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“次世代ゴアテックス”完成 耐久性を追求「長く使うのが一番エコ」
2025年9月9日 09:00
日本ゴアは、「GORE-TEX」(ゴアテックス)ブランドで進めている“次世代GORE-TEX”について、ハイエンドの「GORE-TEX Pro プロダクト」の提供を開始し、この秋冬から各社の新製品が登場すると発表した。加えて、服の持つ耐久性が環境負荷低減に貢献すること、欧州で進められている耐久テストの標準化の取り組みやゴアテックスの参画なども紹介された。
世界規模でPFASフリー(フッ素化合物、フッ素加工を採用しないこと)の取り組みが拡大していることを受け、ゴアテックスの基本となる薄膜のゴアテックス・メンブレンの素材は、従来のフッ素ポリマーを加工した「ePTFE」(延伸ポリテトラフルオロエチレン)から、「ePE」(延伸ポリエチレン)に変更する取り組みが進められてきた。
ePEメンブレンは、ゴアテックス史上初となる基本素材の変更。2014年から代替素材の研究が開始され、2017年にePEの採用を決定、2022年秋冬にはePEメンブレンを採用し比較的カジュアルな性能の製品である「次世代GORE-TEXプロダクト」が登場している。2023年には、より高性能な「次世代GORE-TEX Performance プロダクト」の展開も開始された。
なお、ePEメンブレンは軽量化といったメリットもある一方で、PFASフリー化に伴い、表生地の表面に施される耐久撥水加工(DWR)もフッ素を使わないものに変更されているため、理想的な撥水性能を維持できる期間は従来より短くなるとされている。洗濯の頻度を上げ撥水性能の回復をこまめに図るなど、日常的なケアはより重要になる。
今回発表された「GORE-TEX Pro プロダクト」は、8,000m級の登山にも使用できるウェアに用いられる最上位のラインナップ。ゴアテックスは生地のブランドでありながら、最終製品の品質や耐久性もテストしているのがユニークな点で、「GORE-TEX Pro プロダクト」ではフードのデザインから加工方法までさまざまなチェックが行なわれ、暴風雨を想定した「ストームテスト」や摩耗テスト、極限環境での長時間のフィールドテストを含む、極めて厳しいテストが課される。
「GORE-TEX Pro プロダクト」の展開により、ゴアテックス・ウェアのePEメンブレンへの全面移行が完了する形。この秋冬シーズン、幅広いメーカーから「GORE-TEX Pro プロダクト」が登場する予定で、発表会の会場にも一部の製品が展示された。
長く使える衣料品に“耐久性”の性能表示を目指す
米ゴア(W.L.Gore & Associates)のマリー・マウェ氏からは、防水透湿ウェアの耐久性評価について、独立した機関が標準化に取り組んでいることが紹介された。ここにはゴアテックスの知見も持ち寄られているという。
「リサイクルは多くの人が考えているほど効果的ではない」とマウェ氏はまず問題を提起する。廃棄予定の衣料品をリサイクルすると、糸原料の製造工程の環境負荷低減に貢献できるが、これは製品の製造工程全体からすると20%程度の効果に過ぎないという。さらに“リサイクルのための輸送”など別の環境負荷も発生するため、実際の影響度は5~10%にとどまるとする。
同氏は、衣料品業界のデータとして、2000年から2015年までの15年間で生産と消費がどちらも2倍になったというデータや、2030年にかけてここから60%増加するという予測もあると紹介。一方で、個々の衣料品の使用回数は減り、さらに品質も低下していると指摘、「これでは環境に優しいとはいえない」と断じる。
サステナビリティの観点で、衣料品の耐久性の重要度は大きい。さまざまな研究のうち「同じ服を2倍の期間着たら、CO2排出量を半減できる」というデータを紹介。耐久性の高い製品を作ることが循環型社会にとって最も重要であるとし「リサイクルはあくまで最後の段階。最も重要なのは、なるべく長く使うこと」と訴える。
耐久性が高ければ、長く使用できるだけでなく、レンタルサービスでも有効に使え、中古市場でもリセールバリューを高められる。欧州、米国、日本でも、耐久性の高い衣料を着たいというニーズは着実に増加しており、特に若い世代の消費者から関心を集めているという。
しかし、そこで課題となるのは、衣料品の耐久性について比較が難しく、決まった測定方法も存在していないこと。
マウェ氏は、ミッドスウェーデン大学の研究に参加し、ゴアテックスの耐久性テストの知見を提供して、測定方法を確立する取り組みを進めていることを紹介する。一口に衣料品といってもさまざまな用途やジャンルがあるため、まずはアウトドアウェアのような高性能ウェアから取り組まれているが、この研究は公的資金によって運営され特定の素材に偏らないものになっており、ウェアメーカーや素材メーカー45社が公平な立場で参画し研究が進められている。
最近の研究では、古いものから最新の製品まで700着以上をテストし、防水性能が劣化する場所や原因の特定が進められた。それによれば、最も弱点となったのは(ファスナーや袖口ではなく)生地そのもので、次いでシーム(縫い目の防水補強)だった。
このことからも、まず素材の耐久性が重要であり、その次にシームテープという結果になっている。また、見た目は新品でも水漏れなどの不具合を起こした製品があったほか、古くても機能はしっかりと維持していた製品もあるといい、ラボでの詳細なテストで明らかにすることが重要とした。加えて、これらの機能・性能の維持には日常的なメンテナンスが重要とし、ユーザーが果たす役割も大きいとしている。
こうした検証の結果は今後まとめられ、防水透湿ウェアの耐久性の評価方法として2026年にも発表される見込みになっている。





























