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人とほぼ同じ速度で収穫できる「果実収穫ロボット」。デンソーなど

農研機構、立命館大学、デンソーは共同で、リンゴやニホンナシなどを対象とした果実収穫ロボットのプロトタイプを開発した。人とほぼ同じ速度での収穫が可能。

自動走行車両にけん引されながら、2本のアームにより果実を収穫。ニホンナシについてはディープラーニングによって「熟度」を認識し、成熟期に達した果実のみを判定して収穫できる。収穫した果実は自動走行車両の荷台に設置した果実収納コンテナシステムに送られる。果実収納コンテナシステムは、コンテナが果実で一杯になると、空のコンテナと自動で交換しながら自動収穫を継続する。これにより人による収穫(11秒/個)とほぼ同じ速度で収穫ができる。

少子高齢化による果樹生産の担い手減少に対応するために開発されたロボット。果樹は樹形が立体的で複雑なため、受粉、摘果、収穫、整枝・せん定など多くの作業を手作業で行なう必要があり機械化は遅れていた。今回はロボット開発だけでなく、ロボット作業に適した樹形の果樹も開発している。

開発にあたっては、立命館大学が果実認識、収穫時期判定などのソフト開発を担当、デンソーが収穫ロボットのハードウェア開発を行なった。

果実収穫ロボットにはまず、果実を傷つけずに収穫する機構が必要になる。しかし、収穫方法は果実によって異なり、リンゴ、ナシ、セイヨウナシなどは手で収穫できるが、カンキツ、カキ、ブドウなどは収穫にハサミが必要になる。このため今回のロボットでは、手で容易にもぎ取れるリンゴ、ナシ、セイヨウナシの3種を軸に開発した。

果実を把持するためのハンドは3つの爪で構成。果実を傷つけない程度の把持力でつかみながら、ハンドの回転によって収穫する。

デモの様子

収穫ハンドで果実を収穫するためには、「果実の認識」「果実が収穫可能かどうかの判断(熟度判定)」「果実の着果位置の把握」が必要になる。果実の認識と熟度判定については、可視画像撮影と距離計測が可能な「RGB-Dカメラ」によるディープラーニングによって行なった。これにより果実認識と、ニホンナシの熟度判定は、日中、夜間関わらず90%以上の精度が得られた。果実の着果位置の把握はRGB-Dカメラにより距離計測を行なっている。

収穫スピードを人と同等の「11秒/個」以上とするため、収穫アームを2本装備。2つのアームのマニピュレータ・ハンドシステムが互いの軌道を理解し、アーム同士が接触しないアルゴリズムを構築した。

収穫ロボットは自動走行車両に牽引されるが、収穫した場所から次の場所に移動する場合は、収穫ロボットに取り付けたカメラ画像・距離画像から次に収穫する枝の果実を認識。車両の移動量を収穫ロボットが車両に指示することで車両が適切な位置に移動するシステムを開発した。

また、機械化しやすいよう、果樹も改良。樹形を可能な限り平面に近づける「V字樹形」などの列状密植樹形を開発することで、機械による作業をしやすくしている。機械による自動化には、こうした果樹側の改良も重要で、V字樹形により機械の作業が容易になるだけでなく人が作業する場合でも省力化が可能になるという。

V字樹形をイメージしたデモ

今回開発した収穫ロボットはプロトタイプ。今後は市販化に向け、現地実証実験を続けることで安定性や正確性を向上させながら、ロボットを安全に利用できる仕組み作りも行なう。