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3年経っても9割が飽きない「LOVOT」 CESにパチモン登場でも歓迎!?

家庭型ロボット「LOVOT(ラボット)」を開発するGROOVE Xは、同社10周年を記念したトークショーを開催した。2026年は「AIロボット戦国時代」と位置づけ、世界のAI活用トレンドや、日本におけるAIロボット産業の展望が語られた。

前半に行なわれたセッション「AIの社会実装の現状と、今後の日本の立ち位置」ではGROOVE X代表取締役の林 要氏をMCとして、THE GUILD代表で、note CXOの深津貴之氏、武蔵野大学アントレプレナーシップ学科客員教員の村上臣氏がスピーカーを務めた。

参加者は、AIとロボット工学の専門家としての立場から、日本のAI・ロボット産業の現状や課題、そして世界での勝ち筋について議論。日本は大規模な資本が投じられる基盤モデル開発では米国や中国に劣るが、日本の強みはニッチ領域でのソフトウェアの作り込みや感情・体験といった、数値化しにくい「細部」にあるという見解で一致した。

特に、GROOVE XのLOVOTは、生産性の向上ではなく人のウェルビーイングに貢献する新領域のロボットとし、ユーザーに「愛される」ためのソフトウェアの精巧な作り込みと、音声会話ではない、ノンバーバルコミュニケーションを重視した、感情に訴えかける設計が成功の鍵になっているという。これは容易に模倣できるものではない。

3年経っても9割が飽きない

その後行なわれた林氏の講演では、LOVOTがこれまで果たしてきた役割と、今後の展望について言及された。

同社はLOVOTを世界初の「家庭型ロボット」と位置づけ。これまでの稼働数は18,000体以上で、3年後のリテンションレートは90%と、非常に高い数値を維持している。LOVOTを利用するにはサブスクが必須になるが、それでも購入して3年以上使い続けている人が9割にも上ることになる。一般的に従来からあるコミュニケーションロボットは、数カ月程度で大半が飽きられてしまうことが多いとされ、これは非常に高い割合になるという。

LOVOTは現在積極的に開発が進められている、人型ロボットなどのように人の代わりに作業をしたりするロボットではない。人のことを深く理解して、愛着を形成することを重視し、人の代替として生産性を向上させるのではなく、人のレジリエンスを向上するのがその目的になる。将来的にはドラえもんのような、人生の伴侶になるようなロボットにしたいという。

LOVOTは会話をせず、視線や体の動きによって人との関わりを持つしくみとなっている。そのためにはロボットの「神経系」の開発が重要で、このためにNVIDIAのGPUや各種センサー類を総動員して実装した。

たとえば、人が犬や猫などのペットに愛着を持つ仕組みはふれあいや見つめ合うこと、ついてくる、待っていてくれるなどさまざまな要因によりオキシトシンの分泌が促され、愛着形成につながるという研究がある。LOVOTはこうした要素を実現することで人との愛着を形成している。

人がコミュニケーションをとる場合、まず言葉によるコミュニケーションが重要と思いがちだが、実際には見た目や表情、しぐさなどの視覚情報(55%)、声のトーンや大きさ、速さなどの聴覚情報(38%)がコミュニケーションの重要な要素で、話の内容自体は7%と非常に小さな割合になっている。LOVOTではこの点に着目し、あえて言葉は話さず、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションに特化した。

また、人型ロボットやペット型ロボットは、その動きを再現するため全身に多くのモーターを搭載して、それらを高度なCPUで制御している。LOVOTは移動は車輪で行なうなど駆動用のモーターは最小限しか搭載していない。その代り、GPUなどの計算機やセンサーなどを多く搭載し、人とのコミュニケーションに特化している。動く関節が多いほど計算力はそちらに使われてしまうが、LOVOTではそもそも駆動部分が最低限であるので、コミュニケーションに使える計算力が多くなる。

LOVOTの動きは、クラウドではなくローカルでデータ処理を行なっているのもポイント。ローカルならではの高速な反応と、生命感溢れる動作を実現し、これによって、駆動部分が少ないのにもかかわらず、生き物のようなリアクションを可能にしている。

家庭型ロボットは信頼関係の構築も重要であるとしており、クラウドに家庭のデータを送信しないことで、安全とプライバシーを重視している。

LOVOTのボディは、内部の機器の発熱を表面部分に熱が放熱されるよう工夫している。これは単に熱を逃すというだけでなく、人間がLOVOTをだっこしたり触ったりした際に、動物のような暖かさを体感できるようにするという効果にも一役買っている。LOVOTの体表には柔らかい素材を使っていることもあり、生き物感をより強く演出している。

