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自由な生き方を目指す「FIRE」基礎知識。お金と計画のつくり方

FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字で、経済的自立(FI)を成し遂げ、早期リタイア(RE)を実現する注目ワード。「FI=経済的自立」実現には不労所得=資産運用の収入が欠かせません。また「RE=早期リタイア」には、完全なリタイアのほかセミリタイアもあります。ここでは、「FIREって何? どうすれば実現できるの?」をざっくり理解するための基礎知識を紹介します。

FIRE自体はゴールではなく、その先にある目的を実現する「手段」です。よって、大切なのはFIREの後に何をしたいのかということ。FIREすると、どんな未来が待っているのでしょうか。

この記事はインプレス刊・頼藤太希氏監修『いちからわかる! FIRE入門 積立投資で目指す 早期リタイア術』の一部を編集・転載しています(編集部)。

FIREで広がる生き方や仕事の選択肢

今、自分がしている仕事が楽しい、お金の不安もないという人は、わざわざFIREを目指す必要はありません。仕事が充実しているのは素晴らしいことです。一方で、今の仕事は生活のために嫌々やっている、そんな人もいるでしょう。お金がないことで、仕事を辞める選択肢自体がない状態です。

もしFIREの「FI=経済的自立」を実現できれば、仕事をするか・しないかを選択する自由が生まれます。働くにしても「いつでもこの仕事を辞められる」と思えるお金があれば、気持ちがずいぶん違うのではないでしょうか。

貴重な人生の大半を労働に縛られたくない人こそFIREするべきなのです。

働く場所、内容、時間を自分で選ぶ自由が得られる

FIREを実現すると、暮らす場所にも制限がなくなります。海外で暮らしたり、都会暮らしを満喫したり、あるいは田舎に移り住んだり。欧米でFIREした人の中には、旅をしながら暮らしている人もいるようです。

「働くこと自体は好きだから続けたい」という人であれば、いったん仕事を辞めて、自分のスキルや知識を活かしながら新天地で働くという選択もできます。さらに、収入は減りますが、労働時間を減らして人生の自由時間を少し増やすことも、FIREすれば可能です。

このように、FIREの「RE=早期リタイア」の形は柔軟で、自分の価値観に合わせた目標設定ができます。

不労所得が生活費より多ければFIREできる

いくらあればFIREできるかの計算には「4%ルール」を使います。これを理解しつつ、現実的に目指しやすいFIREの種類を押さえていきましょう。

FIREを実現するには、働かなくてもお金を得られる「不労所得」が必要です。簡単にいえば、不労所得が生活費よりも多ければ、FIREは実現できるのです。不労所得を得る方法はさまざまですが、特別なスキルなしで誰でも得られるのが、株などの投資の運用益です。

FIREに必要な金額は、「年間の生活費×25倍」で計算します。たとえば、年間300万円(月平均25万円)の生活費がかかる場合、FIREするために7,500万円の投資額が必要となります。

これは、資産を年4%で運用し、かつ生活費も4%以内に収めれば資産が減らない「4%ルール」をベースとしたアメリカ発の計算方法です。

少し働いて収入を得るサイドFIREが現実的

FIREに必要な資産が7,500万円といわれても、普通の会社員ではその額を貯蓄することは難しいでしょう。節約に節約を重ね、長い年月をかけて資産を積み上げていく必要があります。

そこでおすすめしたいのが、「サイドFIRE」です。不労所得100%&完全リタイアで暮らす「フルFIRE」に対して、サイドFIREは不労所得を得ながら仕事でも収入を得るというセミリタイアスタイルのFIREです。

サイドFIREでは、不労所得と生活費の差額分を勤労収入で補います。FIRE用資産の目標額を自分で自由に設定できるため、普通の会社員でも、ぐっと手が届きやすくなるのです。

投資で資産が増えるほどFIREが現実的に!

