いつモノコト

オールドレンズの雰囲気重視、レイクォール国産マウントアダプター

筆者はニコンの一眼レフカメラを愛用してきましたが、2018年にニコンのフルサイズミラーレスであるZマウントシステムが登場したタイミングで、「Z6」一式に乗り換えました。他社のレンズを使いやすい(フランジバックの短い)ミラーレスシステムということもあり、マウントの形状を変換する「マウントアダプター」は、現在までにサードパーティからさまざまなものが発売されています。筆者はブツ撮りや取材など主に仕事で、「Z6」を純正システムのまま使っていますが、休日など趣味で使うなら、マウントアダプターを活用して、使えるレンズの幅を広げるのも楽しみ方のひとつです。

Z6への乗り換えにあたって、Gタイプレンズなど新しめのFマウントレンズは、60mmのマクロレンズだけ残してあとは手放しました。一方、それらとは別にニコンのフィルムカメラのボディを持っているため、Fマウントのオールドレンズ(≒マニュアルフォーカスレンズ)はフィルムカメラ用としてそのまま残しています。最近になって、このフィルムカメラ用のオールドレンズを少し買い足したため、せっかくならZ6にも付けて遊んでみようと思い、オールドレンズにぴったりなマウントアダプターを探すことにしました。

オールドレンズを持ち出す時は趣味の用途ですから、キメラ的なゴテゴテした感じはなるべく抑えて、雰囲気も楽しみたい……そこで登場するのがサードパーティ製の「ニコンF→ニコンZ」(FマウントのレンズをZマウントのボディに取り付ける)というタイプのマウントアダプターです。「ニコンF→ニコンZ」のマウントアダプターは、ニコン自らも電子接点搭載の「FTZ」をラインナップしていますので、サードパーティの製品は電子接点のない、Fマウントのオールドレンズをターゲットにしたものがほとんどです。

筆者はその中で、世間一般にはファーストチョイスにならないであろう(笑)、RAYQUAL(レイクォール)の「NF-NZ」を買ってみました。レイクォールは、東京・練馬区にある宮本製作所のブランドで、ズバリ、日本製であることがポイントです。

レイクォールのZマウント用アダプター「NF-NZ」

サードパーティ製のマウントアダプターは海外メーカー・海外製が中心ですが、レイクォールは孤軍奮闘する国内メーカーといったところでしょうか。もちろん日本国内で製造され、その工作精度は素晴らしいの一言。無限遠は問題なく出ますし、Zマウント側の装着感は純正のFTZよりもスムーズなレベル。まるで純正Zレンズそのもののように、スス~~チャッ と気持ちよく装着できます。

表面のブロック状のディテール・デザインは可もなく不可もなくといった印象ですが、ニコンのオールドレンズを装着するとアダプター側はあまり自己主張しないイメージです。FTZと違ってスリムで、少しくびれた形状なのも、目立たない印象につながっているのかもしれません。

レイクォール「NF-NZ」(左)と、ニコン「FTZ」(右)。Fマウント側
Zマウント(ボディ)側。右のFTZは現行・最新のFマウントレンズに対応するための電子接点も搭載されています
ニコンのオールドレンズを付けたところ。右のFTZはそれ自体が太く、表面処理は現行Fマウントレンズに合わせた梨地のディテールになっています

課題があるとすれば、この製品は焦点工房やK&F Conceptといった海外メーカーの製品と比べて倍以上の価格という点でしょう。レイクォールの「NF-NZ」は直販価格で14,700円、焦点工房の同じ仕様のマウントアダプターは、Amazon.co.jpで6,000円弱です。

また、商社に在庫がないと販売店では長期間在庫切れが続くこともあるようです。筆者はしばらく探していましたが、Amazon.co.jpやヨドバシカメラを含め、販売店になかなか再入荷しないので、メーカーから直接購入しました。メーカー直販はメールか電話のみというオールドスクールな運営スタイルですが、少しだけ安く購入できました。

レイクォールの製品は日本製ですし高品質であることはメーカーも謳っているので、品質面でハズレの心配はあまりないだろうという目論見はありました。あれこれ試すのはめんどうで、最初から“最終解”が欲しい、とりあえず最高のヤツが欲しい、という人にはおすすめできます。そうでないなら、主に価格の面で焦点工房の製品などがファーストチョイスになるのではないかと思います。

筆者はどちらかというと、レイクォールの製品のレビュー、特にこの「NF-NZ」という、メインストリームではないタイプの製品の詳細を伝える情報が非常に少ないことに対して(マウントアダプター界隈はライカのMマウントレンズを使うための製品が人気です)、逆にやる気を出してしまい、「だったら自分で買って試してやんよ」という気分になったのが購入の動機の半分ぐらいでしょうか。

筆者はFTZをすでに持っていますが、これは現行のFマウントレンズ向けという仕様・デザインで、オールドレンズ向けとして考えると大きさやデザインにミスマッチな点も目立ちます。オールドレンズは描写だけでなく身にまとう雰囲気も味わい深いですから、ここはひとつ、マウントアダプターをシンプルにして、雰囲気にもこだわって楽しんでみてはいかがでしょうか。

レイクォール「NF-NZ」はあまり目立たないデザインで、オールドレンズにぴったりでした。レンズは「Ai Nikkor 20mm F3.5」です
Ai Nikkor 20mm F3.5は1979年発売。逆光耐性や歪み補正は時代なりですが、20mmの超広角レンズとして驚くほどコンパクトです
太田 亮三