いつモノコト

「うつぶせスタイル」がすばらしい。2020年にソニーの学習リモコンを買う

テレビに付属のリモコン(左)と、今回買ったソニーの学習リモコン「RM-PLZ430D」(右)

引っ越しに伴い新居では新たに液晶テレビを購入したが、軽く忘れていたのがリモコンの存在だった。東芝のREGZAを選んだのだが、リモコンの盤面のデザインはなかなかにカオスな様相を呈している。そこで、テレビのリモコンの使い方を一通り覚え、普段使う内容が安定してきたところで、学習リモコンを探して購入してみた。選んだのはソニーのマルチ機能リモコン(学習マルチリモコン)「RM-PLZ430D」だ。家電量販店で2,560円(税込)だった。

このモデルを選んだのは、リモコンのボタンの面を下にして置く「うつぶせスタイル」が気になったからだ。ソニーは「ハウス リモートコントローラー HUIS-100RC」という製品をラインナップしていた(生産終了、流通在庫のみ)が、その背景には、「AV家電のリモコンはボタンが多くて、見た目もゴチャゴチャしがち」ということに対する挑戦があったように思う。

HUIS REMOTE CONTROLLER(HUIS-100RC)

その志の高さは理解できるが、価格も高かった。筆者にとっては「見た目がゴチャゴチャしているなら、裏返しておけばOK」という「うつぶせスタイル」のアプローチに目から鱗が落ちる思いで、「これで十分なのでは」と、とても納得してしまったのだ。

「うつぶせスタイル」で裏返してもスッキリとしたデザイン(右)

「RM-PLZ430D」はテレビ+4台の機器の操作に対応しているが、テレビ+7台の機器の操作に対応した上位モデル「RM-PLZ530D」も存在している。この「RM-PLZ530D」にはシルバー、ブルー、レッドとカラーバリエーションも3色あり、背面の形状はかまぼこのように丸くなっている。

実は当初、このモデルを買おうと店頭に赴いたのだが、隣に陳列されていた「RM-PLZ430D」を見て「こっちでいいのでは」と考え直した。テレビしか操作しないので機能面は満たしているし、「RM-PLZ430D」の背面は濃い紺色で、丸くないフラットな形状だったので、むしろこちらのほうが求めていたものに近く、落ち着いた見た目になると思ったからだ。

テレビに付属のリモコンからみえるメーカーのポリシー

テレビのリモコンは家電製品の中でも難しい立場にあると思う。テレビの機能の増加に伴ってボタンの数が増える反面、家庭のリビングに収まる製品として、高齢者を含めて幅広い世代が使えるようデザインに配慮しなければならないからだ。テレビに付属のリモコンでどこまでそれらに配慮できるのか、メーカーのポリシーが反映される部分だろう。

筆者が購入したテレビは東芝製だったが、リモコンのデザインは、見やすさ・分かりやすさを優先している印象。極端な例だが、携帯電話なら「らくらくホン」に近いイメージだ。フォントが角ゴシックなのも少し堅苦しい印象を受けるが、チャンネルや音量といったボタンには文字がかなり大きく(少々強引に)印字されている。これはこれでひとつのアプローチなのだが、結果として、デザイン的には少しカオスだと感じる。

この東芝のリモコンには、赤外線の発光部が先端と裏面の2カ所にあり、リモコンを立てている状態でボタンを押しても信号が届くようになっている。こうした機能からも、リモコンの操作にあまり慣れない人にもなんとか快適に使ってもらおうという配慮がみえる。

テレビに付属のリモコン(左)と、ソニーの学習リモコン「RM-PLZ430D」(右)
「チャンネル」の文字はけっこう強引に収められている

これに対してソニーのリモコンのデザインは、ある程度の秩序や統一感がある……のだが、テレビに付属のリモコンや多機能な学習リモコンは、印字されているフォントが小さいものも多く、比較的小さいボタンも多い。勝手な予想だが、老眼が進んでいる人や高齢者には使いづらいと感じる人も多いのではないだろうか。なおソニーは、テレビ付属ではなく別売りの代替リモコンとして、大型ボタンやスピーカー付きのモデルを「かんたんリモコン」としてラインナップしている。メーカーとして高齢者を切り捨てているわけではないのだが、テレビに付属のリモコンでどこまで配慮するのかというポリシーの違いといえそうだ。

これらの内容は、テレビという家族の全世代が使う製品としては一長一短ということだろうが、一人暮らしの筆者としては、秩序や統一感のあるデザインのほうがいい、という選択になる。

