ミニレビュー

Galaxy Watch 8を試す スマートウォッチ3年の進化に驚く

サムスン電子の最新スマートウォッチ「Galaxy Watch 8」シリーズを1週間ほど使ってみました。筆者は、GoogleのPixel Watch初代(2022年10月発売)を日常的に利用しています。スマートウォッチは“使えれば良い派”なので、一度購入してしまえば基本的に壊れるまで使い続けるつもりです。

今回、Galaxy Watch 8を使ってみて感じたのは何よりも軽快さです。物理的な軽さに加え、動作レスポンスもかなり良好で、スクロールやアプリ切り替えなど、日常的な操作が驚くほどスムーズになりました。初代Pixel Watchを使ってきたユーザーにとっては「別物」と言えるレベルの体験差です。当然と言われれば、それまでですがハードウェアとしての進化を感じます。

Galaxy Watch 8(44mm)とGalaxy Watch 8 Classic(41mm)

本体はGalaxy Watch 7よりも11%薄型化。私が試したのは44mmで、腕に着けたまま長時間過ごしても負担が少ないかったです。それもそのはず、常用している初代Pixel Watchは41mmで36g、対するGalaxy Watch 8は44mmで34gなのです。大きいのにも関わらず、それよりも「軽い」のは非常に驚きました。

女性の腕でも大きすぎないバンドサイズ

ディスプレイは最大3,000ニットの高輝度に対応し、屋外でも十分な視認性を確保できます。直射日光下でも文字盤や通知を読み取りやすい点は実用性が高いです。ただし、あらゆる状況で完全に見やすいわけではなく、環境によっては見づらさを感じることもありました。

炎天下の日中でも視認性は良好

Galaxy Watch 8 Classicモデルで復活した回転ベゼルは「カチカチ」という音が心地よく操作性も良好、スクロール操作や画面遷移を直感的に行なえます。

バンドは「Dynamic Lug System」を採用し、ワンタッチで簡単に着脱できる仕様となりました。装着感は良好で、手首にしっかりフィットします。ただし、従来の20mm汎用バンドとは互換性がなく、使えるバンドの選択肢は限られます。専用アダプターを介せばサードパーティ製も利用可能ですが、純正や対応製品に依存する場面が多い点は注意が必要です。

シルバーの部分を押すだけで着脱できる

バッテリー持ちはAlways On Displayをオフにした状態で約1日半です。初回設定を済ませて5日ほどしか利用できていないため、バッテリの最適化はむしろこれから、という側面があるのには注意が必要です。初代Pixel Watch(AODオンで1日程度)よりは改善されていますが、大幅な差とまでは言えません。日常的に使うには問題ありませんが、長時間の旅行やスポーツ用途で充電を忘れると不安が残ります。スマートウォッチ全体の課題ではありますが、さらなる改善を期待したい部分です。

Galaxy Watch 8ならではの特徴として、新しいセンサーを活用した健康管理機能が挙げられます。抗酸化レベル(Antioxidant Index)を測定し、食生活や身体の酸化状態を可視化できるほか、血管負荷(Vascular Load)の計測により心血管の状態を把握できます。睡眠に関しては、睡眠環境レポートや詳細な睡眠コーチングを提供し、概日リズムや睡眠圧を分析して適切な就寝タイミングを提案します。

抗酸化指数はセンサ部分を親指の腹で当てるだけ
筆者の抗酸化指数の結果。低め

ただし、精度については過信できない部分もあります。筆者が併用している指輪型の計測デバイス「Oura Ring 4」と比較したところ、起床時刻に約30分のズレがありました。正確な起床時間を測定するのは難しいですが、体感としてはOura Ring 4のほうが実態に近いと感じています。

睡眠計測は細かく計測しアドバイスをくれる
睡眠コーチはまず7日間寝て基本データを集める必要がある

ソフトウェア面では、最新のWear OS 6とOne UI 8を搭載しています。操作UIは洗練され、アプリ切り替えやタイルのカスタマイズもスムーズになりました。さらに注目すべきは、GoogleのAI「Gemini」を初めて搭載したスマートウォッチである点です。音声操作によるリマインダー設定や情報検索が自然に行なえ、従来のGoogle アシスタントよりも一歩進んだユーザー体験になっています。

「カレーライスの材料をメモしてノートに保存して」などアプリを横断したタスク設定も可能ですが、何よりも便利なのは「自然な会話」での検索でした。筆者が書店で小説を探しているとき、おぼろげに本のタイトルを覚えているだけで、著者名も不明。でもその小説が読みたいというシーンがありました。本の特徴や、断片的なタイトルを伝えて探して貰ったところ、著者名も小説名も正解を出してくれました。これまではスマートフォンを開いてグーグル検索をしてサイトを開く、といった一連の作業を手首だけで完結できるという“手軽さ”を体験できた一幕でした。

カレーライスの具材をGoogle Keepに保存してもらう

同じWear OSを搭載した初代Pixel Watchとの比較では、通知の処理や日常操作が格段に快適になり、スマートウォッチを「常に身につけるデバイス」としてより安心して使えるレベルに引き上げています。一方で、バッテリー持ちは依然として1日半程度にとどまり、バンド互換性も限られます。

それでも、数年利用したスマートウォッチからのアップグレードとしては十分に価値があり、「快適さの違い」を強く実感できる一台と評価できます。

佐々木 翼