小寺信良のシティ・カントリー・シティ

第12回

君は宮崎の豚骨ラーメンを知っているか

九州のイメージ

実際に九州に住んだことや行ったことがない方は、九州の食べ物にどんなイメージを持っているだろうか。酒と言えば焼酎が出てくるとか、ラーメンは豚骨しかないとか、そういうイメージなのかもしれない。

まあ、概ねそれで間違ってないところではあるのだが、九州の中でも宮崎県は一番地味なので、宮崎の名物と言われてもほとんどの方はピンと来ないだろう。最近ではようやく宮崎牛や地鳥、マンゴーが名産品として知られはじめ、空港の土産物屋で売られてきた程度である。

宮崎の豚骨ラーメンは、全国的にはまったく無名である。豚骨なら多くの人は博多、久留米、熊本あたりをイメージするだろう。福岡県で創業した棒ラーメンメーカー「マルタイ」では、「ご当地シリーズ」として宮崎のラーメンを扱っているが、「宮崎鶏塩ラーメン」となっており、豚骨ではない。宮崎と言えば地鳥、それをベースにしたラーメンという企画なのだろうが、宮崎で暮らして半年、未だにリアル店舗でそんなラーメンを見たことがない。宮崎だって、豚骨ラーメンが基本なのだ。

宮崎の豚骨ラーメン

まあそれほどまでに、宮崎の豚骨ラーメンは軽視されているわけだが、筆者にとっては子供の頃からの馴染みの味である。首都圏では日本全国のラーメンを食べることができるが、その中でも宮崎の豚骨ラーメンが一番旨いと思っている。もし宮崎にお越しの際は、夜は地鳥なり宮崎牛なりで焼酎を飲んでいただくとして、昼食はぜひ以下の3件のラーメン店のどれかを訪れていただきたい。

宮崎ラーメンの味の方向性を決めたと言われているのが、宮崎市江平西2丁目にある栄養軒である。創業が昭和39年というから、今から55年前という事になる。スープは豚骨ベースではあるが、薄く醤油が使われており、豚骨なのにあっさりした味で、自家製のストレート麺によく合う。

いつも車が止まっており、なかなか全景写真が撮れない
モヤシ大盛りバージョン

学生服を来ていると割引になるという独自ルールがあり、土日のお昼は、わざわざ学生服に着替えた高校生がグループでラーメンをすすっていたりする。

栄養軒が宮崎ラーメンの元祖的な位置づけで間違いなないのだが、「新しくできた元祖」というポジションなのが、宮崎市大島町にある「ラーメン本舗さといも」である。

さといもの店主は元々栄養軒を開いた方で、一時期体を悪くした際に弟子に栄養軒を譲って一旦は引退した。その後病も全快し、再び店舗を立ち上げたのが、この「さといも」なのだそうだ。

したがって味は栄養軒と似ている、というか、味的にはこちらのほうが元祖なのだろう。栄養軒よりもややこってり感があり、味が濃いわけではないが旨みの強いラーメンだ。さといもの由来は、店主の頭の形がさといもみたいだから、ということで、味とは関係ない。

上記2店は店が小さいので、昼12時から1時ぐらいはいつも行列ができている。一方で比較的大きめの店、しかも市内に2カ所の店舗を構えるのが、「ラーメンきむら」である。漢字では「喜夢良」と書くようだ。ここでは宮崎市権現町の「北店」をご紹介する。

大きめの店舗であまり待たずに済む「ラーメンきむら」
ネギ大盛りバージョン

こちらも上記2店の味に近いが、もっと塩味が濃く、食べ応えのある味である。筆者もだんだん年齢とともに濃い味付けがしんどくなってきたので、「モヤシ増量」することで味を調整する事が多い。筆者は当時を知らないが、このきむらも歴史が古く、かつては栄養軒の近くに店舗があり、宮崎市民は栄養軒派ときむら派に分かれていたとのこと。

「せっかく宮崎に来のにラーメン食べる時間がなかった! 」という方も、諦めるのはまだ早い。宮崎空港1階の北側の端に、「宮崎ラーメン 響」がオープンした。こちらも宮崎市内では人気店の一つなので、味は一流だ。

さらに「食べてる時間もない!」という方は、空港売店に「響」のお土産ラーメンが売っている。最後の最後まで諦めることなく、宮崎の隠れた名物である豚骨ラーメンを召し上がっていただきたい。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。