レビュー

新Fire TV Cubeを激推したい 「アレクサ、テレビつけて」を使おう

Amazonの動画再生用デバイスの中でも最上位にあたる製品「Fire TV Cube」が、このほど第3世代モデルへ刷新されました。スマートスピーカーとHDMI接続型動画プレイヤーの一体化によって実現した、独特の利便性は健在です。Fire TV Cube歴2年の筆者が、実際に買い替えてみました。

サブスク見るならテレビ! そんな時こそFire TV

映画やテレビ番組のサブスク動画サービスがここ数年でグッと普及してきました。AmazonのPrime Video、Netflix、Hulu等々……。スマートフォンでいつでもどこでも見られる点がメリットとは言われますが、実は筆者、これらの動画を楽しむのは9割方が自宅。それも「テレビ」を使って、です。

電車の中では降りる時間が気になってあまり集中して見られず、それに2時間の映画を30分ずつ細切れで見るのも性に合わず。幸い、自宅に帰ればWi-Fiがありますし、時間がある時だけテレビでサブスクを楽しむのが一番。見切れないときはもう諦める!……というのが筆者の持論です。

サブスク動画見るなら、やっぱりテレビが一番ですよ

こうした心境に至った背景にあるのが、テレビ視聴用端末の充実っぷり。言わずもがな、AmazonのFire TVシリーズのことです。国内の主要な動画サブスクサービスは、Fire TV対応のアプリをリリースしています。YouTubeの視聴もできます。

Fire TVは2015年に国内で初めて販売され、以後順調に世代を重ねています。似た存在にGoogleのChromecastもありますが、「テレビのHDMI端子に接続して、専用のリモコンで操作する」というシンプルな利用感、シリーズとしての成熟度、そして価格を考慮すると、国内でライバルはほとんどいないと言ってよいでしょう。

Fire TV Cubeのホーム画面。ここから動画アプリなどを選んで再生します

筆者は2年に1回くらいのペースでFire TVを買い替えています。やはり新モデルは画面操作の快適性などが着実に上がるんですよね。そんな訳で10月、Fire TV Cube第3世代モデルの発表に合わせて予約、購入しました。

Fire TV Cubeはシリーズの中でも最上位にあたる製品で、価格は19,980円。同じ4K画質表示に対応した「Fire TV Stick 4K Max」が6,980円ですから、約2.8倍とかなりお高めです。しかし、「Echo」の名称で知られるスマートスピーカー機能が一体化されており、一石二鳥な製品となっています。「アレクサ、○○して」という、音声操作ができる訳です。

なお筆者は2年前に第2世代モデルを購入していたため、買い替え予約キャンペーンが適用され、3,000円引きの16,980円で購入できました。ちなみに12月1日まではAmazonブラックフライデーのため筆者と同じ16,980円です。

Fire TV Cube第3世代モデルのパッケージがこちら

デザイン踏襲、機能面ではWi-Fi 6に新対応

新たに発売された第3世代モデルですが、サイズ感は旧モデルとほとんど変わりません。ギリギリ手に乗るくらいの直方体形状、そして電源は付属のACアダプターから供給します。Fire TV Stickシリーズと異なりUSB電源では動作しません(電源ケーブルの端子形状が異なります)。

Fire TV Cubeをテレビに接続したところ。この写真でライン状に青く光っている部分、天面と正面の境目部分がステータスLEDとなっています

ただ外装は大きく変わりました。これまでは全体的にピカピカの光沢仕上げでしたが、今回は側面部がはスピーカーネットを思わせるファブリック調となりました。第3世代モデルのほうが全体的に落ち着いたトーンとなっていて、個人的には好みです。

側面がファブリック調になりました。光沢感重視の前モデルと比べて落ち着いた感じに。スピーカーとマイクも内蔵されています
電源は専用ACアダプター方式
天面には4つのボタン。上下の+・-はFire TV Cubeから出力される音量の調整、左がマイクミュート、右が音声入力の起動

背面の端子類も、目立たないながらかなり変更が入っています。まず有線LAN端子は本体内蔵となりました。LANケーブルの利用は相対的に減っているとは思いますが、旧モデルは標準の付属品による外付けアダプター対応だったので、喜ぶ方は意外と多いかも?