FIREには投資でお金を増やすことが、不可欠です。損失を避けながらFIREできるよう、王道ルールを守って資産を増やしていきましょう。

FIREに必要な資産をつくるには、支出の削減と収入アップで捻出した貯蓄用資金を投資信託や株、ETFなどで運用して増やしていきます。そして、FIRE目標額を達成したら、そのお金を4%ルールで切り崩しながら生活をしていきます。

そもそもなぜ資産運用(投資)が必要なのかというと、定期預金などの安全資産は金利が低く、お金が増えないからです。下にある表で定期預金と投資の比較を見ると、その差は一目瞭然。月10万円を30年間積み立てた場合、定期預金だと約3,605万円ですが、年利4%で運用すると、約6,941万円。3,000万円以上の差が生まれます。これが資産運用の力なのです。

大損しない投資のコツは「長期」「積立」「分散」

ただし、投資には銀行の預貯金のような元本保証がありません。つまり、資産が減る可能性もゼロではないということです。そこで取り入れて欲しいのが「長期」、「積立」、「分散」という投資の王道ルールです。

「長期」とは、投資期間を長く取ること。複利の効果で資産増加のスピードが加速します。「積立」とは、1回に大金を投資するのではなく毎月コツコツ積立投資すること。高値掴みを防ぐ効果が得られます。「分散」とは、投資先を分散すること。価格の変動を抑え、安定したリターンを狙うことができます。

これらのルールを守ることで、リスクを抑えながらリターンを狙うことができます。

公的年金を踏まえた日本版FIREとは?

アメリカ生まれのFIREは、そのまま日本に置き換えるのが難しい点もあります。私たちに合った「日本版FIRE」を実行するため、日本独自の制度を知っておきましょう。

FIREの際に考慮したいのが、日本とアメリカの社会保障の違いです。アメリカには国民一律の年金制度はありません。一方、日本では「国民皆年金」制度が導入されていて、老齢基礎年金(国民年金)に関しては、加入期間等で金額は違うものの、働き方に関係なく誰でも受け取ることができます。生きている限りずっと受け取れる年金は、ある意味最強の金融商品ともいえます。

また、保険にも違いがあります。日本には「国民皆保険」制度があり、誰もが何らかの公的医療保険に加入しています。そのため、アメリカほど民間保険の必要性は高くなく、不足する保障をカバーできれば十分です。

厚生年金に加入しながらセミリタイアがベスト

会社員として厚生年金の保険料を納められる働き方をすれば、その分年金は増額できます。そのため、FIRE後もマイペースに働くサイドFIREがおすすめ。現役時代は勤労収入、老後は年金収入をFIRE資産の運用による収入にプラスしながら暮らすことができます。

一方、完全リタイアのフルFIREで、会社員や公務員ではなくなると、厚生年金の受取額が大きく減るという落とし穴があります。老後の収入額が不安な場合は、貯蓄やiDeCoで老後資産をつくるなどあらかじめ対策を打っておく必要があります。

このように、日本とアメリカの違いを織り込んだ計画を立てることも大切です。

計画どおりにいかなくてもフレキシブルに調整する

FIREを目指すと決めたら、まずは目標額を設定します。フルFIREはかなりハードルが高いので、最初の目標はサイドFIREに据えるのが基本。資産の増加が順調で、結果的にフルFIREが目指せそうであれば、そちらに舵をきるとよいでしょう。

FIREに向けては、支出の削減と収入アップをして、そのお金を運用していきます。ただし、人生には結婚、出産、子どもの教育費、マイホーム購入など、大きなイベントとそれに伴う支出が発生することがあります。

そのようなイベントで投資額の捻出が厳しくなったら、FIRE時期を後ろ倒す、あるいは勤労収入を増やして目標金額を少なくするなど、随時プランの見直しを行ないましょう。大切なライフイベントをFIRE達成のためにないがしろにしては元も子もありません。

