レビュー
画面小さめ高機能「Pixel 9 Pro」を自腹で買った 見えてきた「最適画面サイズ」
2024年10月11日 08:20
Androidスマートフォンのスタンダードとして、日本国内市場で着実に地歩を固めているのがGoogleのPixelシリーズです。この8月から9月にかけて、新モデルのPixel 9シリーズが登場。筆者もその1つ、Pixel 9 Proを実際に購入しました。画面サイズは6.3型です。
ただ、この直前に使っていたPixel 8 Proは6.7型。買い替えによって画面サイズは小さくなりました。この差は意外と無視できないのでは? そんな心配もありましたが、使用開始から1カ月が経過。自分なりの答えが見えてきました。
コンパクトスマホから大画面スマホへ乗り換えて約2年
筆者はどちらかといえば、携帯電話にはコンパクトさを求めるタイプです。なるべく軽く、それでいて高機能ならなお良い。同じシリーズのスマホでも画面サイズの異なる2モデルが同時ラインナップされたら、ほぼ例外なく小さい方を選んできました。
振り返ってみますとGalaxy S10+ではなくS10を、Galaxy S22 UltraではなくS22を購入してきました。
ただ、Pixelシリーズの国内販売が本格化する中で、この方針を変えました。直接のきっかけは2022年10月発売のPixel 7 Proの存在です。同時発売のPixel 7と比べて画面サイズが大きいだけでなく、光学望遠レンズの有無も違う。つまり、光学望遠撮影がしたかったらPixel 7 Proを買うしかない。
これより前に、Galaxy S22で光学望遠の利便性を一度体験していた身としては、もう後には戻れません。不安はあるものの、画面サイズの大きいスマホを許容する時なのかもしれない。そんな心境で、購入ボタンをポチったのはいい思い出です。
そんな筆者、まぁ見事なまでに節操がないといいますか(笑)、今やすっかり大画面スマホ派へ転向していまいました。2023年10月にはPixel 8 Proに機種変更しております。
小画面&光学望遠「Pixel 9 Pro」登場 迷った挙げ句に購入
ですが、2024年8月。また変化のタイミングがやってきました。これまでPixelは「Pixel ○○」「Pixel ○○ Pro」という2モデル体制を原則としていましたが(aモデルやFoldの話は置いておきます)、新たに3モデル体制になると言うではありませんか。しかも、画面サイズは相対的に小さいながら、それでいて望遠カメラが内蔵されているという、かつて愛好していた仕様の製品が、新顔として加わる。それが、Pixel 9 Proでした。
例年なら「PixelはPro一択」。これで話が済んでいました。しかし今年は違います。6.8型画面のPixel 9 Pro XLは、愛用してきたPixel 7 Pro/8 Proの直接的後継機種です。対して、Pixel 9 Proは画面サイズだけスタンダードで他は高機能(そして若干お安い)。現在愛用しているPixel 8 Proから、どちらへ機種変更すべきか?
迷いに迷った末、最終的にはPixel 9 Proの購入を決断しました。2024年9月上旬には手元に届き、それから約1カ月。みっちり使い込んでおります。
小型スマホ派から一旦は大画面スマホ派に転向し、再び小型スマホ派に回帰するとどうなるか──。実に地味な話題ですが、多少なりとも参考にしていただける方がいるかもしれません。Pixel 9 Proのどこが良かったか? Pixel 8 Proと比較論、そして実機での体験をもとに解説していきますので、お付き合いください。
6.7型のPixel 8 Proから6.3型のPixel 9 Proへ。変化点を総ざらい
買い換えにあたっては当然、色々な項目を検討しました。具体的には以下の4つ。順に説明していきましょう。
- 重量は213g→199gへ、横幅は76.5mm→72mへとコンパクトになるので、取り回しはラクになるはず
- 画面サイズが6.7型から6.3型に小型化。動画視聴の迫力が損なわれる?
- 通信規格的にミリ波が未サポートになるが……
- ポイント還元次第では、Pixel 9 Pro XLを選んだ方がいい?
