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ドコモとエアバス、高高度無人機で成層圏からの通信サービス実証

NTTドコモとエアバスは、高度約20kmの成層圏を飛ぶ高高度無人機(HAPS)「ゼファー(Zephyr) S」から、地上のスマートフォンなどへ通信サービスを提供するサービスの実現可能性を探る実験を行ない、成功した。

成層圏から地上の受信アンテナへのUHF帯(450MHzおよび2GHz帯)の電波伝搬測定実験を8月25日から9月13日まで米国のアリゾナ州ユマで実施。期間中、成層圏での滞空日数は18日間だった。HAPSから送信した電波の伝搬状況を測定・分析することで、成層圏から地上にあるスマートフォンなどのデバイスへの通信サービスの実現可能性を実証した。

基地局設備などを搭載して成層圏を飛行するHAPSによりネットワークを構築する非地上ネットワーク(Non Terrestrial Network、NTN)技術を使い、通信網を形成しずらい山間部や空、海などへ通信サービスの提供エリアを拡大する取り組み。非地上ネットワークは、災害対策やイベント会場など、人が密集する場所での通信容量確保、建設現場での重機の遠隔操作などにも有効とされている。

ドコモとエアバスは、エアバスのHAPS「ゼファー S」を飛行させ、スマートフォン向けの通信に利用されている2GHz帯の周波数により、成層圏と地上間での電波の伝搬特性を測定した。HAPSに搭載された無線機と地上のアンテナとの直接接続を行ない、通信距離や気象条件などさまざまな条件下で、電波の減衰特性を分析。実際のスループットなどを測定した。

さらに、低速ながら長距離の通信が可能な低い周波数(450MHz)を使用した、約140kmに及ぶ長距離接続の伝搬測定にも成功。その結果、UHF帯電波を用いるHAPSとスマートフォンの直接通信が最大約140kmの距離にわたり、十分な通信品質を実現可能であることを確認した。

今回の試験でHAPSは、国際航空連盟(FAI)公式の世界記録となる、最高到達高度76,100ft(約23.195km)を達成。18日に及ぶフライト実績も合わせ、成層圏の極低温環境下でも持続的なネットワーク提供が可能であることを実証した。

これらの結果をもとに、ドコモとエアバスは今後通信エリア化が難しい山間部や離島、海上などへの通信サービスの提供をめざす。