レビュー
有機ELがまぶしい ガーミンのスマートウォッチ「fēnix 8」を試した
2024年10月4日 08:20
2024年8月末頃から販売を開始した、ガーミン最新世代のフラッグシップスマートウォッチ「fēnix 8」。fēnixシリーズをこれまで2つ続けて愛用し、現在fēnix 7 Proを使用している筆者としてはもちろん気になる存在でしたので、ガーミンジャパンにお借りして「fēnix 8 Sapphire AMOLED 47mm」(178,000円)を試してみることにしました。
fēnix 8がどんなスマートウォッチなのか、前世代のfēnix 7 Proとの比較も交えつつレビューしたいと思います。
fēnix 8でできること 最新モデルにおける進化点
ガーミンのスマートウォッチであるfēnixシリーズは、主にスポーツ向け、もしくはビジネス向けに位置付けられ、幅広い用途で活躍するモデルです。ランニングやサイクリングをはじめ、100種類以上のアクティビティをセンサー情報とともに記録でき、睡眠や血中酸素濃度の計測などにより健康管理につながるデータの収集・分析もできます。
内蔵ストレージには地図データや音楽データを保管でき、ナビゲーションさせたり、内蔵ミュージックプレーヤーで音楽再生したりできます。また、タッチ決済サービス「Garmin Pay」を搭載し、Suicaにも対応するので、お店や公共交通での支払いも単体で可能です。
fēnix 8もそうした以前からの機能は引き継いでいますが、外観上最も変化、あるいは進化したと言えるのがディスプレイでしょう。シリーズで初めてAMOLED(有機EL)を採用し、解像度も454×454ドット(今回お借りした47mmサイズの場合)に向上して、これまでにない鮮やかな色合いと精細さで画面表示してくれます。
fēnix 7 Proでは同じ47mmサイズでも260×260ドットでしたので、緻密さで言えば約3倍の差。これによって、普段の文字盤の時計周りに表示される各種ステータスがくっきりと見えるわけですが、なかでも最も恩恵を感じられるのがアクティビティ終了時のステータス表示や地図です。
たとえばランニングなどのアクティビティ後には、その結果として走行ペースや心拍、パワーなどの推移が表示されます。これらが鮮明かつ滑らかなグラフで表現されるため、細部の変動までしっかりチェック可能。fēnix 7 Proでも同じようにグラフ表示はできるものの、画素が粗いため「おまけ」程度な雰囲気がどうしてもありました。
地図を表示させたときにも、その表現力の高さを実感できます。ある程度ズームアウトしても細い道まで見えますし、鮮やかな色合いとコントラストともあいまって、ちゃんと地図として使えるレベルになりました。
fēnix 7 Pro含め、以前のモデルのディスプレイもカラーではありましたが、バッテリーもちを重視しているためか解像度や輝度・コントラストの面では不利な液晶を採用していました。視認性に不都合はありませんでしたが、今回のfēnix 8と比べてしまうと画質的にはさすがに古くささ、チープ感が否めません。このディスプレイ周りの進化だけでも、以前のモデルからfēnix 8に乗り換える価値はあるだろうと思えるほどです。
fēnix 8の使い始めに役立つ「音声コマンド」機能
fēnix 8の新機能のうち最もインパクトの大きなものは音声操作周りです。ケースサイズはほとんど変わらないながらもマイクが追加され(スピーカーは以前のモデルも内蔵)、「音声コマンド」機能に加えて、スマートフォンと連携することによる通話機能と音声アシスタント機能が利用できるようになりました。
なかでも音声コマンド機能は、スマートウォッチとして世代を重ねるごとにできることが増えていっているなかで、ユーザーの大きな助けになるものと感じます。これはfēnix 8の内部機能を素早く実行するためのもので、メニュー画面やボタン長押しなどのショートカットキーから起動し、ウォッチに向かって話しかけると、その言葉を聞き取って目的の機能を実行してくれます。
たとえばアクティビティを始めたいときに「ランを開始」と話しかければ、ランニングの記録を開始する画面に即座に遷移するので、あとは実際にスタートボタンを押すだけ。また、「地図を表示」や「心拍転送モード」などと話すと、すぐに地図画面を表示したり、心拍数をブロードキャストしてサイクルコンピューターなどと連携したりできます。
こうした機能は何度かボタンを押さないとその実行画面にたどり着けなかったり、メニューのどこにあるのかわからず迷ってしまったりすることも少なくないので、特にfēnix 8の使い始めの頃は便利に活用できそうです。
