レビュー

ガーミンはいいぞ! 最新スマートウォッチ「fēnix 7 Pro」へ乗り換えた

アスリートに高い人気を誇るガーミンのスマートウォッチのなかで、ビジネスユーザーおよびスポーツ用途に向けたモデルが「fēnix」シリーズです。筆者は同シリーズの「fēnix 6S Sapphire Black DLC」(以降、fēnix 6S)を2019年に購入し、以来4年余りに渡って使用してきましたが、2024年1月に後継機種の「fēnix 7 Pro」に切り替えました。

なぜまたガーミンをチョイスし、fēnix 7 Proにしたのか。あくまでも(インドア)サイクリングやランニングを趣味にしている、ガーミンはいいぞおじさんの視点にはなってしまいますが、選んだ理由や魅力などをじっくりお伝えしていきたい思います。

なぜ「fēnix 6S」を買い換えたのか

購入した「fēnix 7 Pro Sapphire Dual Power」

新しく購入したのは「fēnix 7 Pro Sapphire Dual Power」です。fēnixシリーズには最もコンパクトな「S」付きモデルと、最もサイズの大きな「X」付きモデルがありますが、その中間に位置付けられるいわばスタンダードモデル。買い換えによってこれまでのfēnix 6Sから約2世代進化し(現行モデルの前にfēnix 7シリーズもありました)、サイズがひと回り大きくなった、ということになります。

買い換えの一番の理由は単純で、fēnix 6Sのバッテリーが劣化したから。最初の頃はGPSオンかつ音楽再生しながら、5km(20~25分)ほど走ってもせいぜい5%程度のバッテリー消費でした。ところが、3年目あたりからは急激に悪化し、最近は同じ条件下でも2倍以上の消耗、ハーフマラソンほどの距離(約20km、1時間30~40分)だと50%超も消費してしまうようになりました。これだとランニングの前に充電しておかないと不安ですし、目標としているフルマラソンでは最後までもちません。

4年以上活躍してくれた「fēnix 6S Sapphire Black DLC」

メーカー修理によるバッテリー交換(本体交換)にも対応していますが、当然ながらfēnix 6Sの保証は切れているので有償修理となり、同モデルの場合は38,500円以上かかります。2024年の年始はちょうど海外取材直前のタイミングで、滞在中にバッテリー切れさせたくない(充電ケーブルをわざわざ持って行きたくない)と思い、修理に出している余裕もなかったことから、もういっそのこと全部新しくしようと考えfēnix 7 Proに乗り換えることにしたのです(fēnix 6Sはバッテリー交換して今後も使い続けるつもりです)。

保証期間経過後のバッテリー交換は当然ながら有償。fēnix 6S Sapphire Black DLCは修理料金目安が38,500円となっている
実際に修理を申し込んでみると44,000円
ところが本体送付後の見積結果は17,820円。しかも本体ごと交換となったので、かなりありがたい

なぜ「fēnix 7 Pro」を選んだのか

fēnix 6Sは筆者が初めて手に入れた本格的なスマートウォッチでした。それまでは(スリムな)アナログ腕時計しか使ってこなかったため、バッテリー内蔵のゴツいスマートウォッチに忌避感があり、選ぶにあたっては「常時身に付けていても邪魔にならない大きさかどうか」が重要なポイントとなっていました。サイズがあまりに大きいと日常生活はもちろんのことランニング中にもうっとうしく感じるのでは、という懸念もあり、「S」付きのコンパクトなモデルを選んだのです。

当初はこのコンパクトサイズにこだわった

しかし4年以上使い続けた結果、その意識も少し変わってきました。たしかにコンパクトなスマートウォッチは他の人の目に留まりにくく、いかにも「スマートウォッチを使ってるんだぞ」みたいな自己主張も控え目。そんな風にさりげなく自然に使えるのがまさにスマートでいいじゃない? なんて思っていたのですが、最近は「もうちょっと大きくても良さそうだな」と思うようになりました。

決して自己主張を強めたかったわけではなく、これはきっと「慣れ」のせいだと思われます。fēnix 6Sのケースサイズ42mm、1.2型ディスプレイ、240×240ドットというスペックが物足りなくなり、少しでも画面を大きくして、パッと見たときに瞬時に情報を把握できるようにしたいな、と。4年で老眼が進んで見えにくくなった……とは思いたくありませんが、それもあるのかも。

