NEC、衛星光通信のデータ転送遅延を半減する新技術

NECは、光通信衛星コンステレーション(人工衛星群)構築に向け、新たなネットワーク制御技術を開発した。宇宙と地上の通信を低遅延・高信頼にし、大容量データを安定的かつスムーズに通信可能にする。観測衛星や宇宙ステーションだけでなく、災害時の状況把握や自動運転といったミッションクリティカルな用途にも活用可能。

次世代の通信技術である「Beyond5G/6G」では、地上だけではなく、空や宇宙空間を使ったネットワーク(非地上系ネットワーク、NTN: Non-Terrestrial Network）への期待が高まっている。すでに、衛星を使ったモバイル通信サービスも開始されているが、従来の衛星通信システムは、山間部や島しょ部、海上や上空など地上ネットワークが未整備な場所でのインターネット接続手段で、通信速度や安定性はその時々の状況次第であるベストエフォート型サービスがほとんどになる。

しかし、今後は災害時の状況把握や自動運転、遠隔で精密な作業を要する無人検査などでの必要不可欠な要素として、宇宙のネットワークニーズが高まるという。

こうした背景をうけ、NECはLEO衛星コンステレーションに最適な経路制御技術を開発。データ転送遅延を半減することを可能にした。LEO衛星コンステレーションは複数の衛星を光通信で相互接続するネットワークを持つが、地上局と衛星、衛星同士の距離が常に変動するため、データを最速で届けるための通信経路の探索と制御が難しく、通信の遅れが大きく変動する問題があった。

NECは、衛星の移動による距離(遅延)の変動を計算可能なモデルを作ることで、最適な経路探索と制御を実現。これにより、データが最も速く届く通信経路の選択が容易になった。少ない計算量で処理できるため、衛星と地上局が瞬時に通信経路を選択できる。これらにより、データ転送遅延を従来比で半減している。

LEO衛星を使った通信では、地上局から見える(接続できる)衛星が次々と替わるため、通信経路の切り替え(ハンドオーバー)が頻発する。切り替えの際には、通信品質を保持するために複数経路を用いた通信が有効になる。しかし、ハンドオーバーの際にデータの一部が失われたり、複数経路から送信されたデータがバラバラの順番で到着することで、通信遅延が変動するという問題があった。

NECは、前述のモデルを利用し、データが届くまでの時間や経路が途切れるタイミングを予測し、それに合わせてデータを送る仕組みを開発。これにより、遅延変動を従来の1/30に抑制することを可能にした。

同社は、光通信衛星コンステレーションに関する8つの研究開発成果を、11月25日～28日に北海道札幌市で開催中の「第69回宇宙科学技術連合講演会」で発表する。