「Netflix」ボタンは汎用ボタンで解決

「RM-PLZ430D」の本体の幅は52mmと狭めだが、厚みは27mmと少し厚い。重さは電池を入れた状態の実測値で173gあり、これは少し重い部類だろう。東芝のリモコン(CT-90491)は電池を入れた実測値で121gだった。

「RM-PLZ430D」はテレビ用のリモコンをベースにした学習リモコンのため、テレビのメーカーを設定する(学習させる)だけで使える状態になる。ソニーのテレビ用リモコンで東芝のテレビを操作することになるのだが、上下左右の方向ボタンや決定ボタン、番組表ボタンや設定ボタンなど、基本的な操作に関するボタンは実質的に共通化されており、自分が使いやすいようにわずかに手直しするだけで済んだ。

もっとも、「RM-PLZ430D」は新品で買える現行モデルとはいえ、10年前の2010年に発売された製品。「3D」ボタンなど、2020年に発売されたテレビには搭載されていない機能のボタンもある。ただこうした例はわずかで、ほとんどのボタンは今のテレビでも問題なく使え、無駄になるボタンはほとんどない。

テレビのメーカー間で大きな違いが出るのは「Netflix」など動画サービスを直接起動できるボタンだ。学習リモコン側には汎用的に使えるボタンが搭載されていない場合も多いが、「RM-PLZ430D」には「A」「B」「C」「D」という汎用的に使えるボタンが4つ用意されている。

このボタンは「システムコントロールボタン」として用意されているもので、テレビとAVアンプをボタン1つで同時に操作するといった複雑なマクロ操作を設定できるボタン。単機能のボタンも登録できるため、筆者は、東芝のリモコンにある「YouTube」と「Netflix」のボタンを「A」と「B」に登録して利用している。

本当は「DAZN」も登録したいのだが、DAZNは東芝のリモコンにボタンが用意されておらず、テレビのメニュー画面から選ぶ方式。一連の操作にはマクロ機能の対象外のボタンが含まれるためか、メニュー画面を出し、カーソルを動かして~~という複数ステップの操作をうまく登録できなかった。

「Netflix」ボタンなどは汎用的な「A」と「B」に割り当てた

このほか「RM-PLZ430D」がテレビに付属のリモコンと比べて良かったのは、赤外線の照射範囲が広角な点。発光部に3つのLEDが搭載されており、特に左右方向に強い印象だ。筆者の部屋のレイアウトでは、PCデスクの上にリモコンを置いたままボタンを押すと認識しない場合があったが、「RM-PLZ430D」ではこうしたこともなくなった。

赤外線の発光部は東芝(左)が2つのLEDで上下方向に強いのに対し、「RM-PLZ430D」は3つのLEDを搭載し、より広角に照射できる
机に置いたままの操作では「RM-PLZ430D」に分があった

逆に使用感が後退したのは、方向ボタンとその周辺のボタンの操作性。東芝のテレビに付属のリモコンの方向ボタンは、ラバーではなくプラスチックで、指先の感触だけで方向ボタンとその外周のボタンを判別でき、コチコチと明確なクリック感があって押しやすかった。「RM-PLZ430D」の方向ボタンはそのほかのボタンと同じラバーで、突起などもなく、指先の感触だけではほかのボタンとの判別がしにくい。クリック感も希薄で、間違えずに操作できるまで時間がかかった。

“ザ・リモコン”が消える「うつぶせスタイル」

「RM-PLZ430D」の背面の色は深いネイビーで、わずかにメタリック塗装になっている。背面は1パーツで構成されており、電池を交換する際は背面パーツ全体がスライドする形だ。フラットな背面の四隅には小さな足(突起)があるので、塗装面が机と擦れる心配は少ない。リモコンのボタンがある表面にも「うつぶせ」用の突起があり、ボタンが机と擦れないようになっている。

背面の四隅には小さな突起
表側にも突起があり「うつぶせスタイル」でもボタンが擦れないようになっている

テレビに付属のリモコンと比べて、「RM-PLZ430D」の表面はずいぶんと秩序あるデザインだが、それでも、表面にはいかにもリモコンという存在感がある。しかし「うつぶせスタイル」としてひっくり返すと、ソニーのロゴだけが入っている綺麗な「謎のバー」になり、“リモコンっぽさ”はなくなる。

筆者の場合、PCデスクやその周辺に置く事が多いので、リモコン以外のモノで結局はゴチャゴチャとしがちな環境ではあるのだが、「リモコンがリビングの雰囲気を台無しにしている」と嘆いている人にはオススメできるアイテムだ。

PCデスクのど真ん中に置かれた「謎のバー」

太田 亮三