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ジャパネット 長崎“平和”スタジアム、ユニフォームがチケット代わりに

ジャパネットホールディングスとソフトバンクは、ジャパネットグループがスタジアムを中心とした複合施設の開発に取り組む「長崎スタジアムシティプロジェクト」において、ICT領域で連携する。長崎スタジアムシティは2024年開業予定。スタジアムの名称は、「PEACE STADIUM connected by SoftBank」に決定した。

長崎スタジアムシティプロジェクトで開発されるのは、サッカー専用スタジアム、アリーナ施設、ホテル、オフィスビル、ショッピングモールなどで構成される複合施設。サッカー専用スタジアムはプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の新たなホームスタジアム、アリーナ施設はプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームアリーナとなる。

規模は、スタジアムが約20,000席、アリーナが約6,000席、オフィスが約13,900m2、ショッピングモールが約90店舗、ホテルが約243室、駐車場が約1,100台。

場所は長崎駅、浦上駅から徒歩約10分圏内。長崎では出島メッセ長崎、西九州新幹線が開業し、'23年には新長崎駅が完成するなど開発が進んでいる。

ソフトバンクは'24年から'28年までのスタジアムのネーミングライツを取得しており、スタジアムの名称は「PEACE STADIUM Connected by SoftBank(ピース スタジアム コネクテッド バイ ソフトバンク)」に決定した。

名称に関してジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 高田旭人氏は「名前にジャパネットを入れたくなかった」とし、「ソフトバンクさんと一緒に作ったということを誰が見てもわかる形にしたかった」とコメント。またソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏は「PayPayやLINE、Yahoo!といったサービス名も考えたものの、“平和”という言葉を使えたら、と考えた」と、この決定について説明した。

また高田氏は「平和に対して一人ひとりが考えるのは難しいかもしれないが、皆が集うスタジアムの名称として入ることで、何度もこの言葉を使ってもらえる。それによって少しでも平和に近づけば」との期待を述べた。

名称について説明する高田氏(左)と宮川氏(右)

両社は長崎スタジアムシティにおいて、ソフトバンクの通信ネットワークやスマートシティをはじめとした各分野における技術およびノウハウなどを活用。人やモノ、情報などあらゆるものを「connect」することで、これまでにない顧客体験、データを活用した効率的な施設運営、施設内・周辺地域での消費行動の活性化などの価値を創出する次世代スタジアムシティ構築を目指す。

具体的には、ソフトバンクが同社のグループ会社などと連携して、スタジアムシティ内のソフトバンクの5Gネットワーク、WAN、LANおよびWi-Fi環境を整備。スタジアムシティ内の「connect」の土台となる通信ネットワークを構築する。

この通信ネットワークが、ジャパネットが計画している、長崎スタジアムシティ専用スマホアプリを活用した様々なサービスの仕組みを支える。

専用アプリで応援・チケット簡単譲渡・飲食オーダー&ピックアップ

専用アプリは「最高の観戦体験」を実現するためのもので、参加型の応援体験やスタジアムシティ内のグルメ・フード類のオーダー&ピックアップ、駐車場やコインロッカーの空き状況の案内などを提供する。

応援体験については、応援メッセージ入力、MVP投票、チケット購入、シーズンチケットを買った人が来場できないケースに向けたシーズンチケット簡単譲渡といった機能を計画している。応援メッセージについては、アプリから投稿すると、会場内のビジョンに表示される。

応援メッセージをアプリから投稿
会場内のビジョンに表示される

オーダー&ピックアップについては、モバイルオーダーで食べたい時に食べたいものをオーダーし、任意のタイミングでロッカーで受け取れる仕組みを導入する。これにより、15分しかないハーフタイムの間に、店の列に並ぶことなく出来上がったものを受け取れるようにする。観戦体験向上のほか、飲食店にとっての負担軽減も見込む。

ユニフォームがチケットの代わりになる仕組みも計画。シーズンチケットを購入して毎試合観戦に来ている人に、入場のチップを入れたユニフォームを提供。ユニフォームを着用して入場ゲートに近づくとゲートが開き、入退場できるようにする。

高田氏はこの取り組みにより、サッカーやバスケットボールのユニフォームを着た人があふれかえるようなチームになることを期待しているという。なお、一般のチケットはQRコードによる入場となる。