47mm、1.3型、260×260ドットのfēnix 7 Pro(左)と、42mm、1.2型、240×240ドットのfēnix 6S(右)

で、fēnix 7 Proは47mm(1.3型ディスプレイ、260×260ドット)となります。5mmと0.1インチ、20ドットというわずかな差しかありませんが、腕にはめてみると歴然とした違いがあります。店頭のモックアップで確認した限りでは、画面サイズが1.5倍……は言い過ぎですが、それくらい拡大したようなフィーリング。厚みは13.8mmから14.5mmへと若干増加してはいますが、腕からの張り出し具合は全く変わらないように見えました。

腕にはめたときの見た目の違い。左がfēnix 7 Pro(左)
厚みの違い
サイズが大きくなるぶん表示内容も最適化され、情報量も増えている
アクティビティ後の情報表示。fēnix 7 Proは明らかに充実

これが「X」付きのモデルになるとケースサイズがプラス9mm(51mm)、厚みがプラス1.1mm(14.9mm)となって、さすがにインパクト大な見た目になりますし、価格も一段アップします(137,500円から)。「S」付きとfēnix 7 Proはなぜか同一価格(121,000円から。いずれもシリコンバンド)なので、スタンダードサイズのfēnix 7 Proはちょっとおトクです。以前の筆者のように、どうしてもコンパクトサイズにこだわるのでなければ、コストパフォーマンスに優れるfēnix 7 Proがベターと言えます。

ガーミンや「fēnix 7 Pro」の何がいいのか

スマートウォッチを新しくしようと思ったときには、Apple Watchシリーズを候補に入れる人が少なくないと思います。

ですが、筆者には最初からその頭はありませんでした。ガーミンに負けず劣らずスポーツ・アクティビティ向け機能が充実しており、マルチスポーツに強い。しかも通話・通信機能も実現しているなど、Apple Watchの魅力はそれこそたくさんあるものの、純粋にスポーツ用途のウォッチとして見ればいまだガーミンに一日の長があると考えるからです。

fēnix 7 Proのランニング画面。細かいところだけれど、ラップごとの効果音がfēnix 6Sではビープ音に近いものだったのが、fēnix 7 Proでは上品なサウンドになっている

Apple Watchとfēnixシリーズ、それぞれウォッチ単体で得られるアクティビティデータはそれほど変わりません。ですが、Apple Watchは淡々と情報を記録していくだけなのに対し、ガーミンは記録したデータの分析も容易に行なえる設計になっています。ウォッチ本体の機能というよりどちらかというとアプリの作りの問題ではあるのですが、たとえばランニングしたときに得られる「ピッチ(ケイデンス)」「上下動」「接地時間」などの情報を比較するとわかりやすいかと思います。

iPhoneアプリ「フィットネス」のランニングデータ
ガーミンのアプリ「Garmin Connect」のランニングデータ

iPhoneの「フィットネス」アプリではグラフが単色で表され絶対的な数値がわかるだけですが、ガーミンのアプリでは「良し悪し」に応じて異なる色でプロットされ、平均値からの差も含め相対的に把握できます。色分けされた数値の基準値や意味についてもヘルプがあるため、決して分析のプロではない筆者のような素人でもきちんとその「良し悪し」がわかり、少なからず次回以降の走りの改善に役立てることができるのです。たとえ趣味トレの範囲であっても、この違いは実に大きい。

そして、fēnix 5以降などガーミンの一部ウォッチでは、ランニングのデータを補完するためのオプションデバイス「ランニングダイナミクスポッド」(9,240円)も使えます。先ほどの「ピッチ」「上下動」「接地時間」などをより詳細に計測できるだけでなく、「接地時間(GCT)バランス」というランニング中の左右バランスがわかる重要な指標が追加で得られるのです。