【Pixel 8 Pro→Pixel 9 Pro買替時の検討項目】
Pixel 8 ProからPixel 9 Proへ機種変更するにあたって、最も大きな変化は、チップセットの世代を除けば、重量と本体サイズです(画面サイズについては後述)。
まずPixel 8 Proは213g、76.5×162.6 ×8.8mmです。そしてPixel 9 Proが199g、72×152.8×8.5mm。つまりPixel 9 Proのほうが14g軽い。縦持ち時の幅は4.5mm縮まり、高さが9.8mm小さく、そして0.3mm薄くなったことになります。
あくまで筆者の主観ですが、実機を手に取ってみますと、重量差はそれほど感じず。手持ちのキッチンスケールで重量を実測してみても、確かに公表スペック値ぶんの差はあります。ただ、割合にして約7%の軽量化では、“大きな差”とはまでは言えない印象です。
参考までに、Pixel 9 Proと画面サイズ・レンズ仕様的に競合するであろうスマホの重量、本体サイズ、バッテリー容量の比較表を作成しました。Galaxy S24が突出して軽量ですが、Pixel 9 Proも極端に重くはありません。
スペック | Pixel 9 Pro | Galaxy S24 | iPhone 16 Pro | Xperia 1 VI | 【参考】Pixel 8 Pro |
画面サイズ(インチ) | 6.3 | 6.2 | 6.3 | 6.5 | 6.7 |
重量(g) | 199 | 167 | 199 | 192 | 213 |
本体サイズ(mm) | 72×152.8 ×8.5 | 70.6×147<br.>×7.6 | 71.5×149.6 ×8.25 | 74×162 ×8.2 | 76.5×162.6 ×8.8 |
バッテリー容量(mAh) | 4,700 | 4,000 | 非公表 | 5,000 | 5,050 |
一方で、本体サイズの違いは明らか。見た目的には高さ(縦幅)が約1cm違います。そして実用上の違いが顕著なのは、横幅です。4.5mmほど、Pixel 9 Proが小さいだけではありますが、手で実際に握り込んだときのナチュラルさはPixel 9 Proに軍配が上がります。
「スマホを片手で操作したい」としましょう。その際重要なのは、画面の下半分のあらゆる位置を親指でタップできるか、です。より具体的には、Pixelを左手一本で握ったとして、画面右端のアイコンに親指が届くか否か、そこが分水嶺です。
下記の画像は、ホーム画面設定でアプリグリッドを「4×5」に設定したPixel 8 ProとPixel 9 Proです(アプリアイコンの配置は基本的に共通)。筆者の場合、Pixel 8 Proでは「カメラ」には全く問題なく左親指が届きますが、「拡大鏡」については本体を若干握り直さないとツラく感じます。対して、Pixel 9 Proでは、「拡大鏡」をアイコンをラクにタップできます。
もちろん、あらゆる操作がPixel 9 Proなら片手でできるとまでは言いません。ただ、画面の下半分のあらゆる位置を親指で操作できれば、アクセシビリティ設定の片手モードの併用によって、片手操作の実効性は明らかに向上します。
Pixelに限った話ではありませんが、「片手持ち時に親指がどこまで届くか」は、スマホ購入前に一度チェックして損はない項目でしょう。ちなみに筆者の手のサイズですが、手囲い(手袋のサイズ測定に使われる値で、手のひら1周分の長さ)は22.0cm、手長(同じく、中指先端から手首の付け根のシワまで)は19.5cmでした。
画面サイズが6.7型から6.3型に小型化。動画視聴の迫力が損なわれる?