また、1つだけあるUSB端子は、USBメモリーなどが直接させるAタイプになりました。旧モデルのUSB端子はMicro-Bタイプで変換アダプターが必要なケースが多かったため、ここも地味ながら改善と言えそうです。なおUSBメモリーはFAT32フォーマットのみの対応です。

そして映像用のHDMIは、テレビ接続のためのOUT(出力)端子だけでなく、Fire TV Cube側へ映像を流し込むIN(入力)端子が追加されました。こちらに接続した機器の映像を4K品質にアップグレードしてくれるとのこと。もっと単純に、テレビ側のHDMIの数が足りないという方にも響く仕様でしょう。

全体的に端子類が強化されたのもポイント。配信動画のストリーミングに特化した端末でHDMIの入力があるのはかなり珍しいです

スペック面で最も注目すべきはWi-Fi 6への対応です。旧モデルがWi-Fi 5までの対応でしたので、明確にレベルアップしています。実際の画面でWi-Fi 6接続できているかは確認できないのですが、筆者宅のWi-Fi 6ルーターに接続し、Fire TV Cube設定画面でスピードテストを実施したところ、500Mbps超の速度でリンクしていることが確認できました。

接続ステータス画面

すでに述べたように、Fire TV Cubeはスマートスピーカーとしても使えます。「アレクサ」と話しかけた後、「明日の天気は?」「今何時?」などと続ければ、答えを音声で返してくれます。リモコンのボタンを押したりせずとも、話しかけるだけでOKです。

「アレクサ、テレビつけて」が大抵のテレビで効く! これだけで100点

さて前置きが長くなりました。Fire TV CubeがFire TV StickやChromecast With Google TVと明確に異なる点、それはスマートスピーカー機能を「内蔵」していることです。連携して動作するのではなく、あくまで一体になっている。そしてテレビとはHDMIケーブルで接続されているおかげで、音声操作の適用範囲が非常に広いのです。

実際に音声操作しているところを動画で見てみましょう。組み合わせているテレビは東芝(現TVS REGZA)が2018年に発売した「24S22」。画面サイズ24型と小型で、Wi-Fi非搭載(有線LAN端子はあり)の、最廉価帯モデルです。

「アレクサ、テレビつけて」と話しかけると、実際にテレビの電源が入る! 「なんだ、それぐらいのことか」と思われるかも知れませんが、これがもうとにかく便利なのです。

夕食のお皿を運びながらでも、帰宅して上着を脱ぎながらでも、部屋の反対側にリモコンが落ちていて取りに行くのが面倒くさい時でも、音声だけでテレビの電源がつく。これがたまらなく快感なのです。もちろん「アレクサ、テレビ消して」も有効です。

一部の最新のテレビには、スマートスピーカー連携機能が標準搭載されていて、Fire TV Cubeがなくてもある程度の音声操作ができます。しかし、本稿で示したように、Fire TV Cubeであればちょっと古めのテレビであっても、HDMI機器制御(HDMI-CEC規格)に対応さえしていれば動く。このサポートの広範さこそが魅力です。

ちなみに、このテレビコントロール機能は、第2世代Fire TV Cubeにおいても、アップデートで利用できるようになっています。

さて音声操作のための設定が必要です。そこまで難しくはないのですが、注意したいのは、設定すべき項目が複数あるところ。Fire TV Cubeの設定画面で「機器のコントロール」→「機器の管理」と進んだ先で、「テレビ」と「TV放送」の2項目が登録されていて、なおかつ組み合わせるテレビのメーカー設定などが正しく済んでいる必要があります。特に「TV放送」の登録がなければ「機器を追加」から「ライブTV」を選んで設定を行ないましょう。

設定画面から「機器のコントロール」を選択
「機器の管理」内に「テレビ」と「TV放送」があるのを確認しましょう
「TV放送」がない場合は「機器を追加」から「ライブTV」を選んで設定。画面の案内に従って、都道府県を指定したり、テレビの入力を切り替えましょう

「テレビ」の設定だけでも済んでいれば、テレビ電源のオンオフ、音声操作(アップ、ダウン、消音)、放送波の切り替えは可能です。これに加えて「TV放送」を追加設定すると、チャンネル操作もできるようになります。

ただ正直なところ、この音声操作は、組み合わせるテレビによって機能したりしなかったりするケースがあります。そこで今回、第3世代 Fire TV Cubeと自宅のテレビ(東芝 24S22)の組み合わせにおいて、音声入力に対してどんな挙動となるかを調べてみました。ただし発声の方法、周囲の雑音などによっても結果が変わる可能性もあるため、あくまで参考としてください。

Fire TV Cubeの音声操作

・○……入力した音声に対してほぼ期待通りの操作が実行される

・×……エラーメッセージが再生されてテレビ側に変化が出ない
・△……想定外の挙動が起こる(注記あり)

