ミニレビュー

いま訴えたい「ミニはさみ」の魅力 千円以下の4製品買って使ってみた

写真に写っている4製品を実際に買って、使い比べてみました

「出張帰りの新幹線。缶ビールのお供にと買ったおつまみの袋がガッチリしすぎてて開かない。」

「待望の新刊マンガを店先で購入。さっそく喫茶店で読みたいけど、立ち読み防止ビニールがどうしても切れない。」

「ふと立ち寄ったコンビニ。そういえばクーポン付きレシートを以前にもらっていたが、切り離し忘れていた。そのまま店員さんに渡すのは忍びない。」

細部は違えど、誰もが一度は出くわしたシチュエーションではないでしょうか。筆者は先日、高輪ゲートウェイ駅へ観光に行った際、出店で売っていた和菓子をその場で食べようとしたところ、袋が固くて開きませんでした。

今まさに食べたいのに袋が開かない。ぐぬぬ。そんな時こそ、ミニはさみの出番です。

しかし! 手持ちのボールペンのペン先で袋を突き破る必要はありませんでした。そう、こんなこともあろうかと“ミニはさみ”を持ち歩いていたからです。

正直な話、筆者は特に文具マニアと言うわけではありません。ボールペンの書き味にこだわりはなく、取材用のノートは手帳サイズでさえあればどのメーカー製品でもOK。ゆえにハンズやロフトや伊東屋に入り浸ることはありません。

ただ、冒頭でも書いたように「お出かけ先でも使えるハサミが欲しい」とは何となく思っていました。でも、そんなはさみなんて数はないよなぁ。なんなら鼻毛切りばさみで代用しようかなぁ……と考えを巡らせる中、ある日ふと文具店に立ち寄ってみると、まぁあるのなんの。普通のはさみだけじゃありません。ペンケースに入れたり、ポーチにぶら下げて使えるタイプのミニはさみがビックリするほど陳列されているのです。

しかも、価格はどれも数百円ほど。1,000円を超えるものはむしろ少数派です。これならば、自腹で3~4個買ってみて、使い比べてみるのも面白そうだ……と言うわけで、実践に至りました。

国内メーカー4社のミニはさみ、買ってみました

ではここから、筆者が実際に買ったミニはさみをご紹介しましょう。特別な専門店に足を運んで購入したわけではなく、身近なホームセンターの文具売り場などで購入したものばかりです。なお価格はメーカー公式サイト表記価格、通販サイト販売価格などが混在していますので、ご注意を。

サンスター文具

サンスター文具の「スティッキールはさみ」

サンスター文具といえば、筆箱や消しゴムでおなじみの老舗メーカーというイメージでしたが、2013年にはバンダイナムコグループの傘下に入ったのだそう。そこにまずビックリでしたが、はさみのラインナップ数も莫大です。はさみのブランドだけでも10種類。このうち、持ち運び・携帯性に特化したのが「スティッキールはさみ」で、さらに各シリーズに細分化されています。筆者が購入したのは、もっともスタンダートな「スティッキールはさみ」です(他にロングタイプ、キッズ向けなどが存在します)。

ペン状(円柱状)の見た目で、長さは11cmほど。キャップ式になっているので、これを引き外すと刃が露出します。そしてキャップを外した状態では、バネ仕掛けで刃が自動的に開くので、目標物を切る瞬間だけハンドルに力を入れて刃を閉じ、力を抜いてまた開く……という流れで使っていきます。

見た目はペンのよう。転がり防止の突起が付いています
キャップを外すと、このように刃が開きます。ハンドルに力を入れたときだけ、刃が閉じる(モノを切る)という構造です

今回紹介する商品の中では、刃渡りが約3.5cm(実測値)でもっとも長いです。よって、封筒のように大きめのものを切り進めたいとき、この長さが威力を発揮します。なお余談ですが、飛行機の“国内線の”機内持ち込み手荷物基準では、「刃体6cm以下」「刃先が尖っていない」が一応の目安となっているようです。とはいえ現場によってさまざまな運用が行なわれていると思いますので、持ち込みについてはご注意ください。