ランニングダイナミクスポッド
ランニングダイナミクスポッドがあるとデータが詳細になり、「接地時間(GCT)バランス」もわかるようになる

バランスが偏っていれば片方の脚に負荷がかかっている可能性があり、怪我をしている、もしくは怪我する予兆があることに気付けるかもしれません。また、左右対称に近ければ正しい方向性でランニングできているという自信にもなります。健康のためにランニングするのなら、怪我なく継続的にこなすことが大事。そのうえでより効果的なトレーニングを目指せる方がいいわけで、こうした分析情報は1つでも多く欲しいのです。

「fēnix 7 Pro」の見逃せない重要な機能

さらに付け加えておきたいfēnix 7 Pro(というかfēnixシリーズ)ならではの重要な機能としては、容量の大きな内蔵ストレージ(32GB)があることと、心拍のブロードキャスト機能があること、そしてバッテリー持ちが明らかに長いことです。

1つ目の内蔵ストレージは、あらかじめ音楽データをコピーしておき、ランニングしながらBluetoothイヤフォンで音楽を聞く、といった用途に使えるものです。ウォッチ用のアプリを使えばSpotifyやAmazon Music、ポッドキャストの音楽・音声データを取り込むことも可能で、走っている間は総じてヒマなランニングのお供には欠かせません。

Apple Watchにも同様の機能はありますが、内蔵ストレージの一部しかメディアデータ用には解放されておらず、今のところ最大でも16GB(Apple Watch Ultra 2)。対してfēnixシリーズは32GBフルで使えるのが強みです(地図データなども保管することになるので、メディアデータに使用できる実質容量はそれよりやや少なくなりますが)。

手持ちの音楽データはPC用アプリケーション「Garmin Express」経由でウォッチにコピー可能
SpotifyやAmazon Musicなどの音楽配信サービスとも連携できる
ウォッチ画面上で使用するサービスを選び、楽曲データを転送後、再生
屋外でランニングしながら音楽を聞くときは、骨伝導ヘッドフォンが安全

2つ目の心拍のブロードキャスト機能は、ウォッチ本体の心拍計で得た情報を他のデバイスで受信できるようにするものです。たとえばサイクルコンピュータやZwiftなどのバーチャルサイクリングソフトと連携して、その画面に心拍数を表示できます。ブロードキャスト機能がないウォッチだと別途心拍センサーを装着しなければならず、記録したいアクティビティによっては機能の重複するデバイスを2つ身に付けるという無駄の多い状態になります。が、fēnixシリーズであればそれ単体で済むわけです。

心拍のブロードキャスト機能を備え、他のデバイスの外部心拍計としても使える

最後のバッテリー持ちについては、fēnixシリーズが特に高い優位性をもっている部分でもあります。fēnix 7 Proの場合、通常の「スマートウォッチモード」で約18日間、アウトドアアクティビティを記録するときに利用する「GPSモード」で約57時間、より高精度の測位と音楽再生を同時に行なう「マルチGNSS+音楽再生モード」でも約10時間動作するとしています。

試しに「マルチGNSS+音楽再生モード」でランニング(約10km、45分ほど)してみると、バッテリー消費は6%でした。それ以外の24時間で消費するバッテリーも5~6%なので、フルマラソンを2日連続でこなしても余裕(身体はもちませんが)。アクティビティを記録するだけでなく、日中の心拍や夜間の睡眠をトラッキングする機能を役立たせるためにも、少なくとも数日間は充電なしで稼働してくれるスタミナがないとスマートウォッチとしては意味がありません。そうした点でもfēnixシリーズには大きなアドバンテージがあると思います。

心拍や睡眠トラッキングは毎日継続的に記録してこそ意味があるもの。頻繁に充電が必要になると役に立たない

さらに今回のfēnix 7 Proシリーズは全モデルがソーラー充電対応となり、日光下では自動で補充電され、さらなる稼働時間の延長が期待できます。冬である今の季節は太陽光があまり強くなく、長袖で隠れてしまうことも多いのでそれほど電力は稼げませんが、少しでもプラスアルファのバッテリーもちが実現できるのはありがたいところです。

