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地域相乗り定額タクシー「mobi」地方に拡大 イオン送迎も

KDDIとWILLERによる合弁会社Community Mobilityは、特定エリアで相乗りタクシーのような交通サービスを提供する「mobi」において、展開エリアに16地域を追加し、合計22エリアでサービスを提供する予定と発表した。今夏以降、順次開始する見込み。

「mobi」は半径2kmなどエリアを限定した上で、相乗りタクシーのような移動サービスを定額で提供しているサービス。料金は月額5,000円で、同居家族は1人あたり500円で追加可能。初回のサービス利用開始から2週間は無料。

WILLERの交通サービスにKDDIのデータやAIなどの分析をかけ合わせる形で始まったが、両社による合弁会社としてCommunity Mobilityが1月に設立されており、4月1日からは同社が事業を開始、サービスを提供している。

月額5000円で半径2km以内乗り放題。auとWILLERの新モビリティ「mobi」

昨年12月のサービス開始時点で3エリア、4月1日時点で3エリアを追加しており、主に東京、大阪、京都、名古屋など都市部で提供していたが、今回発表の16エリア(検討中も含む)には人口が多くない地方都市も含まれているのが特徴。

新規エリアは、東京都港区のほか、北海道室蘭市、根室市、秋田県大館市、新潟県佐渡市、三重県明和町、大阪府富田林市、奈良県(一部地域)、香川県三豊市、香川県琴平町など。

サービスの概要
6エリアで展開中
全国で展開、地域の課題解決も目指す

イオンや吉本とコラボ

全国でのエリアの拡充に加えて、イオンタウン、イーオン(英会話教室)、吉本興業など、ほかの企業とのコラボレーションも打ち出している。例えばイオンは、イオンタウン千種などショッピングセンターと連携し、地域住民が通うための交通手段としてmobiを提供することで利便性の向上や街の活性化を図るという取り組み。イオンタウンと連携した特典を提供するといった取り組みも検討されている。

イーオンは、英会話教室の生徒の送迎として提供できるというもので、特に子供を通わせているケースでは、保護者の負担を軽減し便利に利用できるとしている。吉本興業は全国47都道府県を対象に、実際に住む「住みます芸人」を展開しており、ユーザーが楽しめるようなプロジェクトを企画中。

これらコラボレーションの詳細は改めて発表される予定。医療からエンタメまで幅広く検討していく方針で、「ワクワクするような体験・移動サービスを作っていきたい」(Community Mobility代表取締役社長の村瀬茂高氏)としている。

タクシーよりバスに近い存在

同社は大きな目標、チャレンジとして、「生活のリ・デザイン」を掲げている。これは、生活ぶりや生活様式が大きく変わるような変化をもたらすことを指しており、これまでにない形の交通サービスを提供することで、便利になった、従来より出かけるようになった、という変化を目指すというもの。実際にユーザーからは「ライフスタイルが変わった」「外に出る回数が増えた」といった前向きな回答の比率が高いという。

Community Mobility代表取締役社長の村瀬茂高氏

タクシーが競合と思われるmobiのサービスも、詳細をみていくと、実際には公共交通としてのバスに近い存在だとしている。呼び出しはタクシーのようにアプリで可能だが、相乗りのため目的地までにかかる時間はやや見通せない部分があり速達性はタクシーに劣る。予め降車スポットを指定する使い方などは、バスに近いという。

実際のユーザーにおいては、行きはmobiを使い、帰りはタクシーといった使い分けもされているという。またコロナ禍でタクシーの利用が減少している中でサービスを開始したものの、利用が伸びており、従来はタクシーを利用していなかった、新規の顧客層を開拓できているとの見方も示している。

地域“フィット”で課題解決と活性化

地域への“フィット”を重要視する姿勢も特徴的で、全国で画一的なサービスを提供することはあまり考えていないという。これは、同社のようにエリアを限定した交通サービスでは、地域固有の課題や需要が存在しているため。都市には都市の、過疎化や高齢化が進む地方都市には地方都市の課題や需要があり、そうしたケースに個別に対応していく姿勢を示している。

21日に追加が発表された16エリアも、観光地では周遊などに、地方都市では免許返納後の高齢者の移動手段として利用されることを想定するなど、都市部の“定額タクシー”といった感覚とは全く異なるコンセプトが明らかになっている。このような地域の課題への対応、“フィット”という観点で、全国で画一的なサービスにはしない方針。

また利用者数や事業の売上も、当面は数字を重視して判断するのではなく、地域の課題解決や、交通の増加による街の活性化に取り組んでいくとしている。特に地方では地方自治体との協業という形も想定され、表面的な事業成績だけでは判断しない方針を示している。

なお、すぐにサービスの是非を判断するものではないと断った上で、一部の数値は公表されている。それによれば、4月にサービスを開始した大阪市北区・福島区は、19日時点で合計の会員数は約1,300人、総ライド数が約2,500回。サブスク会員数は約700名となっている。またmobi全体の会員数は約12,000人で、総ライド数は約4万回としている。

村瀬氏は、展開するエリアそれぞれの課題を解決する姿勢を強調する一方、「生活のリ・デザイン」といった挑戦は、単独の企業では無理であり、自治体やほかの事業者と連携して進めていく方針を語っていた。

発表会には吉本芸人も駆けつけた。左からエルフ、ミキ、空気階段。間寛平がmobiを体験する動画も公開
左からCommunity Mobility 代表取締役副社長の松浦年晃氏、同 代表取締役社長の村瀬茂高氏