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スキマバイトの「タイミー」、正社員登用を促す新サービス

スキマバイトサービスを展開するタイミーは、タイミーで働くアルバイトの正社員登用を支援する新規事業「タイミーキャリアプラス」を2月22日から開始する。

タイミーは、働きたい人と働き手を募集する企業をマッチングする「スキマバイト」サービスのトップ企業。2月22日時点で700万人が登録しており、「日本の労働人口6,500万人の1/10が使っている(タイミー代表取締役 小川 嶺氏)」という。

これまでは、働き手と募集企業をつなぐサービスを展開してきたが、タイミーキャリアプラスでは、働き手の資格や免許取得、スキル習得を支援するほか、その後のキャリア支援として「正社員登用」までを支援する。

タイミーキャリアプラスの対象は、タイミーの働き手と採用企業。働き手は、「キャリア相談」や「資格や免許取得、スキル習得のためのリスキリング講座」を受けられるほか、タイミーの実績をもとに取得できる「バッジ」を活かして正社員採用の求人が紹介される。

その後、タイミーを通じて、入社前に約1週間の「体験勤務」をして理解を深めた上で、正社員としての長期就業を目指す。面接等のプロセスだけでなく、事前に職場を体験していることから、企業側も働き手の“ミスマッチ”を防げ、働き手もすぐに力を発揮しやすい環境で働けるとする。

通常のタイミーでは、働き手の報酬金額の30%にあたる額を、サービス利用料として都度徴収しているが、タイミーキャリアプラスは別の成果報酬型を採用。入社1名あたり理論年収の30%(税抜)をタイミーが徴収する。

タイミーキャリアプラスは、ホテルチェーンのヒルトンや物流事業者の日本通運で先行導入。日本通運では社員登用の第1号も出ているとのことで、今後タイミー導入企業への採用を呼びかけていく。

会社員も多いタイミー サービスも働き手も「次のフェーズ」に

タイミーは2018年にサービスを開始し、スキマバイトサービスの先駆けとして市場を拡大してきた。タイミー代表取締役社長の小川 嶺氏は、最初の企業がうまくいかず、つなぎでアルバイトをしていたときに「働き手目線のサービスが無い」と気づき、タイミーを創業。履歴書や面接が不要で、求人サイトでも派遣でもない「働き手と働いて欲しい事業者のマッチングサービス」として展開してきた。

タイミー代表取締役 小川 嶺氏

スキマバイトサービスは急拡大しており、タイミーの利用者は2021年の3倍の700万人まで拡大。これは日本の労働人口(6,500万人)の1/10を超えているとする。年齢層も学生を中心に10代から30代が多いが、近年では会社員の副業や定年退職後に“社会の接点”としてタイミーで働き続ける人も増えているという。また会社員の割合は29.7%と多く、学生(31.8%)に迫っている。

求人数も前年比で2.2倍と、市場全体が拡大。業種も、物流、飲食、小売など幅広い業界に広がっているという。

タイミーの開始当初は、飲食店が中心で8割近くを占めていた。しかし、コロナ禍により、飲食での求人が急減し、タイミーも厳しい環境となったが、物流など他業界への進出で、結果的にコロナを乗り越えられたとする。そのため、現在では、物流、飲食、販売など、業種ごとに営業チームを組成し、顧客企業の要望に対して導入例を示しながら各企業のオペレーションの中でタイミーを使えるようサポートする体制を整備した。小川氏は、この点もタイミーの強みと語る。

この1年で特に大きく成長したのがホテル産業。コロナ禍で採用抑制や退職などが進んだ業界だが、インバウンド需要の復活などで、急速に利用拡大。一方、人材不足により、部屋は空いているものの稼働率が上げられないという課題も大きくなっていたという。こうした業界でもタイミーを活用することで、ホテルの稼働率を上げられ、「攻めの利用」ができているという。

また、タイミーでは「履歴書も面接もいらない」が特徴で、時間のマッチングがサービスの軸になっていたが、利用が増えるにつれ、継続的に働きたい・働いて欲しいという声も増えてきた。そのため、一定の業務実績がある人には、「洗い場」「ホール」などのスキルを示す「バッジ」を付与。企業側もバッジを実績として判断し、依頼しやすくしている。企業から見ると、バッジ認定回数や働いた店舗数などから、その人のスキルを判断しやすくなっており、単純なマッチングサービスから「フェーズ2に移ってきている(小川氏)」とする。

そのため、働き手の正社員登用などを支援する「タイミーキャリアプラス」の導入を決定。働き手のスキルをより活かせるサービスとして、タイミーを強化していく。

タイミーキャリアプラスに参加するヒルトンでは、コロナ禍をきっかけとし、タイミーを数年前から導入。キッチンやレストランの裏方やスポーツジム、社内業務などのほか、エグゼクティブラウンジで働いている人もいる。ホテル業界では、コロナ禍で20~30代の若手~中間層が離職し、年齢構成のギャップが残ってしまっており、新たな採用手段としてタイミーキャリアプラスに期待しているという。また、インターン的な1週間のお試しがあるためミスマッチを防げるとする。

日本通運では、通常の求人では物流業界は人気薄だが、タイミーだと集められ、マッチング率が高く、リピーターも多いという。当初は引っ越しシーズン限定でタイミーを導入したが、現在は倉庫やオフィス業務など様々な仕事でタイミーを活用しており、また複数拠点での同時募集も行ないやすい点もタイミーの魅力という。職場を知ってもらえれば、定着しやすいことから、タイミーキャリアプラスに期待しており、実際に1名採用済み。

ヒルトン 日本・韓国・ミクロネシア地区担当、リージョナル人事業務統括本部 統括本部⻑ 麻生周治氏(左)、日本通運 京都支支店長 岡本 俊一氏(中央)、タイミー小川氏(右)
日本通運はタイミーキャリアプラスで採用済み

なお、タイミーキャリアプラスの事業目標などは現時点では公表しておらず、「今はタイミーのリソースとの連携がちゃんと出せるかを検証している段階」(タイミー小川氏)と説明。また、メルカリのスキマバイト参入も予定されており、リクルートやパーソル、LINEなどの競合も多い市場となっている。

小川氏は質問に応え、「働くことに大きなパラダイムシフトが起きている。かつては求人媒体があり、履歴書出して、面接するという『企業目線』。今の労働力不足の環境は、企業目線ではなく、働き手目線のマーケットへのシフトが起きている。そこでナンバーワンで居続ける。すでに多くのユーザーがいて、バッジなどの施策はこれまでの蓄積がなければできない。これは、オンラインで完結するフリマとは違う部分で、我々はリアルの信用があり、そこで圧倒的なポジションを築く。一緒に切磋琢磨していきたい」と語った。