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NTT、道路陥没の予兆をレーダー衛星で発見する新技術 世界初

NTTは、合成開口レーダー衛星(SAR衛星)から道路陥没の予兆を捉える手法の実証に世界で初めて成功した。衛星からのレーダー照射によって、地中の空洞を直接探査する手法で、現地に赴くことなく効率的に道路陥没リスクの位置を探り当てることができる。

1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故による被害を始め、上下水道の劣化による道路陥没が社会問題化しているが、少子高齢化による労働力不足などにより、現地作業の効率化が求められている。

NTTは、衛星技術による土壌水分などの地盤調査の研究を進める中で、電波が地面に浸透して内部情報を計測できることを発見。この技術を応用し、SAR衛星による道路陥没の予兆を検知する技術を開発し、実証した。

道路崩壊にいたるには、水道管などの損傷により、空洞が発生する地中空洞の形成、それに伴う地盤の乱れ、そして道路表面に凹凸が発生する3段階がある。レーダー波はそうした状況に対して、地中の空洞に対しては2回の反射が発生、地盤の乱れに対しては体積散乱、凹凸には表面散乱と、それぞれ異なる反応がある。これらを計測することで道路陥没の予兆検知が可能になる。

実際に、道路に空洞があることが分かっている地域において検証を行なったところ、衛星データのみで実際の空洞を確認できることも確認した。

現時点では、おおよそ50~100cm程度の深さまでの調査が可能で、今後より深い位置までの探査も可能かどうか研究を進める。衛星を使用するため定期的な定点解析が容易で、道路陥没の進展を観測できるだけでなく、現場に人員を派遣する必要がないことからコストも大幅に削減できる。従来の手法では、車載型の地中レーダーによる地盤モニタリングを現地に赴いて行なうことが主流だったが、衛星による観測ではコストを約85%削減できる見込み。

地中探査においては、AIによって過去の道路損傷データや気象情報、交通負荷データなどの情報を解析して陥没を予測する手法もあるが、今回の技術ではレーダーにより直接地中の状況を探査できることが強みとなる。

10月に発表された光ファイバーによる地盤モニタリング手法では、より深い位置に埋設された光ファイバーを使って地中の空洞を検出することが可能で、NTTではこれらの特性の異なる技術を相互補完することでより確実に道路陥没の予兆を検出することを目指す。