キャッシュレス百景

第4回

QUICPay対応でLINE Payがキャッシュレスの主力に by 石野純也

LINE Payを使うようになってから、日々の支払いでの“キャッシュレス率”が大きく上った。2014年にはサービスを開始していたLINE Payだが、筆者が利用するようになったのは昨年11月から。同サービスのAndroid版が、Google Pay経由で非接触決済のQUICPayに対応したためだ。

2018年11月から愛用しているLINE Pay

QUICPayに対応したクレジットカードはほかにもあるし、非接触決済ではiDもある。では、なぜLINE Payを選んだのかというと、やはりプリペイド型であることが大きい。

LINE Pay愛用の理由は非接触のQUICPay対応

実はおサイフケータイやApple Payに対応したプリペイド型(先払い)のクレジットカードやデビットカードは選択肢が非常に少なく、ほとんどが後払い型(ポストペイ)。タッチするだけで決済できて便利な反面、今、この瞬間、合計でいくら使っているのかというのが把握しづらい。カードによってはリアルタイムで明細に支払い情報が反映されることもあるそうだが、残念ながら、筆者の持っているカードは1日、2日ほど情報が遅れてしまう。

また、決まった範囲の残高から引き落とされていくプリペイドと、積み上げた金額が後から引き落とされるポストペイでは、金銭管理の感覚が違ってくる。残高がなくなると使えなくなるプリペイド型の方が、いがやおうにもお金の使い方がシビアになるはずだ。LINE Payはもともとプリペイド型のサービスだが、これが非接触のQUICPayに対応したとなれば使わない手はない。開始当初はQUICPayを設定するだけで1,000円ぶんのLINEポイントがもらえたこともあり、すぐに登録を済ませた(LINE PayのQUICPayは、Andoidのみの対応)。

さまざまな手段で入金できるが、筆者は主に銀行から直接チャージしている

実際に使ってみると、LINE Payの作りのよさに感心することが多かった。まず、決済やチャージごとにLINEで通知が届き、残高がきっちり分かるためお金の管理がしやすい。LINEで友だちになっている人に送金できるのも便利だ。

支払いが済むと、すぐにLINEのメッセージとして通知が届く

都度チャージするのが少々面倒だったため、1,000円を下回ると1,000円オートチャージするように設定しておいた。LINE Payでの支払いは1,000円以下のことが多いため、常に1,000円~2,000円程度チャージされていれば事足りてしまうからだ。もう少し金額が高いものを買うときは、手動でチャージすればいい。

少額決済が多いため、オートチャージは1,000円ずつに設定した

また、手数料はかかるが、LINE Payの残高は、銀行口座に現金として戻すこともできるため、割り勘する際に受け入れやすく、同時に割り勘が受け入れられやすい。ここは、他のプリペイド型決済サービス、特にPayPayとの大きな違いで、資金移動業者として関東財務局に登録してあるだけのことはある。ポイント相当の類似サービスとは、残高の価値が違うというわけだ。

これは本当にあったエピソードだが、発表会が立て続けにあったある日に、ライターの同業者4人でタクシーに相乗りして、代金を割り勘にした。その際、筆者はLINE Payで割り勘分の代金を送金している。これに対し、別の人はPayPayで送金しようとしたが、代金を支払った人に断られてしまった。理由を聞いてみたが、やはり、銀行経由で現金化できないのは、割り勘の手段として受け入れづらいようだ。LINE PayがQUICPayに対応し、100万カ所以上で利用できるようになったのも大きい。

手数料は216円かかってしまうが、銀行に出金できるのもメリット

ただし、QUICPayを使ったLINE Payは、還元率の低さがネックだ。同じLINE Payでも、QRコード決済を使った方が付与されるポイントの割合が増える。昨年12月31日まで実施されていた20%還元の「Payトクキャンペーン」も、QRコード決済限定だった。さすがに20%の還元は大きいと思い、この期間中だけはQRコード決済を使っていたが、その面倒さに辟易としてしまった。

特にやっかいなのが、ポイントカードを併用するケース。筆者はdポイントを貯めているが、これを1台のスマホでやろうとすると、まずdポイントのバーコードを読み取らせてから、アプリをいったん終了し、LINE Payを立ち上げてQRコードを表示させて決済を行なう必要がある。店員さんの前で素早いスマホの操作が必要で、レジが混み合っているときは、後ろからの無言のプレッシャーに耐えなければならない。焦って操作を失敗することもままあった。

レジ前で素早くQRコードを表示させるのは、やはり少々面倒

これがQUICPayだと、レジで「QUICPayで」と告げてスマホを決済端末に置くだけでよくなる。dポイントもFeliCa対応アプリを入れているため、置くだけで自動的に読み取られてポイントが貯まり、同時にQUICPayでの支払いもできる。20%還元がなければ、あえてQUICPayの使える場所でQRコード決済する必要はないと感じたほどだ。やはりQRコード決済は、FeliCa対応の決済端末が置けない、中小店舗に向いた方式といえる。

LINE Payの発表会で披露された決済端末。残念ながら、実店舗で見かけたことはまだない

ただし、筆者が日常的に利用する店舗は、大体がQUICPayに対応しており、LINE PayのQRコード決済にしか対応していないところは1店舗もない。より導入が手軽なのであれば、「QRコード決済>QUICPay」になっていなければならないはずだが、現実的にはサービス開始の時期が違うため、「QRコード決済<QUICPay」になってしまっている。そのため、ユーザー側の手間が多いQRコード決済をあえて使うメリットが、ポイント還元率の高さだけになっている。キャッシュレスの利用シーンが旧来のままで、あまり広がっていることが実感できないのは残念なポイントだ。

とはいえ、現状、QR決済と非接触IC決済の両方に対応しているのはLINE Payだけ。QRコード決済が面倒なら、ユーザーとしてはポイント還元率に目をつぶり、QUICPayを使えばいいだけで、筆者も実際、そのようにしている。QRコード決済サービスにくくられがちなLINE Payだが、実はウォレットサービスの1つ。お金の出口にはさまざまな手段があるということは、覚えておいても損はないだろう。

ちなみに、プリペイド型の非接触決済でかつモバイル対応というと、「モバイルSuica使ってないのか、この情弱が」と煽られてしまいそうだが、モバイルSuicaは、以下の理由で交通機関専用にしている。

1つは銀行から直接チャージするための手順が複雑だということ。対応している銀行の種類も少ない。また、銀行チャージだとビューカードを登録したときのようなオートチャージもできず、肝心の交通機関を使うときの利便性が落ちてしまう。

交通費は後々経費精算することもあって、モバイルSuicaで別の支払いをしない方が明細を振り返りやすいという筆者ならではの事情もある。ただ、JR系のコンビニのNewDaysに関しては、対応する非接触決済がSuicaのみなので、こちらに関しては別途Apple Watchに入れたSuicaを使うことにしている。

その他の店舗ではiDを使うこともあったが、プリペイド型ではないのが悩みの種だった。

LINE PayのQUICPayは、そんな筆者のキャッシュレス生活の“すき間”に、すっと入り込んできたサービスだったというわけだ。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 EYE's factory:http://www.eyes-f.jp/Twitter:@june_ya