重量と本体サイズがこれだけ違う要因は、画面サイズであることは言うまでもありません。Pixel 8 Proは6.7型(1,344×2,922ドット)、そしてPixel 9 Proは6.3型(1,280×2856ドット)。数字にすれば0.4型の差ですが、見た目の迫力の違いは大きいです。
Pixel 8 Pro(とその前のPixel 7 Pro)で6.7型画面を体験してみて、動画との相性の良さは、特に実感しました。例えばテレビ番組の見逃し配信を視聴するにしても、6.3型画面とでは何かが違う。恐らくは、出演者の表情がよく見えるとか、あるいは字幕の大きさであるとか、そうした細かな要素が少しずつ積み重なって、最終的な体験の差になっていると想像します。
Webサイトの表示はどうでしょうか? 文字のサイズなどはブラウザーやOS側の設定で変えられるため、画面サイズだけで全てを語ることはできません。とはいえ大画面のほうが選択肢が増えるのは確かです。
例えば以下の画像は、本体設定の「画面解像度」で最大解像度を選び、同じく「表示サイズとテキスト」のフォントサイズと表示サイズをデフォルト値にし、さらにChromeブラウザーのズームを100%にした状態で、Impress WatchのWebサイトを表示した際の比較です。Pixel 8 Proのほうが、記事見出しは約1件分多く表示されています。より大画面なスマホ(ここでは6.7型のPixel 8 Pro)ならば、一覧性の高さを諦める一方でフォントサイズを大きくするという調整も容易な訳で、一種の特権です。
この1カ月間、本稿執筆のためにPixel 8 ProとPixel 9 Proをなるべく併用するようにしてきました。Pixel 9 Proには、前項でも触れた片手操作のしやすさなどもあって、不満はほぼありません。動画視聴時であっても、です。
しかし、いざPixel 8 Proに戻ってみると、その度に「やっぱり画面デカっ!」と、思わず嘆息してしまいます。片手操作できるコンパクト端末もいいけれど、価格や重量などの面で折り合いがつけば、画面はやはり大きい方がいい。もはや理屈ではなく、感覚としか言えませんが、それが筆者の偽らざる本音です。
通信規格的にミリ波が未サポートになるが……
Pixel 9世代のモデルでは、バンド(電波周波数)の扱いが前世代モデルとは変わりました。というのも、これまではProと名の付いたモデルであれば、ミリ波での送受信をサポートしていました。しかし、Pixel 9 Pro/9 Pro XLではミリ波対応が見送りに。折りたたみ式のPixel 9 Pro Foldのみのサポートとなりました。
ミリ波は5G携帯電話で一気にクローズアップされた周波数帯です。その特性上、サービスエリア展開は局所的ですが、5Gならではの超高速通信に欠かせません。実際のところ、筆者もミリ波帯で通信したことはほとんどありませんが、これからの5Gには間違いなく必要な技術。総務省ではミリ波対応スマホを巡って割引優遇策も議論されているとのことですから、来年以降はまた状況が変わっているかも知れませんね。
またPixel 9 Pro/9 Pro XLを比較した場合、充電性能が若干違います。Pixel 9 Proは最大27W、Pixel 9 Pro XLは最大37Wで充電できます。つまりPixel 9 Pro XLのほうが充電速度が速い。
ただ、より高容量の充電には、充電器側にそれなりの準備が要ります。37W充電には、現実的には45W充電器が必要。そうした充電器は筐体サイズも大ぶりになりがちです。技術オタク的には後ろ髪ひかれますが、今回は目をつぶっておきます。
ポイント還元次第ではPixel 9 Pro XLを選んだ方がいい?
最後に価格です。筆者は2022年以降、Pixelデバイスは全てGoogle ストアで購入しています。スマホの購入先としてキャリア(携帯電話会社)は有力ですが、Google ストアは割引施策も多く、価格的には負けていません。一括払いも、ストア独自の割賦販売どちらも任意に選択できるのも魅力です。最近のキャリア割引は2年割賦販売が前提になりすぎていて、個人的には不満です。
Google ストアの割引施策とは、次のような感じ。まずPixelの新モデルが発表されると、Googleストアで予約がスタートします。この期間中に予約すると、Google ストアでの買い物に使える「ストアクレジット」が購入者にプレゼントされます。実質的なポイント還元制度ですね。
額は機種によって異なり、Pixel 9 Proでは32,100円、Google Pixel 9 Pro XLは50,100円でした(あくまで予約キャンペーン時の還元額です。還元を一切しない時期もありますので注意)。両機種とも10万円台後半の製品ですが、それでもかなりの額。Google ストアでPixel Watch 3やPixel Buds Pro 2など数万円レベルの製品の購入を予定している人には絶好の特典と言えます。
筆者は容量256GBのモデルを買うのが大前提でした。その販売価格と、還元額を考慮すると、以下のような計算が成り立ちます。
購入機種 | 価格(256GB版) | ストアクレジット還元額 | 実質額 |
Pixel 9 Pro | 174,900円 | 32,100円 | 142,800円 |