個人的には「3分のタイマーを開始」などと話しかけて、fēnix 8のタイマー機能でカップ麺の出来上がり時間を計るのが特におすすめです。
ところで「fēnix 8の使い始めの頃」と書いたのには理由があります。fēnix 8を使いこなせるようになってくると、音声コマンド機能の活躍の場が限られてくると思われるからです。頻繁に利用する機能というのはだんだん絞られていくもので、そうした特定の機能はショートカットや文字盤の特定箇所の長押しといったより簡便に、素早く実行できる操作で代替できます。
とはいえ、久しぶりに使おうとした機能がどこにあるか忘れてしまうこともありますし、いちいちメニューの奥深くまでポチポチ(または画面タッチで)操作していくのが面倒なときも少なくないので、あった方が便利な機能には違いありません。
スマホ連携の通話と音声アシスタント、便利だけれど注意点も
fēnix 8の通話機能は、Bluetoothでペアリングしているスマートフォンと連携することで実現しています。SIMを内蔵しているわけではないため直接モバイルネットワークには接続できず、Bluetooth経由でスマホ側の機能を利用する形となります。
スマホに電話がかかってきたときに、ウォッチ側の操作で通話を開始し、そのままウォッチのスピーカーとマイクで通話して、最後に通話を終了できるという流れ。このときスマホ側からは、fēnix 8を外部スピーカーフォンとして扱うイメージになります。小さなスピーカーなので騒々しい人混みの中だと聞き取るのが厳しそうですが、騒音の少ない場所であれば問題なくやり取りできます。
ここで注意しておきたいのは、通話で使えるのはウォッチ本体のスピーカーとマイクのみであること。fēnix 8と外部Bluetoothヘッドセットを接続している状態でも、通話開始時には外部Bluetoothヘッドセットは無効になります。ですので、大事な電話のときにはスマホ本体か、スマホと接続したヘッドセットなどを使った方が安全でしょう。
一方、音声アシスタントもBluetooth接続したスマートフォン側の機能を利用するので、音声で指示・操作できる内容もスマホ上でできることに準じます。GoogleもしくはAlexaによる音声アシスタント機能に対応しており、Web検索や音楽検索からの再生、スマートホーム機器の操作など、いろいろな用途で活用できます。
しかし、こちらも注意が必要なところがあります。たとえば音楽再生を指示した場合、その音楽をウォッチのスピーカーで再生できるのですが、ウォッチ上で音声アシスタント機能を実行している間だけ再生され、閉じると再生もストップしてしまいます。再生しながら他の操作はできないので、じっくりリスニングするというよりは、ちょっとした確認に使う程度に留まるでしょう。
Web検索は、Google Geminiを音声アシスタントにした場合は検索結果(AIの応答内容)をウォッチ側で読み上げてくれるので、画面を注視できない場面などではかなり便利。ドライブ中にも使いやすいかもしれません。でも、情報量が多くなりそうな指示なら、音声で聞くよりスマホ画面を見た方が効率的な場面が多そうです。
鮮やか画面でも10日以上もつスタミナは健在
fēnix 8は旧モデルからの正統な進化形といった印象で、とりわけディスプレイの精細さ・鮮やかさは、新規ユーザーはもちろん既存のガーミンユーザーはなおのこと必見のクオリティ。店頭で実際の画面表示を目にできれば、きっとそのまま購入したくなってしまうはず。
機能面では音声操作周りが新要素として目立っています。直接の購入動機になるほどではないかもしれませんが、通話や音声アシスタントがウォッチ側から利用できることで、電話にすぐに出たいとき、スマートホーム機器を文字通り手元から素早く操作したいときなど、役立つ場面は多くありそうです。
音声コマンド機能も、fēnix 8になってメニュー構成が変化し、機能が分散されたところもあるので、新規ユーザーに限らず使い始めの操作の助けになってくれることは間違いありません。
今回試したfēnix 8はソーラー充電非対応のモデルです。24時間装着してほぼ毎日1時間前後のアクティビティ(GPS利用や心拍のブロードキャストなど)の記録にも使ったところ、それでも充電なしで10日間動作するという相変わらずのスタミナを発揮してくれました。
機能が充実しているだけでなく、長時間のアクティビティに対応でき、ライフロガーとしての活用がしやすいのもガーミンのスマートウォッチの強み。これからのスポーツの秋に、ディスプレイ品質が格段に向上した新しいfēnix 8を検討してみてはいかがでしょうか。