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「iDeCo」「NISA」って何? 将来のために始めたいコツコツ投資

老後のお金について、国会でのいろいろなお話、そして20代〜40代の「そもそも自分たちの頃には年金なんかちゃんともらえないんでしょ……」というムードとあわせて、不安を覚えている人も多いかと思う。

そんな世相を反映してか注目を集めているのが「iDeCo」、「NISA」、「つみたてNISA」といった資産運用の手法。でも何をやればいいのかわからないという投資初心者のために、それらの「投資」について資産運用のプロであるSBI証券でお話を伺った。

SBI証券 執行役員 投信・債券部長 兼 債券営業支援室管掌 橋本隆吾氏

60歳まで積み立てる、老後のためのiDeCo

「さあ投資を始めよう!」と思っても、iDeCo、NISA、つみたてNISAの違いすらわからないようでは重い腰も上がらない、ということで、まずは何から検討すべきかをSBI証券の執行役員であり投信・債券部長の橋本隆吾氏に伺った。すると、その答えは「まずiDeCoから」。

「iDeCoは個人型確定拠出年金のことで、私的年金の制度です。年金なので60歳まで積み立てた資金を引き出せず、長期安定的に運用することで将来に備えることを目的としています。月5,000円から積み立てられるので若いうちから無理なく始めやすいといえるでしょう」

なお実際に、iDeCoを利用している年代は、SBI証券の利用者では、徐々に老後を考え始める40代がiDeCoのボリュームゾーンだが、続いて30代も多く、早めに老後の資産形成を意識していることがわかる。

投資というとリスクのことばかり考えてしまいがちだが「年金」と聞くとなんとなく安心。だが、当然リスクがあることも忘れてはならない。

「iDeCoには元本確保型の定期預金や保険もあるのでリスクのない商品選びも可能です。とはいえ、低金利の時代なので元本変動型の投資信託を選びたいところです。投資信託にもインデックス型、アクティブ型など運用スタイルや投資対象の異なるものがあるので、そのバランスを考えながら積み立てていくのがポイントです」

インデックス型とはTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価指数に連動する投資成果を目指す投資信託のこと。市場平均と同じような値動きをするように設計されており、投資銘柄を選定するプロセスがないことから一般的に手数料が安い。

一方、アクティブ型はそれぞれの商品ごとにファンドマネージャーが銘柄を分析して投資先を選択し、市場平均より上回る運用を目標としている。そのためインデックス型よりも手数料が高くなる傾向がある。

わかりやすさと運用コストが低いインデックス型か、アクティブ型で積極的な運用を目指すか、それらの配分も含めて個人が選択できるところが公的年金との大きな違いだ。

iDeCoは積み立て時の節税メリットも大きい

「また、iDeCoは節税メリットが大きいのも特徴です。NISA、つみたてNISA、iDeCoは運用益が非課税(NISAは5年、つみたてNISAは20年)なので、いずれも節税メリットがあるのですが、iDeCoはそれに加え掛金の全額が所得控除の対象となります。掛金には上限がありますが、国民年金のみの自営業者の方は、特に上限枠が大きいので上手に利用することをおすすめします」

iDeCoの場合、公務員および企業年金のある会社員は144,000円、企業年金のない会社員は276,000円、自営業者は816,000円が年額掛金の上限となり、全額所得控除される。具体的には、所得税と住民税で節税できる。

といわれてもピンとこない会社員の皆さんには「年末調整で戻ってくるお金」といえばわかりやすいだろうか。年末に払いすぎた税金が戻ってくるが、iDeCoに積み立てることで、さらに払った税金が戻ってくるのだ。

会社員年収500万円の節税例。年額55,780円が10年続けば557,800円、20年なら1,115,600円の節税(SBI証券HPより)

老後資金を積み立て、運用益を期待すると同時に60歳まで節税し続けることを可能とするiDeCo。「若いうちから始めるべき」という橋本氏の助言にも納得がいく。

ライフステージを考えてiDeCoと併用したい、つみたてNISA

iDeCoが60歳まで積み立てる「年金」の一種であるとすれば、同じ積立投資のつみたてNISAは、どのような違いがあるのだろうか。

「つみたてNISAもiDeCoと同じく長期間運用するための制度ですが、年金ではないのでいつでも引き出すことが可能です。つまり、マイホームを購入したり、子どもの学費に充てたり、ライフステージに合わせて積み立てた資金(運用益含む)を活用できます」

つみたてNISAのiDeCoとの大きな違いは、60歳まで待つ必要がなく、いつでも引き出せることだ。友人の結婚式や万が一のけが・病気など、日々の暮らしで急にお金が必要になったときや、家やクルマを購入したり学費を用立てたりなどのライフステージに即応して資金を管理できるのがつみたてNISAの特徴だ。

SBI証券の利用者で見てみると、家庭を持ち始める30代のつみたてNISA口座保有者が多く、マイホームや教育資金など40代以降を見据えて運用していることが予想できる。続いて老後に備える40代が多く、さらに積立投資(長期間運用)のメリットを最大限に活かせる20代も増えている。

