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NTT Com、タクシーにAIドラレコ搭載で街の映像をビッグデータ化

工事検知のイメージ

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、タクシーなど街中を走行するモビリティから映像データを効率的に収集し、データを活用する映像分散管理プラットフォームサービス「モビスキャ」を、2024年度上半期に提供を開始する。モビスキャを活用したソリューション「AI道路工事検知ソリューション(仮称)」も同時に提供開始予定。

タクシー会社やバス会社などと提携し、AI機能とSIMを搭載したドライブレコーダーをエッジ端末として提供。タクシーなどのモビリティに取り付け、営業走行中の映像から、必要な情報のみを抽出して提供するサービス。

モビリティに搭載したドライブレコーダーに録画される映像データは、そのままでは1台で1日の撮影で5GBもの容量に達してしまい、データをそのままクラウドにアップロードして保存することは難しい。そこで、AIを搭載したドライブレコーダー側で必要なデータのみを判断し、容量を最小化してアップロードを行なうことでデータ容量を削減する。また、不要と判断されたデータもドライブレコーダーに搭載したSDカードに一定期間保存することが可能で、必要に応じてデータを利用できる。

たとえば、複数のモビリティが同じ場所の映像を通った場合でも、その中から最適な条件のものを選び出してアップロードを行なう。最適なデータは、映像を取得した時間帯やほかのデータ収集地点との距離、気象庁の天候データとの連携などにより選ばれる。収集した映像は人物や車両のナンバーなどにマスク処理を行ない、個人情報の保護にも配慮している。

n対nでの映像共有が可能で、地域内を走るモビリティパートナーが増えれば増えるほど、より網羅的で高品質な映像データを提供することが可能にななる。より多くのデータ活用パートナーとの協業も加速し、より安価に情報を提供できるビジネスモデルを目指す。

また、ドライブレコーダーを搭載するモビリティとしては、タクシーだけでなく、将来的にはドローンなどにも搭載し、スポット的な映像を取得するニーズにも応える予定。

道路工事現場をパトロール

モビスキャの提供開始に合わせてサービスを開始するのが「AI道路工事検知ソリューション」。岡山県と愛知県で6月まで実証実験を行なう予定。

ガスや電気、通信などのインフラ事業者は、埋設した設備が破損することのないよう、設備が埋設されている道路上で、事前に把握していない工事が行なわれていないか、日々社用車でパトロールを行なっている。

そうした事業者らは、週に最大6回のパトロールを行ない、パトロールには専用車両が必要なためコスト負担も高く、人員の確保も課題とされている。

「AI道路工事検知ソリューション」では、モビスキャを活用し、モビリティパートナーの車両に搭載されたドライブレコーダーからの映像を提供することで、実際の街中を目視確認するのと同等の映像を提供する。

収集した映像は、2段階のAI判定が行なわれる。ドライブレコーダー側のAIは、事前に指定した工事用コーンなどの物体が検知された場合のみ、検知時点から前後5秒、合計10秒の映像をサーバーへアップロードする。サーバー側のAIは、アップロードされた映像を分析してスコアをつけ、一定以上のスコアに到達した映像のみをユーザーに提供する仕組みで、特許取得済の技術。サーバー側AIの画像解析に活用されている画像認識技術は、ドコモが開発した。

工事用コーンなど設定した物体を検知すると映像をアップロードする
管理画面のサンプル
1月12日の早朝に取得されたデータ。赤いラインの中にある黒い点が工事中の場所として確認されたところ

実証実験でモビリティを提供するのは、岡山エリアでは岡山電気軌道、岡山交通、愛知県エリアでは、名鉄タクシーホールディングス、佐川急便。データを活用するパートナー企業は、岡山エリアでは岡山ガス、愛知エリアでは東邦ガスネットワーク。技術パートナーとして、JVCケンウッド、両備システムズが参加する。

今後は、随時パートナー企業を拡大しながら、新しいユースケースを検討。電機業界向けとして電柱の破損検知ソリューションや、自治体向けの道路のひび割れ検知ソリューションなど、さまざまなニーズに応じた展開を予定。混雑状況の把握や災害対策、開花状況の観測など、幅広い用途での活用も検討し、2027年にサービス収益約30億円を目指す。