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時間や仕事の自由を得る「FIRE」。疑問を解決

FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、働く場所、内容、時間を自分で選ぶ自由を得るため、経済的自立(FI)を成し遂げ、早期リタイア(RE)を実現することを目的とする、人生の選択肢の1つです。FIRE実現のためには不労所得=資産運用の収入が欠かせませんが、現在の貯金や人生設計における疑問や不安も浮かぶことでしょう。ここでは、様々なケースの疑問に対する、マネーコンサルタントの頼藤太希氏によるアドバイスを紹介します。

この記事はインプレス刊・頼藤太希氏監修『いちからわかる! FIRE入門 積立投資で目指す 早期リタイア術』の一部を編集・転載しています(編集部)

自由な生き方を目指す「FIRE」基礎知識。お金と計画のつくり方

貯金ゼロからFIREを目指すことはできますか?

新卒で入社して数年の間は、給与が少なく家計管理も不慣れで、お金がなかなか貯まらないものです。でも、資産運用において若さは大きな武器。20代でFIREを目指すのは、かなり有利です。というのも、投資では複利のパワーが働き、運用期間が長いほどお金が増えるからです。

だからといって、貯蓄ゼロでいきなり投資を始めるのはNG。投資は「余剰資金」で行なうのが鉄則です。まずは、生活防衛費を貯めましょう。

生活防衛費とは、生活費の不足や冠婚葬祭、医療費など突然の出費や、収入が途絶えたときなどに備えるお金のこと。目安は会社員なら手取り月収の3カ月分、自営業なら6カ月分です。

貯蓄は給料からの「先取り」が鉄則。給料が振り込まれたら、ネット銀行の自動資産移動サービスなどを利用して貯蓄したい額を別口座に移し、残ったお金でやりくりをする「先取り貯蓄」なら確実にお金を貯められます。

生活防衛費が貯まったら、いざ投資にチャレンジ! 長期投資の複利効果を活かすためには、投資を始めるタイミングに悩むよりも、早く始めるのがおすすめです。

子育てしながら、自分たちのFIREの夢も叶えたいです

子育てでは教育費にお金がかかります。実際のデータを見ると、幼稚園から大学まですべて公立に進学した最も安いパターンでおよそ783万円。もっとも高いオール私立だと、およそ2,229万円かかります。

基本的に高校までの教育費は家計から捻出し、大学資金は別で準備する必要があります。そのため、児童手当は大学費用として全額貯めておくとよいでしょう。そして、高校で私立高校に進学する場合は教育支援制度を積極的に活用するなど、情報収集と工夫に努めましょう。

なお、大学資金として奨学金を借り、子どもに返済してもらうという考えは捨てること。そもそもFIREに向けて資産が増えていると、奨学金の審査に通らないこともあります(奨学金の種類による)。子どもの将来を第一に考え、教育費の準備とFIRE資産づくりの両立を図るようにしてください。

FIREするデメリットや注意点はありますか?

FIREというのは、あくまで経済的自立と早期リタイアを実現するための「手段」であり、FIRE自体は目的(ゴール)ではありません。そこを取り違えないことが大切です。

たとえば、FIREのために極端な節約や長時間残業を続け、友人との付き合いも避け、やっとFIREできるお金をつくり出したとします。確かに働かずに暮らせる自由は手に入れたかもしれませんが、それで人生満足と思えるでしょうか。もしかしたら、失った時間を後悔することになるかもしれません。

また、「4%ルール」で生活するため、FIREした後も贅沢はできず、節約生活が続きます。4%ルールとは、資産を年4%で運用し、かつ生活費も4%以内に収めれば資産が減らないというアメリカ発の計算方法です。

そう考えると、多少の支出をして今の人生を楽しむことも必要でしょう。そして、スキルを磨いたり、人脈を広げたりしておくことが、FIRE後の豊かな人生につながっていくのだと思います。

FIREして、老後にお金が足りなくなるのが不安です

日本の平均寿命はどんどん上昇していて、90歳まで生きるのはごく普通のことになっています。そのため、老後資金についても、長生きを前提に考える必要があります。

とくに注意しなければならないのは、FIREして会社を辞めたり働く時間を減らしたりすると、厚生年金の受取額が減ってしまうことです。それに気づかずFIRE計画を立てると、老後資金不足で慌てることになりかねません。

そうならないよう、FIRE後に年金受取額がどれぐらい減るかを確認することが大切です。そうすれば年金繰り下げやiDeCo加入などの対策を打つことができます。

妻が専業主婦であれば、夫婦の公的年金はかなり少なくなる可能性があります。年を取ると、介護や病気、家の老朽化などで思わぬ支出がかさむこともありますから、FIRE必要額も余裕をもって見積もっておくと安心でしょう。

もう50代……、FIREはもう不可能?

50代になると、だいぶ定年退職が近づいてきます。「自分はもうFIREには関係ない年齢」と思うかもしれませんが、仮に5年前倒しで定年を迎えられるだけでも、気持ち的にかなり違いませんか?

リタイアの時期ではなく、経済的自立に軸足を置くのも1つの方法です。65歳以降、お金の不安なく過ごせるだけでもメリットは大きいでしょう。また、共働き夫婦であれば、夫だけ、あるいは妻だけがFIRE(リタイア)する方法もあります。

老後は長く、65歳でリタイアしても、その後20年以上も老後生活が続くのです。65歳でリタイアできれば、十分FIRE達成ともいえますよ。

頼藤太希(よりふじ たいき)

マネーコンサルタント。株式会社Money&You代表取締役。中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、アメリカンファミリー生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に株式会社Money&Youを創業し、現職へ。『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)、『マンガと図解 はじめてのFIRE』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書・監修多数。日本証券アナリスト協会検定会員。

『いちからわかる! FIRE入門 積立投資で目指す 早期リタイア術』では、入門書としての基礎知識や、年齢や家族構成に応じたFIREへの目標額や毎月の投資額、「お金をつくる」「お金を増やす」方法などを掲載しています。

いちからわかる! FIRE入門 積立投資で目指す 早期リタイア術

・価格:1,100円
・発売日:2022年3月29日
・ページ数:112ページ
・サイズ:A4変形判
・内容
巻頭特集:誰でも手が届くFIRE超入門
PART1:年齢・年収別 FIREへの目標設定
PART2:年金を攻略して日本版FIREを達成
PART3:FIREするためのお金をつくる
PART4:FIREのお金を投資で増やす
【SPECIAL INTERVIEW】FIRE成功者に聞く