つみたてNISAの年間非課税投資枠は上限40万円(毎月33,333円)で、非課税期間は20年間。つまり毎年40万円ずつ、20年にわたる長期運用が可能だ(40万円×20年=計800万円運用可能)。しかも100円など少額から投資できるので、慣れてきてから積立金額を増やしていくこともでき、手軽に始められるといえる。事実、SBI証券のつみたてNISA口座保有者の70%以上が投資未経験者だ。

SBI証券におけるつみたてNISA口座保有者の投資経験。投資未経験者(初心者)のつみたてNISA口座開設が目立つ

「投資する商品は金融庁が厳選した長期運用向けのものだけ、というのもつみたてNISAの特徴です。いわば金融庁のお墨付き投資信託ばかりなので初心者でも安心だと思います。なかでも全世界株式のインデックスファンド各種(『SBI・全世界株式インデックス・ファンド』など)やアクティブ型の『ひふみプラス』がSBI証券では人気が高く、長期・分散・積立に適した商品だと思われます」

橋本氏曰く、投資の基本は「分散投資」とのこと。インデックス型、アクティブ型、また株式や債券などのバランスを考えて商品を選ぶことが重要だ。その中でも全世界株式を対象としたインデックスファンドを基本(コア商品)に、コツコツ積み立てていくことが長期安定的に資産を増やしていくポイントと説く。商品そのものが世界中の株式を対象としているので、自分自身でバランスを考えて複数の投資信託を購入しなくても分散投資していることになるのだ。

iDeCoにもつみたてNISAにも共通する「積立投資」のメリット

iDeCoとつみたてNISAに共通するのは、長期間にわたり「積立投資」をする、という点だ。つみたてNISAはいつでも引き出せるが、非課税期間が20年と、やはり長期間運用することを前提とした優遇制度である。

もちろん日本を含め、世界の経済はそのときどきの「浮き沈み」がある。株式などの相場は常に上昇と下落を繰り返すものだ。つまり下がったときに購入し、上がったときに売れば収益を得られるが、その逆もしかり。損をする可能性もある。そのリスクを最小限に抑え、長期安定的に運用益を確保するのが「積立投資」となる。

「価格が下がると損をしたと思いがちですが、積立投資は一括購入する投資ではないので、下がったときは下がったときで『たくさん購入』できます。毎月の購入額は同じなので、高値の場合は購入口数が減り、安値のときは口数を多く購入できるということですね。結果として購入価格が平準化されるので、価格の急騰や急落の影響を和らげてくれます」

しかも、より長期間にわたり積立投資するほど損益は安定する傾向にあるという。一喜一憂せずにコツコツ積み立てていくことが利益につながる可能性が高いということだ。

「20代、30代は先ほどもおすすめした全世界株式のインデックスファンドなどで時間をかけて運用し、50代に入ったら上昇局面で利益確定して債権比率の高いバランス型などに投資資金をシフトするといいでしょう」

確かに株価チャートなどを見ると、その値動きが気になるところだが、恐れをなしているのは短期的な投資をしている人たちだ。長期の積立投資は値動きをあまり気にしなくてもいいので、初心者を含め、広く一般的に始めやすい投資手法といえるのだろう。

非課税制度を活かして資産形成

iDeCoと比較するかたちでつみたてNISAについて考えてきたが、つみたてNISAよりも前に始まった、そもそものNISA(一般NISA)とは何だろうか。つみたてNISAと何が違い、どのようなメリット、特徴があるのだろうか。

「一般NISAは、まず非課税期間が5年間と短く、年間の非課税投資枠が120万円と多いのが特徴です(120万円×5年間=計600万円運用可能)。そして、もうひとつの特徴は商品が投資信託だけでなく、つみたてNISAにはない、株式、REIT(不動産投資信託)も購入でき、積み立て購入(自動購入ではなく自身で購入)のほか一括購入も可能なこと。つまり、ある程度リスクをとっても株式への投資で利益を大きく増やしたい、積極的に運用したい人向けです」

「つみたてNISA」「iDeCo」「NISA」の比較。加入者の職業等によって拠出できる金額は変わる(SBI証券HPより)

NISAは、つみたてNISAやiDeCoと異なり、ある程度の資金を比較的短期間に増やしたい人向けの税制優遇制度だ。つまり長期的にじっくりと資産を増やすのとは対照的な運用方法。だからこそ橋本氏は「資金に余裕がある人はぜひ検討してほしい」と言う。

「NISAとつみたてNISAは制度的に併用できないので、まずはiDeCoで老後資金を増やすことを第一に考え、iDeCoを補完するかたちでつみたてNISAを始めるのもいいし、株式投資に興味があったり余剰資金が豊富であればNISAで運用するのもいいでしょう。いずれにせよせっかくの非課税制度なので使わない手はないと思います」

超低金利時代といわれて久しい現在。預金をしていてもほとんど利子がつかないならば、自分で考え運用することで少しでも資産を増やしたい。その意識の高まりを反映するように、SBI証券にはiDeCoやつみたてNISAの問い合わせが増えているという。それは男性だけでなく働く女性や主婦層も同様だ。

最近ではNISAなどの投資セミナーに参加する40%ほどが女性とのこと。日本人の全員が将来を考え、積立投資を始める時代へと変化してきたのかもしれない。

SBI証券における口座保有者の男女比。総合口座に比べ、NISA、つみたてNISA、iDeCoの女性口座保有者比率が高く、とくにつみたてNISAは38.6%と4割に迫る勢い