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どこで落としても一発検索 findは日本の落とし物の4割カバーを目指す

「落とし物クラウドfind」を展開するfindは12日、複数の交通機関や商業施設の落とし物を横断して検索できる新機能「横断検索find chat」を発表した。専用チャット「find chat」内に追加される。

これまで落とし主は、落とした場所が分からない場合、複数の交通機関や商業施設の窓口に問い合わせる必要があり、事業者側も自社にない落とし物に関する問い合わせ対応を求められるなど、負担が生じていた。

横断検索find chatでは、落とし主が想定される複数の施設を選択し、一度の問い合わせで確認できるようになる。findのオペレータ―が横断的に落とし物情報を検索・回答することで、落とし主と事業者双方の手間を削減する。

なお、複数の主要インフラ事業者をつなぎ、落とし物を一元的に検索できるネットワークを構築する取り組みは国内初となり、全国の落とし物への問い合わせ窓口統一に向けた大きな一歩となる。

現時点で横断検索と連携しているのは、京浜急行電鉄、京浜急行バス、東京モノレール、羽田空港旅客ターミナル、日本交通、東京ハイヤー・タクシー協会の6つの企業・施設。また、JR東日本をはじめとする15社が参画を検討している。

findは今後、1年以内に約100社、3年後には約500社と連携し、横断検索の対象拡大を目標としている。

新機能により、想定される落とした場所を記入するとAIが候補を表示し、選択することで一括で問い合わせできる
オペレータ―側も複数施設の横断検索が可能に

年間5000万件の落とし物を3年で4割カバーへ

同日に行なわれた報道関係者向け発表会では、find 代表取締役CEOの高島彬氏が登壇し、日本の落とし物を取り巻く現状と同社サービスの展望を説明した。

2024年に警察に届けられた現金以外の落とし物は過去最多の3,128万点に達した。同社の調査では、企業側で返却された分も含めると、全国の落とし物は年間5,000万件に達するという。一方、鉄道会社や商業施設で保管された落とし物は持ち主が見つからずに廃棄されるケースも少なくない。

大手百貨店では1店舗あたり毎月約600件を廃棄し、その対応に約10時間を要するなど、現場の負担は大きいという。また、落とし主も問い合わせ先が分からないなどの課題を抱えている。

落とし物クラウドfindは、こうした課題をテクノロジーで解決するサービスとして、現時点で35社・3,500施設に導入されている。

各企業や施設がクラウド上で落とし物情報を管理できるほか、AIやチャットを活用した検索・返却システムにより、導入企業では返却率が従来比で約3倍に向上し、従業員の業務負担も平均8割削減したという。

findでは、9月にリユース事業「findリユース」を開始し、保管期限切れの落とし物をメルカリを活用して再流通させる仕組みを展開するほか、落とし物の保管・配送拠点「findセンター」も用意。

今後は、年間約5,000万件の落とし物のうち、3年以内に40%をカバーすることを目指している。また、海外展開も検討を進めている。

JR東日本・日本交通・東京モノレール「findの全国標準化に期待」

発表会では、東京モノレール 代表取締役社長の宮田久嗣氏、日本交通 取締役の川鍋一朗氏、JR東日本 代表取締役社長の喜㔟陽一氏によるトークセッションも実施。find導入の背景や、今後の期待について語った。

左から、日本交通 取締役 川鍋一朗氏、JR東日本 代表取締役社長 喜㔟陽一氏、find 代表取締役CEO 高島彬氏、東京モノレール 代表取締役社長 宮田久嗣氏

宮田氏は、東京モノレールにおいて、とくに訪日観光客に快適な移動体験を提供するうえで、落とし物対応が大きなストレス要因になっていたと説明。従来は対応に時間を要していたが、find導入後は問い合わせ件数が大幅に減少し、社員の負担も軽減されたという。

川鍋氏は、日本交通では月3,000件の忘れ物が発生し、その対応に月1,000時間を割いていたため業務を圧迫していたと振り返った。find導入により対応時間は半減し、返却率も改善したと述べた。

喜㔟氏は、JR東日本では年間約200万件の落とし物が発生する一方、返却率が約3割にとどまる現状に触れ、ユーザーの探す手間や本当に戻ってくるのかという不安を軽減する狙いから、26年4月のfind導入を決めたと説明した。また、社員の作業負担を減らすとともに、訪日客も安心して鉄道を利用できる環境整備につなげたいと述べた。

今後の期待としては、警察とのシステム連携に期待が寄せられたほか、findの落とし物検索がデファクトスタンダードとなり、全国で横断検索が標準化されることを望む声が上がった。