FIRE目標額と達成年齢:20代夫婦(賃貸)の場合

まずは、どんなFIREを目指すのか、目標を定めるところからスタート。年齢や年収によってもFIRE達成への道筋は変わるので、自分に合ったプランを考えましょう。

Bさん夫婦のケースでは、20代からFIREを目指して積立投資を開始。賃貸で家賃は月85,000円、日常生活費は月15万円、手持ち資産は0円としています。

この場合、フルFIREに必要な資産は7,050万円、サイドFIREに必要な資産は1,050万円(勤労収入月20万円の場合)となります。

2人がフルタイムで働き、手取りが年合計500万円(世帯年収620万円)など、それなりの収入が見込めて、この先も家族形態が変わらないとすれば、月々の積立可能額は最大で18万円ほどになります。これを続ければ、50代でのフルFIREも手が届く範囲にあります。二馬力かつ長い投資期間が取れることが大きなポイントです。

この場合、サイドFIREはさらに目指しやすくなります。勤労収入を2人で月20万円程度になるよう働いたとすると、30代後半には余裕をもって達成できそうです。早くから経済的自由が手に入るので、夫婦で何をしたいのか、しっかり考えておきましょう。

なお、この先子どもを持つ予定があるならば、「ファミリー」の目標例も参考にしてください。子どもが生まれる前は二馬力で働けて教育費などもかからない、人生における「お金の貯め時」です。この時期に集中的にお金を貯めて、子どもができたら積立金額が減っても、コツコツとできる範囲で投資を続けるようにしましょう。

FIRE目標額と達成年齢:30代ファミリー(持ち家)の場合

Dさんファミリーのケースでは、30代からFIREを目指して積立投資を開始。マンションを3,000万円で購入し、ローン返済額は月91,000円。日常生活費は月18万円、手持ち資産を0円としています。また、大学資金は400万円としました。

この場合、フルFIREに必要な資産は8,530万円、サイドFIREに必要な資産は4,030万円(勤労収入月15万円の場合)となります。子どもの生活費と教育費の支出が必要で、かつ住宅ローン返済もあるので、他のケースよりもFIRE達成は厳しいものになります。

仮に、夫の手取りが400万円(年収500万円)、妻の手取りが240万円(年収300万円)で、合計の手取り額が640万円だとします。そこから生活費を引いて、かつ大学資金として用意する分も引く(400万円を子の大学入学までの18年間で割る)と、月の積立可能額は最大でおよそ24万円になります。

ただ、子育て期間中にはいろいろな支出がかさむもの。世帯年収にもよりますが、これほどの金額を投資に回すのは難しいでしょう。サイドFIREも50代以降にできれば上出来といえます。

教育費も、私立に通わせたいと思えばもっとかかります。まずは子育てを第一にしながら、将来子育てがひと段落したときに仕事もゆるっとできる。そんなサイドFIREを目指してはどうでしょうか。

4%ルールは絶対ではない。数字を変えて試算しよう

FIREの計算で使う「25倍」という数字は、「4%ルール」に基づいています。4%は、アメリカの過去の市場成長率年7%からアメリカのインフレ率(物価上昇率)3%を引いた数字です。日本のインフレ率は1%未満なので、その点では、日本はFIREしやすい環境です。

とはいえ、運用利率に絶対はないため、年4%を確保できる保障もありません。年4%というのは、それなりのリスクを取らなければ狙えない数字でもあります。そのため、4%だけでなく、3%、あるいは4%よりも高い年率だったら必要額はどう変わるのかを見ておくとよいでしょう。

『いちからわかる! FIRE入門 積立投資で目指す 早期リタイア術』では、入門書としての基礎知識や、年齢や家族構成に応じたFIREへの目標額や毎月の投資額、「お金をつくる」「お金を増やす」方法などを掲載しています。

いちからわかる! FIRE入門 積立投資で目指す 早期リタイア術

・価格:1,100円
・発売日:2022年3月29日
・ページ数:112ページ
・サイズ:A4変形判
・内容
巻頭特集:誰でも手が届くFIRE超入門
PART1:年齢・年収別 FIREへの目標設定
PART2:年金を攻略して日本版FIREを達成
PART3:FIREするためのお金をつくる
PART4:FIREのお金を投資で増やす
【SPECIAL INTERVIEW】FIRE成功者に聞く