Pixel 9 Pro XL | 192,900円 | 50,100円 | 142,800円 |
という訳で、スペックも本体価格も違うのに、ストアクレジットに優遇差があるため、基本的にはどちらを買っても実質額は142,800円で変わりませんでした。好みで買えばOK。今思えば、これも移行期ゆえのGoogleの配慮だったのでしょうか。
であれば、Pixel 9 Pro XLを買うのがスジかもしれませんが、やはり新カテゴリーと聞けば捨て置けない! そんなライター魂(?)からPixel 9 Proを選んだのも確かです。全くもってロジカルさがないですが……ま、いいじゃないですか。
ただPixel 9 Pro XLを避けた理由としては、重量があります。先日Pixel 9 Pro XLのレビュー記事執筆にあたって、実機を1週間~10日程度試用させていただいたのですが、どうしても重く感じてしまったのです。公称重量は221gと、Pixel 8 Proと極端な違いはないのですが、なにか数字以上に差を感じてしまった。そんな事情も、Pixel 9 Proを選んだ背景にありました。
他方、「Google ストアでしか使えないポイントを配って、それを実質額って、そもそもどうよ」という意見はあるでしょう。ただ筆者のように、Google ストアでPixel Buds Pro 2を買おうと心に決めたような方には、この還元施策は刺さるはずです。なおストアクレジットの有効期限は、多くの場合で1年。場合によっては、翌年の新Pixel購入に充当できるかもしれません。
そして下取りです。Pixelの購入に対して、下取りを同時に申し込むことができるのですが、この下取り額の設定が実に絶妙です。とあるモデルを下取りに出すとしても、新たに購入する機種によって下取り価格が変わったり、古めの機種が期間限定でミョーに高額下取りしてくれたりと、なかなか侮れない。かなり前の話になりますが、2022年11月にPixel 7 Proを購入した際、Pixel 4を下取りしてもらったところ、評価額は61,500円でした。その3年前に89,980円で購入したモデルを、それだけの価格で引き取るとは。なかなか驚かされました。
下取りは随時実施されていますが、本稿執筆時に確認したところ、Pixel 9 Pro/9 Pro XLいずれの購入時とも、下取りに出す機種がPixel 8 Proなら88,000円、Pixel 8なら7万円となっていました。なお下取り対象製品(メーカー)はGoogle製だけに限らず、iPhoneやサムスンのGalaxyも含まれています。
ちなみに筆者はPixel 8 Proだけでなく、サブ機としてPixel 8を事前に購入してありました。そこで、下取り機としてはPixel 8を選択。Pixel 8 Proは手元に残してあります(それくらい愛着がありまして……)。
Pixel 8は後に査定が終了し、上限額の7万円が請求から差し引かれました。Google ストアの下取りは本体だけを郵送する方式なので、箱や付属品を紛失してしまっていても、状態が良ければ満額下取りになり得ます。
大画面は捨てがたい! 片手操作をとにかく重視するならPixel 9 Pro
冒頭の内容とも若干重複しますが、筆者がPixel 9 Proの購入にあたって懸念したことがあります。
「大画面スマホを一度味わってしまうと、小型スマホでは物足りなく感じるのではないか?」
大画面スマホは相対的に大きく、重い。価格も高い傾向にあります。しかし、動画視聴時の迫力・鮮烈度は上がり、文書閲覧時の一覧性アップなどのメリットがあるのも確かです。
正直なところ、Pixel 8 ProからPixel 9 Proへ機種変更してみて、一抹の寂しさはあります。YouTubeを見ても、前の方がなにか迫力があったような。電子書籍版のコミックを読んでいて、(拡大縮小のための)タップが少なくて済んでいたような……。そんな要素は数多く、いまだ言葉にまとめきれていません。
スマホの画面サイズは大きい方がいいか? 小さい方がいいか? これを本稿では掲げましたが、筆者の結論は「スマホの画面はデカくあるべき。ただし重量&コストは考慮の上で」──これに尽きます。重量に納得できれば、Pixel 9 Pro XLを選んだほうがよいと考えます(筆者は納得できなかった)。
暴論かも知れませんが、将来的に10型(インチ)・200gのスマホは登場すべきです。そこに向けた具体的なチャレンジが折りたたみスマホでしょう。Pixel 9 Pro Foldは8型、257gまで来ています。価格は25万円を超えますが。
もちろん、一足飛びに輝かしい未来へ到達するはずもないので、段階は踏むことになります。Pixel 9 Proは、6.3型、199gというベーシックなサイズ感で、かつ光学望遠レンズを使いたいユーザーにとって、極めて現実的な選択肢と言えます。Pixel愛好家で片手操作をとにかく重視するユーザーにも最適でしょう。
Pixelの製品発表の場では、日本市場からのフィードバックを元に画面サイズを変えたなどの説明が度々なされています。筆者としては、6.7型以上の画面サイズ感で、なおかつPixel 8 Pro並の210g台(あるいは、それ以下)を再び実現する端末がリリースされれば、改めてそのシリーズに乗り換えるつもりです。ぜひPixelの開発陣の皆さんは、重量にもフォーカスしていただきますよう!