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ソフトバンク、26年に「空飛ぶ基地局」実現へ 浮力で飛ぶ新型「HAPS」
2025年6月26日 11:04
ソフトバンクは、成層圏通信プラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」のプレ商用サービスを、2026年に日本国内で開始する。
この一環として、浮力を利用して飛行を維持するLTA(Lighter Than Air)型のHAPSを開発する米Sceye(スカイ)に出資し、日本国内におけるHAPSのサービス展開に係る独占権を取得した。ソフトバンクはこれまで、飛行機のような形のHTA(Heavier Than Air)型のHAPSを開発してきたが、新たに飛行船のような形のLTA型HAPSを活用し、早期の商用化を目指す。そのためソフトバンクはSceyeに1,500万ドルの投資を行なう。
HAPSは「空飛ぶ基地局」と呼ばれ、高度約20kmの成層圏から広範囲に通信サービスを提供する。ソフトバンクは、HAPSの商用化により、大規模災害時の通信サービス提供や、ドローンやUAV(無人航空機)向けに安定した通信環境を提供する次世代3次元通信ネットワークの構築を目指す。
SceyeのHAPSは、空気より軽いヘリウムの浮力で上昇し、長時間滞空できることが特長。これまでに20回以上の飛行に成功しており、米国州政府や民間企業との連携を進めている。機体の容積や重量は非公開だが、長さは65m。
ソフトバンクは、Sceyeと協力してHAPSを導入することで、既存の通信インフラが届きにくい地域への通信環境の拡充や、気象災害のリアルタイム検知と即時対応、精密な環境モニタリングを可能にする。
地上のスマホや車を対象にした2次元の通信ネットワークに加え、6G時代にはドローンやUAVなどの増加により、上空を含めた空間全体をカバーする“3次元”の通信インフラの整備が必要と見込まれる。ソフトバンクは、HAPSが6G時代のインフラになると捉え、2017年から大型のHTA型HAPSや要素技術の研究開発を進めており、新たにLTA型のHAPSを開発するSceyeと連携。次世代の3次元通信ネットワークの実現を目指す。
2026年に日本国内でHAPSのプレ商用サービスを開始予定で、大地震などの大規模災害時における通信の復旧や、山間部や離島といった既存のモバイルネットワークの電波が届きにくい地域でのサービス提供を想定している。
衛星を使ったインターネットサービスもあるが、HAPSでは地上からの距離が短い(約20km)ため、より高速かつ大容量、低遅延な通信が可能になる。特に「上り」の速度については衛星より相当に優位としている。また、飛行する場所を選べるため、エリアもニーズに応じて柔軟に展開できるようになる。
エリアについてはプレ商用段階では限定して提供予定だが、27年には直径200kmをカバーするなど広域に展開できるとする。
なお、太陽光発電を使って運用するHAPSの仕組み上、運行可能な地域に北限があり、高い緯度の場所では使えないという課題がある。しかし、従来開発していたHTA型より、LTA型のほうが有利で、この点もLTA型を導入する一因となったとのことで、本州では使える見込みという。こうした知見を2026年のプレ商用サービスで確認していく。
なお、2026年のサービスは「プレ商用」という位置づけで、メッセージや通話、通信などを関係者に限定して検証。10日程度の期間を区切りながら機体を飛ばし、日本における実用性などを検証していく。本格的な展開は、2027年を予定しており、その際には一度機体を飛ばしたら1年間は成層圏で飛び続けるような形となる。
これまでソフトバンクが開発を続けてきたHTA型HAPSについても、引き続き開発を行なう。今回LTAを採用した理由は、「LTAの技術成熟が想定より早く、日本上空で3年ほど前倒しできると考えた」(ソフトバンク プロダクト技術本部 ユビキタスネットワーク企画統括部 上村 征幸統括部長)と説明。LTA型は上空到達が早く、ペイロード(搭載重量)が大きい点が強みだが、飛行機のようなHTA型は速度が早いという特徴がある。ソフトバンクは、26年以降の飛行で、日本上空での耐空性能を見ながら両者の使い分けを考えていくとしている。