リング状に盤面に配置されたソーラーパネルで補充電可能。リアルタイムや過去の受光レベルもわかる
時差ボケ軽減のための「時差ぼけアドバイザー」が新たに追加されているのも便利な点
アプリ内のカレンダーから「トリップ」として出発地と目的地を登録
旅行の前から光を避けたり活動的になるべきタイミングなどを通知して、事前に身体を慣らしていける

fēnixシリーズの懸念点と不満点

ここまでガーミンやfēnixシリーズのいいところばかりを書き連ねてきましたが、弱点というか、懸念点みたいなものはあります。1つはバッテリーの劣化により遠くない将来買い換えるか、お金をかけてメンテナンスする羽目になること。これはガーミンに限らず、簡単に電池交換できないスマートウォッチにおいては避けて通れない宿命みたいなものです。

ちなみに前回のfēnix 6Sの購入価格は約10万円でした。だいたい4年で快適に使えなくなりましたから、1年あたり約25,000円の投資になります。新しいfēnix 7 Proの購入価格は約11万円で、同じペースでバッテリーが劣化すると想定すれば、1年あたり約27,500円。言ってみれば月額約2,300円のサブスクです。これを高いとみるか、安いとみるか。まあ、安いと思ったから買ったのですが……。

幸いなことにfēnix 6Sにはそれ以外のハードウェアの劣化は特に見当たらず、有償とはいえバッテリー交換すればさらに長く使い続けられます。fēnix 7 Proのバッテリー交換(修理)料金は52,800円~と少し高めに設定されているものの、こちらも途中で故障さえしなければ5年目以降のコストはぐっと下がるはずです。とはいえ、4、5年もたてば進化した新モデルが発売されているでしょうから、そのときには今回のようにまた乗り換えたくなってしまいそうです。

あと、筆者がかなり不満に思っているのは充電用端子。独自形状の端子に専用ケーブルを接続して充電しますが、fēnix 6Sでは購入後間もなく接触不良が生じました。ちょっとした力加減で充電したり、充電しなかったりします。個体の問題である可能性もありますが、fēnix 7 Proも見たところ同じコネクタで、いずれは同じ症状に悩まされないとも限りません。構造上、汗や垢などが溜まりやすく、衛生的でないのも気になります。ここはできればワイヤレス充電にしてほしいなあ、と強く思います。

充電端子は汗や垢が溜まりやすい。次世代ではぜひとも改善してほしいところ

これから買いたいと思っている人へ

そんなわけで、そこそこマジメにトレーニングに取り組みたい人には鉄板のfēnixシリーズなのですが、これから購入しようと考えている人に向けてアドバイスしておきたいことが2つほどあります。まず1つ目は「バンドは純正品を使うべし」ということ。

fēnixシリーズでは専用バンド(Quickfit)を使用しますが、なんとなく違うバンドで気分を変えたいなと思って見てみると、他の純正バンドは安くても6,000円台となかなかに高価。サードパーティの互換品だと数百円で買えるものがあるので、筆者もfēnix 6S用に2、3種類試しに購入してみたものの、いずれも3カ月以内にバンドホルダーがちぎれて使い物にならなくなりました。一方、最初から付属していた純正バンドは丸々4年たっても何ら問題なく、いまだ現役です。バンドは高くても4年以上もちます。間違いなく純正品がおすすめです。

純正バンドは高価だけれど、少なくとも4年以上もつ高い耐久性がある

もう1つは、傷から守るのを目的に液晶保護フィルムやサードパーティ製カバーなどのオプションを購入する必要はないということ(あくまで筆者の個人的な考えです)。写真で見るとわかる通り、4年以上毎日素のままで使っていたfēnix 6Sの外装には目立つ傷がほとんどありません。写真を拡大してよーく見るとベゼルのエッジが若干荒れているように見えますが、一番気になるのは肌が当たるセンサー部分の擦れた跡くらいでしょうか。

fēnix 6Sのディスプレイ面には傷なし。よく見るとベゼルのエッジが荒れているかな、というくらい
目に見えるのはセンサー部分の擦り傷程度

固い地面に落下させたことこそないものの、壁などには幾度となくぶつけたり擦ったりしていたのに、この状態。サファイアガラスやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)、チタンといった高耐久素材の実力をいかんなく発揮しています。つまり傷がつく心配はほぼありません。日常生活からアウトドアアクティビティまで、24時間365日身に付けて、大いに活用しましょう。ガーミンはいいぞ!

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。