いつモノコト

テレビじゃダメ、配信だけでもダメ! 全録のおかげでParaviに激ハマリした

思い入れありまくりの東芝「DBR-M190」。私の「全録」はここからスタートしました

誰にでも1つは「思い入れのあるAV機器・家電」があるのではないでしょうか。A社のテレビを買ったらメチャクチャ便利だった! B社の炊飯器があると白飯を炊くのが楽しみで仕方ない!……なんて具合に、たった1つの機器によって生活の質・豊かさがグッと向上した経験がお有りのことでしょう。

私にとって、それはテレビ録画機(レコーダー)───中でも「全録」などと呼ばれるタイプの製品です。

全録生活10周年、とにかく、ひたすら便利

レコーダーは通常、ある特定のチャンネル・時間帯のテレビ番組を指定して、例えば映画なら2時間、年末年始のスペシャル番組なら5時間といったレベルで録画します。これに対して全録機は、おおよそ6チャンネル分の番組を24時間体制で録画しつづけ、保存容量の限界を超えた分は自動で削除していくという仕組みです。

※機器によって異なりますが、機器メンテナンスなどの都合で1日あたり数分~1時間程度は録画できず、厳密な意味での連続24時間録画が不可能なケースが大半です。詳しくは各製品の説明書をご覧ください

保存期間はレコーダーの性能・設定にもよりますが、これだけの録画をしても1週間分を常時保存するのはそれほど難しくありません。NHKや民放など、普段よく見るチャンネルの番組がほぼ全て、1週間分に渡ってストックされ、好きな時に見られる訳です。

私が全録生活を始めたのは、2011年12月のこと。東芝(当時)の「DRB-M190」を購入したのがきっかけでした。このあたりの顛末は、当時のAV Watchの記事をご覧頂ければ幸いです。購入3カ月目のレビューですが、今なお伝えたい論旨は変わりません。

自腹で買って6週間。レグザサーバー購入記

それから約10年が経ちますが、この間一貫してDBR-M190を愛用し続けてきました。当時の本体価格は約16万円。買う前は悩みに悩み、稼働3年目に故障して約6万円(!)の修理費を払いましたが、それでも今はなんの悔いを感じておりません。それよりも、テレビ生活を根本から変えてくれたことに対する恩義すら覚えます。なんたって、全録しているチャンネルであれば、基本的には録画予約を一切しなくて済むんですからね(長期保存したい番組は別です)。

なお、全録対応のレコーダーは、国内大手メーカーだとTVS REGZA(旧・東芝)とパナソニックがリリースしています。ちなみに「全録」とは俗称で、レグザは「タイムシフト(マシン)」、パナソニックは「チャンネル録画」「全自動録画」などの呼称を用いています。

もし今から買うなら、「まぁまぁの画質設定で24時間録画しても1週間分保存できる」レベルの製品をオススメします。利便重視で、例えば画質を落としてもっと長期保存するという考えもありますが、後述するように、やはり全録があるとテレビを見る時間が増え、すると画質が気になってきます。バランスを考えると「1週間保存」が最適解でしょう。

ここまで述べたように、もはや全録なしの生活はあり得ない身。そして10年経って、流石にネットワーク周りの仕様に不足を感じるようになってきたため、この夏、ついに全録機を買い替えました。TVS REGZAの「DBR-M4010」です。価格はおよそ9.5万円。チューナー数などは異なりますが、かなり低価格化が進みました。またこの機種ですと、“1週間保存”は全く問題ありませんでした。

こちらが「DBR-M4010」。居間のリビングで使っています
全録機能にあたる「タイムシフトマシン」の設定画面。メンテナンス時間を除いて最大23時間、連続録画できます。この設定だと深夜3~4時をメンテナンス時間に充てています
録画用ハードディスクに対するタイムシフトマシンへの割り当てを上限に設定し、かつ「AVC高画質」の設定にしても、7.0日分の保存ができました。これだと「今まさにリアルタイム放送されている番組の前回(前週)分」がギリギリ視聴できます

