeries 6が魅力的に感じています。

当たり前ですがケースサイズは、OSのアップデートでは対応できません。ということで、Apple Watch Series 6(とブルーのケース)にかなり魅力を感じております。

臼田勤哉