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アマゾンの衛星ブロードバンド「カイパー」日本で26年度開始の計画
2025年8月21日 15:58
Amazonが総務省に提出した報告書が公開され、同社が整備を進めている衛星ブロードバンド「Project Kuiper」(プロジェクト・カイパー)の日本で展開予定や具体策が明らかになった。プロジェクト・カイパーの日本でのサービス開始は2026年度内を予定する。
プロジェクト・カイパーは、多数の低軌道衛星で構築される「衛星コンステレーション」によるブロードバンドインターネット接続サービス。同様のサービスとしてすでにSpaceXが「Starlink」(スターリンク)を展開しており、プロジェクト・カイパーは計画規模や提供形態などの面でスターリンクに続くサービスになるとみられている。日本では、Ku帯の非静止衛星通信システムであるスターリンクと「One Web」(ワンウェブ)について制度を整備済み。
総務省は、災害発生時などを念頭に、衛星コンステレーションが地上系ネットワークを補完する存在として重要性が高まっていると指摘、円滑な導入を支援するため制度の整備を急ぐ。2025年12月にも情報通信技術分科会に案を提出、一部答申を得るスケジュールになっている。
なお、アマゾンが提出した報告書は、移動体での利用(ESIM:Earth Station in Motion)について検討対象外と記載している。
アマゾン傘下の「Amazon Kuiper Japan」が提出した資料によれば、カイパーシステムは当初の計画として最大3,232基(3,236基から変更)の非静止衛星で構成される衛星コンステレーション。高度590km、610km、630kmの3つの高度で展開される。米国で免許を取得しており、Ka周波数帯で運用し、日本を含む世界中のどこでも、大容量・低遅延のブロードバンドサービスを提供する計画。カイパー衛星は2025年8月までに78基が打ち上げられている。
カイパーシステムのサービスエリアは北緯56°から南緯56°までで、世界の人口の95%へのサービス提供を可能にする計画。日本の排他的経済水域(EEZ)全体もエリアに含まれる。
カイパーにより、「日本のさまざまな顧客に対し新たな選択肢を提供する」としているほか、緊急時や災害時の利用も見込む。
カイパー衛星は、低軌道高度で運用され、操作可能なフェーズドアレイアンテナを使用。地上に半径10km弱の仮想的なスポットを作り出す方式で、衛星が移動しても仮想スポットが特定の地面を照らし続けるように制御される。衛星間でハンドオフと切替をシームレスに行ない、エンドユーザーの通信を維持する。
このビームカバレッジは日本全国をカバーする一方、移動体での利用を検討対象外としているためか、海上エリアは示されていない。例えば離島はエリアとして示されているが、離島までの航路はエリアとして示されていない。少なくとも当面は、アンテナを任意の場所に設置し、移動せずに使うサービスになると考えられる。
衛星とユーザー端末との間で使用される周波数帯(Ka周波数帯)は、ダウンリンクが17.7~18.6GHz、18.8~19.4GHz、19.7~20.2GHz、アップリンクが28.35~29.1GHz、29.5~30GHz。衛星とゲートウェイ局との間の周波数帯は、ダウンリンクが17.7~18.6GHz、18.8~20.2GHz。アップリンクが27.5~30.0GHz。
日本国内では、衛星-ゲートウェイ間の一部の周波数共用について事業者間で調整を実施し懸念を解消する方針。また、ほかの衛星コンステレーションとの干渉については衛星ダイバーシティを活用した干渉低減措置を講じる。このほか地上の5Gシステムなどとの干渉回避と共用の可能性についても報告。総務省は情報通信審議会向けの報告書(素案)で、ほかの無線システムとの周波数共用が可能と結論付けている。
ユーザーに提供される通信アンテナ端末は「コンパクト」「スタンダード」「プロフェッショナル」の3種類。コンパクトは通信速度が最大100Mbpsで、サイズは7インチ(17.8cm)四方。スタンダードは最大400Mbps、サイズは11インチ(28.9cm)四方。プロフェッショナルは最大1Gbps、サイズは19×30インチ(48.3×76.2cm)。