配信が普及したけど、それでも全番組は観られない。だから全録

ただ、この10年でテレビを取り巻く状況は大分変わりました。動画配信の台頭です。2011年9月にはHuluが日本でサービスを開始し、定額制──今ではサブスクという表現もかなり一般的になりました──による見放題配信の先鞭を付けました。2015年9月にはNetflixとAmazonプライム・ビデオがスタートしましたし、その直後の10月にはTVerが立ち上がり、テレビ番組の無料見逃し配信が本格化しました。

この状況になると「もうレコーダーとか、いらないんじゃない?」という声も聞こえてきそうですが、いやそんなことはありません。少なくとも2021年11月の段階では、全録があったほうがよいと断言します。

まず何より、全ての地上波番組がネット配信されている訳ではありません。ドラマやアニメの配信は相当増えましたが、情報・バラエティ番組はまだまだ。例えばTBS系「王様のブランチ」(土曜9時30分~14時)は、コーナー別配信をTVerを実施していますが、全編を見ることができません。 テレビ朝日系の平日帯番組「じゅん散歩」も無理です。

またテレビ東京系の映画枠「午後のロードショー」で扱っている番組は、確かにNetflixなどをしっかり探れば見ることはできますが、完璧ではありません。10月末に大塚明夫版「ブレイド」が放送されてましたが、恐らくそれを配信で見ることはできないのでは……?。そうそう、余談ですがU-NEXTでは「ハムナプトラ」がなぜか堀内賢雄・田中敦子版です。

東芝の全録の場合、保存されている番組は専用の「過去番組表」から見ることができます

ただ個人的には、目的の番組がTVerで配信されているか調べることすら面倒に感じます。全録機を立ち上げさえすれば、ほぼ確実に番組が見られる訳ですからね。「予約しよう」「予約し忘れた」「見忘れた番組があるんだけど配信しているんだっけ」等々、些細なストレスかもしれませんが、全録機があればそれを確実に緩和できます。

また経験上、全録機があるとテレビの視聴時間は増えます。サブスクを契約したらもったいないので使い込むのと同じ。ですので、もともとの自分の興味から若干ズレた番組であっても、それこそ番組再生中に流れたCMで存在に気づき、待たずにすぐ見始めたり、ネットで話題になった番組を後追いで楽しんだり……。とにかく「いつもと同じようで、ちょっと違う番組視聴体験」ができるようになります。

そうした積み重ねの中で出会ったのが、日本テレビ系のランチタイム番組「ヒルナンデス!」、その火曜版でした。平日帯番組なので月~金を色々見比べてみたものの、個人的には火曜版が圧倒的に好み。特に数カ月に1回、チョコレートプラネット、有岡大貴、石原良純の面々がチャレンジするローカル鉄道旅が好きなんですよね。単純に鉄道に乗るだけではなく、「果たして時間までにゴールに辿り着けるのか?」というゲーム系の企画でして、今からもう次の放送が楽しみで仕方ありません。前回は銚子電鉄でしたが。

全録あるのに、気がついたらParaviでテレ東の旅バラエティ三昧

じゃあ全録で全て解決するのか。それもやっぱり違います。さきのヒルナンデス!のおかげで、チャレンジ系旅番組の面白さに覚醒した私、それが行き着いた先はテレビ東京系の旅バラエティ特番でした。

太川陽介・蛭子能収コンビの「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」が特に有名ですが、今はそこから派生(?)した番組も多く存在します。最近ですと「BINGO対決旅」「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 鬼ごっこ」が放送されました。

これらは水曜夜の「水バラ」、土曜夜の「土曜スペシャル」が二大放送枠で、月に2本程度はなんらかの新作が放送されるイメージです。そこで、この8月くらいからは全録でもう浴びるように見ています。ただ、それでも足りない。過去分でいいからもっと見たい!