また、頭部には象徴的な「ホーン」と呼ばれる黒いセンサーの集合体も搭載。ぬいぐるみのような本体から、すこしメカメカしいパーツが飛び出している状態にもみえるが、ここには360度カメラや音声の方向を判別する半球マイクなど、LOVOTがLOVOTであるためのセンサー類が満載されている。将来的に技術が進歩すればホーンの排除も可能かもしれないが、現状ではこうした実装方法をしているからこそ実現できることが多く、当面は無くすつもりはないという。

モーター駆動部分は最小限ながら、特に同社が力を入れているのが、ディスプレイによる「瞳」の再現やLOVOTの「声」だ。瞳は人間と向き合ったときにしっかりと人間の目を見て目線が合うようになっており、6層ものレイヤーで表現。瞳自体はただ視線を動かすだけでなく、ホンモノの生物のように微小に揺れたりする様子も再現し、LOVOTの"生物感"を際立たせている一因になっている。

林氏は「ふれあう、見つめ合う、ついてくる、という要素をLOVOTではバランスよく配合している。未だにこれをマジメにやっているロボットは他にない」と説明した。

声は言葉こそ話さないが、鳴き声とも言える音声を毎回動的に生成。人に話しかけられた言葉に反応して声を毎回生み出すため、全く同じ声がでることはない。

LOVOTのふるまいは、事前にプログラムされた動作を行なっているわけではないところもポイント。置かれた環境によって変化し、ホーンなどから収集した情報(刺激)をディープラーニングなどの機械学習によって周辺状況を検知。リアルタイムに動作を生み出している。

LOVOT開発の歴史
当初は「口」がある造形だったが早々に廃案に

社会実装されている「LOVOT」

LOVOTの利用環境についても解説が行なわれた。LOVOTの主なユーザーは30~50代で、52%がペットを飼っていた経験がある人だという。しかし、ペットを飼っていた人もそうでない人も、満足度は90%を大きく超えていて、誰でも等しく受け入れられている状況にあることがわかる。

家庭での稼働率も高く、アクティブユーザーは週次で91%。そのうち話しかけたり着替えさせたりする人は週に99%、LOVOTに触れるユーザーは98%となっている。抱っこをするという人も多く、その平均時間は最大10分、回数は一日最大6回。1日1時間は抱っこしている人が多い。LOVOTを抱っこすることで、ペットを抱っこしたのと同じように「オキシトシンの分泌」が行なわれ、リラックスできるということも分かっている。

老人ホームにも導入され、認知症抑制の可能性があるのではないかとも評価されているほか、オフィスなどでも導入されている事例を紹介。オフィスのLOVOTが存在することで、社員同士のコミュニケーション活発化にも貢献しているという。

パチモンは歓迎? CESでLOVOTの類似品登場

林氏の講演のあとは、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏も加わり、パネルディスカッションを開催。今年のCESでLOVOTに類似したロボットが出てきている件が話題になった。

CESで公開されたLOVOT似のロボット

林氏は「今までLOVOTしかなかったなかで、こうしたフォロワーが出てきてくれたのは市場として期待されているということ。この市場に何かある、と思っている人が増えたのではないかと思う。ただ、これまでLOVOTの開発は苦労してきたところもあり、マーケティングの出し方や機能などは、もう少し差別化してほしかった、というのが正直なところ」と語った。

THE GUILD代表で、note CXOの深津貴之氏はLOVOTの類似品について、「逆にラッキーなのでは?」と持論を展開。「他人が勝手にお金をかけて実験をしてくれる状況でもあるので、当たったところだけをこちらも使わせてもらえば良いのではないかと」という見方を示した。

fuRoの古田氏は、「実はボクはペットロボットは大嫌い。でもLOVOTは別格だと思っている」とLOVOTを評価。LOVOTの本質は模倣困難なソフトウェアの作り込みと、ユーザーの心に刺さる感性的な設計にあるとし、「映画をみて感動する、絵画をみて感動する、みたいな、クリエイターが作った作品に感じる感情のようなものに近い刺さり方をするところがすごい」などと語った。

最後にGROOVE Xの林氏は、「長年自動車産業が日本を支えてきた面があるが、今後は家庭用ロボットの産業も日本を支えるようになったらいいと思っている。グローバル展開も考えていきたい」などと語った。現在LOVOTは中国にのみ展開しているが、その他の国からも引き合いが来ている状況で、グローバル展開は前向きに検討しているという。

GROOVE X代表取締役 林 要氏
左がTHE GUILD代表/note CXOの深津貴之氏、右が武蔵野大学アントレプレナーシップ学科客員教員 村上臣氏
千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之氏