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消費者欺く「ダークパターン」撲滅へ “誠実なWebサイト”認定制度

ダークパターン対策協会は、Webサイトやサービスが、ダークパターンによらず誠実に設計されていることを認定する「NDD認定制度」を開始する。認定マークのデザインと、審査の第1段階である事業者向けの自己審査チェックシートが公開されており、10月から認定審査の受付を開始する。また、ユーザーからの情報を受け付けるホットラインを開設しており、秋には子供や高齢者向けの啓発・対策動画も公開する。

ダークパターンとは、Webサイトやアプリなどにおいて、事業者が有利になるよう誘導する手法のこと。不誠実な、操作的、強制的、欺瞞的な手法であり、典型例として、ユーザーの意志に沿わない製品・サービスを購入させる、優良誤認を誘う、定期購入へ密かに誘導する、解約を妨害する、などが挙げられる。悪意をもって仕組まれている場合のほか、悪意がなくても結果的にダークパターンに陥っている過失のケースもあるとする。

ダークパターンの例

ダークパターンはユーザーの不利益や、金銭的・心理的被害の発生につながる。真面目な事業者が、ダークパターンを採用しないことで競合に負ける「正直者がバカをみる」という環境が広まると、健全な市場競争を損なうリスクがあることも指摘されている。

協会は500人への調査で、ダークパターンの経験率は86%に上り、金銭被害の経験の割合も30%になることを明らかにしている。ダークパターンによる1人あたりの年間被害額は推計でおよそ33,000円。これを日本のインターネット人口(1億400万人)に当てはめると、推計の被害総額は年間1兆円以上になるとする。日本の消費者向けネット取引の市場規模は約25兆円で、4%程度も占めるという試算。

法令違反など悪質なものは消費者庁を中心に取り締まられているが、グレーゾーンが多いのもダークパターンの特徴。民間主導の自主的な対策を進めるのがダークパターン対策協会の取り組みで、ダークパターンを使用していない、“事業者の誠実なWebサイト運営”を評価・認定する仕組みとして「NDD認定制度」を創設した。NDDはNon-Deceptive Design(欺瞞的でないデザイン)の略で、非ダークパターンの意味。

NDD認定制度で「誠実なWebサイト」を分かりやすくする
協会の活動

認定マーク制定、毎年更新

NDD認定制度は、自己審査、認定審査機関による一次審査、協会の審査局による最終審査、の3段階で構成される。自己審査では、審査対象ではないものの“ダークパターンにならないために推奨される項目”も解説される。認定を取得した事業者はWebサイト上に「NDD認定マーク」を任意で表示可能。マークはJavaScriptにより協会からデータを読み出す形で、改ざん耐性を備え、クリックや認定番号から認定情報も確認できる。

NDD認定マーク

審査の対象範囲は、当初は「組織的対策」「クッキーバナー」「購入前最終確認画面」の3種類。それぞれの領域でNDD認定マークを表示できる。今後はAI判定ツールなども活用して、「個人情報の取り扱い」「商品・サービス説明」の領域についても、ダークパターンの審査を行なう方針。

「組織的対策」
「クッキーバナー」
「購入前最終確認画面」
当初の3つの審査範囲
今後2つを追加予定

認定マークを表示できる領域が複数種類に分けられた理由は、1種類のみだと、Webサイトのすみずみまでダークパターンを使用していないと誤解される可能性があるため、と説明されている。なお、認定マークの表示は任意なほか、テキストのみのリンクも用意されている。

「クッキーバナー」とは、近年整備された、Webサイトのクッキーの受け入れについてユーザーに判断を問う小画面。ここでのダークパターンとは、受け入れさせるよう意図的に誘導したり、選択内容と実際のクッキーの挙動が違ったりするというもの。認定を取得した場合、クッキーバナー上にNDD認定マークを表示できる。

「クッキーバナー」のNDD認定マークの表示イメージ
「購入前最終確認画面」のNDD認定マークの表示イメージ

NDD認定は1年毎の更新制。認定を取得した初年度は「BRONZE」からスタートし、翌年度に更新すると「SILVER」、3年目の更新で「GOLD」になる。認定更新時のほか、協会による定期チェックやホットラインへの申告により認定に疑義が生じ、協会が調査し事業者に是正依頼を出した場合は、認定マークに「Under Review」(審査中)の文字が加わる。30日以内に是正されない場合、認定は取り消される。

審査料金など

ダークパターンは、ITリテラシーが低い子供や高齢者が特に影響を受けやすいとされる。このため協会は、子供や高齢者を対象とした「ダークパターン対策動画」を制作、秋に公開する予定。小中高生向けの動画は、消費者庁と文部科学省のレビューを経て作成しており、学校やPTAの活動でも使用できる内容として、活用を呼びかけていく。ダークパターンは、ユーザーを焦らすなど、直感的な判断を誘発し、有利な方向に誘導することが知られており、動画は「一度立ち止まって、じっくり考えよう」といった内容になるという。また、高齢者を含めた一般向け動画は、消費者庁のレビューの下で作成されている。

このほか、ホットラインに寄せられた情報は統計として公開される予定。新たなグレーゾーンのダークパターンなどは“現場の声”としてガイドラインにも内容を反映していく方針で、NDD認定制度の活動の透明性を確保していく。

ホットラインも開設

15日に開催された発表会では、「ダークパターンという言葉を知ってもらわないといけない」(ダークパターン対策協会 代表理事の小川晋平氏)と、第一歩を踏み出した状況であることが語られた。また、「“誠実さ”は企業の信頼性につながる。(NDD認定は)企業価値の向上に直結し、非財務情報(財務諸表に表れない価値)として有効活用できる」(同協会 理事のカライスコス・アントニオス氏)と、事業者の参加を訴えた。通信販売など関連する業界団体にも連携を呼びかけていく方針。

トークセッションにゲストとして登壇した消費者庁 審議官 新未来創造戦略本部 次長 弁護士の黒木理恵氏も、「自社のWeb体験を見直す有効なツール。誠実な取り組みを分かりやすく伝えるのも大事。真面目な取り組みがダークパターンを減少させる」と語り、真面目な事業者が理不尽な不利益を被らないよう、活動を支援していくとした。

小倉優子と平成ノブシコブシもステージに登場、クイズ形式でダークパターンについて学んだ