……と思っていたらなんと、TBS系・テレビ東京系の番組を定額で楽しめる「Paravi」にそれらの番組があるじゃないですか。どうやら今年4月頃から、こうした旅バラエティ特番のバックナンバー配信が本格化したようで、「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」「バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」「あさこ・梨乃 節約ケチケチ旅」などのうち、比較的新しい回が見放題で楽しめます。

テレ東の旅バラエティに興味があるなら「Paravi」。もう間違いない

これに気付いたらもう、完全な虜です。月額1,017円で契約し、全体で20回~30回分くらいあるエピソードを、それこそ1日1~2本のペースでひたすらヘビロテ。「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」の第5弾に至っては、10数回は通しで視聴しました。村重杏奈のギャル魂の尊さよ、北斗の拳マンホール巡りで満面の笑みを浮かべる瀬下豊(天竺鼠)の愛おしさよ……。

また乗り物モチーフ以外も色々ありまして「鉄道沿線歩き旅」もなかなかの面白さです。タイトル通り、鉄道には乗らず、その沿線を1~2泊かけて数十km歩くというヘビーな企画で、レギュラーの福澤朗も番組内で度々「旅バラエティではなく、ドキュメンタリー」的な発言しています。ゲスト出演者が文句を口にするのも、あながち冗談ではないかも……。

Paraviで配信されている、テレビ東京系旅バラエティはこんな感じ

こうした番組、人によっては一度見れば十分かもしれません。でも私は何度も見たい。結末が分かっていてもいいんです。それでも出演者の方々がドジって笑っていたり、バスの本数が少なくて苦しんでいるのをそっと見守りたい。何ならもう、会話しているところをBGM代わりに聞くだけでも面白い。逆に時間のあるときは隅から隅まで舐めるように見て、ドローン撮影に写り込んでいる建物や飲食店の名前をGoogle マップで調べたり、とにかく多角的に楽しんでいます。押井守作品と同じくらい、見る度に発見があります(個人の感想です)。

本稿執筆時では最新となる「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 路線バスで鬼ごっこ」第5弾も、放送終了直後にはラインナップされていました

確実に週10時間はこれらの番組に触れていますから、もう「テレ東といえば旅バラエティ」というブランドイメージが脳内に刻み込まれ、Webの検索行動すら変わってきました。週に1回は「水バラ」「土曜スペシャル」のWebサイトをチェックして一喜一憂。放送されると分かったら、心のなかでガッツポーズ。なんと全録あるのにテレビの前に正座して、ほぼリアルタイム視聴ですよ。

とまあこんな感じで「1.全録での番組の発見・視聴」→「2.有料配信でのキャッチアップ」→「3.リアルタイム視聴習慣の復活」という、テレビ局関係者が理想としていそうな(?)スパイラルがここに誕生しました。録画が絡むと、テレビ局の方はあまり良い顔しないかもしれませんが、でもそこで自社の配信サイトへ上手く誘導できれば、私のようにドハマリする人が増え、会社としての収益にも繋がると思うのです。テレビ局が視聴者に全録機を配るのは無理でしょうから、せめてTVer等でオンデマンド視聴できる番組の数については、今以上に増やして欲しいですね。

我々ユーザー側は、配信の充実を待つのも一つの手ですが、全録がありさえすれば今すぐ解消できる問題も多いです。私は旅バラエティでしたが、ぜひ皆さんお一人お一人のドハマリ番組を全録で見つけてみてはいかがでしょうか?

そうそう、Paraviというかテレビ東京には、旅バラエティ番組バックナンバーの更なる追加をお願いしたいところ。私は完全に新参ファンなので、「バスVS鉄道」「陣取り合戦」の初期分が是非見てみたいです。ぜひ、ご検討のほど、よろしくお願いいたします!

全録はいいぞ。Paraviもいいけど
森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。