チップを入れたユニフォームを着て入場口の前に立つとゲートが開く

そのほか、年間シート購入者には高速Wi-Fiを提供する。

アプリから繋がる、快適・便利な日常を実現するためのサービスも提供。ホテルのルームキー、決済、駐車場予約、マップ、混雑状況の確認といった機能を搭載する。

そのほか、スタジアム内だけではなく長崎スタジアムシティ全体を、完全キャッシュレスシティにすることを計画している。このように、あらゆることがスマートフォン内で解決する世界を目指すが、一方で「スマートフォン使えない人はどうなるのか」という声があることも認識しており、貸出機の用意や丁寧な説明など、多くの人が使えるようになるための取り組みも実施する。

現在の長崎のスタジアムやバスケットボールの試合については、すでに完全キャッシュレスで現金を使えない環境にしているという。

長崎スタジアムシティ内のホテルでは、ユニークな仕掛けを設置。ホテルに泊まるということは、テレビなどの家電、お風呂、トイレ、机、イスなど様々なものを使用する。このうち、気に入ったものを購入できるよう、販売サイトへ遷移するQRコードを室内に設置する。これにより、最短で適正な価格で買えるとしている。

混雑を避けて快適に過ごせる滞在型のスタジアムシティ

スタジアムシティ内では設置したセンサーなどにより人流データを収集。ソフトバンクのスマートシティプラットフォームで分析して、混雑状況などの情報をサイネージや専用アプリで表示することで、来訪者が混雑を避けて快適に過ごせる滞在型のスタジアムシティの実現を目指す。

また、各施設の混雑状況に応じて、サイネージや専用スマホアプリに販促情報を配信するなど、情報提供を通じて自然な形で、ゲーム終了後などの混雑緩和が実現できる仕組みを検討する。

人流データは施設運営効率化にも活用。人流データを基にしたスタジアムシティ内の誘導・警備・清掃スタッフの最適な配置や、トイレやごみ箱に設置したIoTセンサーでトイレごとの利用回数やごみの量の可視化と最適な清掃頻度などの検討に繋げ、効率的な施設運営を目指す。

そのほか、長崎で課題になっている渋滞緩和に向け、駐車場のダイナミックプライシング導入を検討している。

美味しいビール提供で電車での来場へ誘導

長崎スタジアムシティの年間想定利用者数は約850万人。建設時の経済波及効果は約1,436億円で約2,000人の雇用を創出、開業後の効果は約963億円で約13,000人の雇用を創出するとしている。なお開業後の雇用人数はスタジアムで働く人だけではなく、人流増加によるレストランや交通機関の充実なども見込んで算出した数値。

プロジェクトの狙いは、スポーツ等を通じた地域創生。長崎の歴史、文化、食、被爆地としての平和のメッセージを日本全国、世界に出していくことに力を入れる。一方で長崎市では毎年転出する人が増え、人口が減っているという現状も紹介した。

長崎スタジアムシティは、ジャパネットグループの自前での運営を原則としており、ホテル、レストラン、イベント、スクール事業など、完成に向けてすでに各事業に取り組んでいる。

また、年間稼働の工夫、長時間滞在、渋滞緩和、日常の賑わいに向けたアイデアを形にするための取り組みを進めている。

スタジアムのゲートは試合の時だけ設営する可動式とし、試合がない日は公園のように利用できるようにすることを検討している。またVIPルームは、試合がない日はスタジアムが臨めるホテルとして活用するなどのアイデアを紹介した。

長時間滞在に向けては、試合前後を楽しめる空間の整備や、テレビショッピングのノウハウも活かした試合前後の特集番組などを検討。これらは、2時間滞在するのに1万円はなかなか使えないが、6~7時間いるのであれば1万円を使ってもいいという客観的なデータに基づいているという。また試合後も滞在してもらえる取り組みは、帰りの渋滞緩和にも効果があるものと見込む。

駐車場での渋滞緩和に向けた取り組みとしては、出庫時間に応じた駐車料金の変更を検討する。例えば試合直後に出ると3,000円、3時間後だと1,000円となる仕組みだという。

また、自社でビール醸造ができるよう山梨県の山中湖に醸造所拠点を設立しており、美味しいビールを提供することにより、車ではなく電車で来場する人が増えることを期待する。

日常の賑わい創出については、商業施設における時間帯で異なるターゲットや、オフィス棟への長崎大学大学院の誘致がある。大学院については、オフィス棟に入ることが決まっている。

長崎大学に関してはソフトバンクも呼応しており、「地域創生のためのデジタル人材の地産地消」という考えをもって取り組むという。

そのほか高田氏は、温泉を掘って作るという考えも示した。

なお発表会は、東急不動産とソフトバンクが都市型スマートシティのモデルケースの構築に取り組んでいる東京ポートシティ竹芝で実施された。