【基本操作】

テレビつけて ○
テレビ消して ○
音量をアップ ○
音量をダウン ○
ミュート ○
ミュート解除 ○

【放送波操作】

地上デジタルに切り替えて ○
BSに切り替えて ○
CSに切り替えて ○

【地デジ受信中のチャンネル操作・関東圏】

1チャンネルに切り替えて ○
NHKに切り替えて ○
2チャンネルに切り替えて ○
Eテレに切り替えて ×
9チャンネルに切り替えて ○
TOKYO MXに切り替えて ×
BSの1チャンネルに切り替えて ○
チャンネルアップ ○
チャンネルダウン ○

【BSデジタル受信中のチャンネル操作】

1チャンネルに切り替えて ✕
NHK BS1に切り替えて ○
7チャンネルに切り替えて ○
BSテレ東に切り替えて ○
地デジの7チャンネルに切り替えて △(BSの7チャンネルに変わってしまう)

【テレビの電源がオフの状態の操作】

地上デジタルの1チャンネルをつけて ×(テレビがつかない)
同NHK総合をつけて ×(テレビがつかない)
地上デジタルをつけて ×(テレビがつかない)

テレビの電源オンオフや、音量ミュートに関してはほぼ問題ありませんでした。ただチャンネルの指定については、数字で指定するか、本来の名称で指定するかによって、動作したりしなかったりするケースがありました。また放送波を切り替えつつチャンネルを指定するという、やや複雑な音声入力も苦手そうです。

うまく動作しなかった場合は「切り替えて」ではなく「つけて」にしたり、あるいはその逆でも挙動が変わる場合があるので、試してみてください。

もう一声欲しいのが、テレビ電源オフ状態からのチャンネル指定です。今回の検証ではほぼ上手くいきませんでした。可能ならば、ここは改善してほしいところです。

アプリも音声で起動~一部作品ならタイトル指定→即再生も

という訳で、動画を楽しむために導入したFire TV Cubeが、結果としてテレビそのものをパワーアップさせる存在となってくれました。それほど興味のないまま、セール価格でたまたま第2世代モデルを購入したのがきっかけで、まさかここまで肩入れするようになるとは。2年前には想像すらしていませんでした。

なお、動画サービスのアプリについても音声入力は可能です。「アレクサ、イカゲームを再生して」と喋れば、Netflixアプリが起動して該当作品の再生がスタートします。この挙動、結構ビックリすると思いますよ。

「アレクサ、イカゲームを再生して」と喋りかければ、直に作品の再生画面が出てきます。Fire TV Cubeが電源オフの状態からでもOK

また、さまざまな動画サービスで配信されている作品はどうでしょう。例えば「ロッキー4」。実際に試すと、Amazon Prime Videoに登録されている「ロッキー4」が再生されました。ちなみに「花束みたいな恋をした」を指定すると、Amazon Musicが立ち上がって「TRY ME ~私を信じて~」(安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S)がかかったのには驚きました。筆者の滑舌が悪かったからでしょうが(笑)。

作品名指定周りの挙動はかなりワイルドなものの、各動画サービスのアプリを選んで起動するのは確実性が高く、音声入力が便利です。「Netflixを開いて」「Huluを開いて」は言うに及ばず、ABEMA、U-NEXT、DMM、Paraviなど国内勢のアプリも音声入力で起動しました。また、テレビ電源がオフの状態でもこれらのアプリ指定が有効なので、かなり実用的です。

この一覧にあるアプリのほとんどを、音声入力で起動できます

「アレクサ、テレビつけて」がもっと身近になってほしい

Fire TV Cube 第3世代モデルは、シリーズ製品と比較してやや高めの価格設定ではありますが、ここまで述べてきたように“音声でテレビをコントロールできる”という明確なアドバンテージを備えた製品です。スマートスピーカーをまだ持っていないが興味はある、という方にとっては価格面での心理的ハードルが相対的に下がりますし、オススメできる製品かと思います。

ですが個人的には、高くても、スマートスピーカーに興味がなくても、とにかく一度は「アレクサ、テレビつけて」「アレクサ、テレビ消して」の世界を体験して頂きたい! それでだいぶ印象は変わるはずです。我が家の80代の母はITに全く興味がないものの、音声操作の楽しさに触れたのか、たまに「アレクサ、テレビつけて」をやるようになりました。

なおFire TV Cubeは音声操作以外にも、高性能なチップセットを搭載しているという特徴もあります。画面遷移や操作面での処理速度が高いとされ、筆者が実際にリモコン操作をする範囲でも、その効果を感じます。動画をテレビで見る機会が多い、増えているという方にも良い選択肢となるでしょう。

そして最後に、クドいですが「アレクサ、テレビつけて!」を家電店でもスマートホームのショールームでも何でもいいですから一度体験してみてくださいね。

リモコン操作も快適なFire TV Cube。サブスク利用が多い方にもオススメです
森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。