実際に使っているところ

プラス

プラスの「フィットカットカーブ ツイッギー ポーチサイズ(SC-100P)」

プラスと言うと、スタンプ一押しで宛名などを覆い隠せる「ケシポン」などが最近ではお馴染みでしょうか。同社のはさみは「フィットカットカーブ」というブランドで展開されていて、さらに携帯式のものには「ツイッギー」の名称が冠されています。筆者が買ったのは、このツイッギーのポーチサイズ版。

全長は実測で10.3cmほど。前述のスティッキールはさみは円柱状でしたが、こちらは四角ばったデザインで、持ち心地は意外に異なります(面取りはしてあるので、ゴツさはなし)。ストラップ穴もあります。

キャップを外しただけでは刃が開かない構造
キャップを外し、さらにスライドロック機構を解除すると、この状態に

構造も結構、違います。キャップを外すとバネで刃が開くという基本の仕組みは共通ですが、ハンドル部にスライドロック機構があり、キャップを単に外しただけでは刃が開きません。親指でハンドルをスライドさせると、はじめて刃が開きます。

ハンドルの形状が非対象デザインになっているのも特徴でしょう。親指で押す側、その他の指で持つ側が明確に分かれており、結果的にホールディング性も良好です。なお公式サイトの記述によると、刃先をかなり丸めてあるため、エチケット用途(恐らくは眉毛切りや鼻毛切り)にも対応できるとしています。

ハンドルの形状が非対象ですが、親指をかける部分が視覚的に分かりやすい

レイメイ藤井

レイメイ藤井の「ポケットハサミ 115mm(SH30)」

オフィス機器などに加え、「Kept」のブランドでペンケースやポーチも展開しているのがレイメイ藤井です。この「ポケットハサミ 115mm」は、今回紹介する中では最も安価な製品にして、キャップ部にはボールペンなどと同様のクリップが付いているのが大きな特徴です。

長さは前述の2製品とほぼ同じ約11cmで、ただし形状は平ため。そのデザインから、裁縫用の糸切りばさみを連想する方も多いでしょう。キャップを外すと刃が開きますが、刃の支点の位置が前述製品と全く違うため、使用感もかなり違います。刃の“開き”が狭く、さらに指をかける位置の関係で刃渡りがかなり短く感じます。

平たい形状。クリップが付いているので、ポケットに簡単に引っかけられます
キャップを外した状態。刃先は結構、鋭いです

刃先が鋭いのもポイントと言えるでしょう。子供に持たせたとき、足に落とすことを考えるとちょっと怖いかも? 一方で、ビニールに何か穴を開けたい用途では活躍するはずです。

親指をかける位置にはギザギザが付いています

クツワ

クツワの「携帯はさみ(淡色リリーズ)SS121」

クツワと言えば、小学生時代に使っていた定規や分度器のメーカーとして、個人的には思い出深いです。カタログには、なわとびのような学童品が並びつつも、大人向け製品もしっかりラインナップしています。

この「携帯はさみ(淡色シリーズ)」は、一見してまったくはさみには見えません。それでいてキャップレス構造が便利です。側面の丸いレバーを横方向にスライドさせると、刃がせり出し、さらにハンドルがバネ仕掛けで開きます。

刃を収納した状態では、はさみとは気付かないかもしれません
側面の丸いレバー(白い部分)をスライドさせると刃先が出ます

本体のサイズは、最も長い部分でも44mmと大変コンパクトです。その分、刃渡りも短いですが、袋にちょっと切れ目を入れたい程度の用途であれば、何ら不満を感じません。チェーンが付属しているので、キーアクセサリー風に持ち歩くのも良さそう。

見た目はかなり独特ですが、バネ効果で刃が大きく開くので、使い勝手は悪くありません

軽くて便利で、しかも安い。はさみの便利さを出先でも

今回紹介したミニはさみは、いわゆる“フツーのはさみ”より、さらに小さな製品です。飾り切りをしたり、ボール紙を切ったり、ステープラーの針を無理矢理外すためのテコ代わりのような使い方は想定されていません。あくまで、切れ込みを入れたり、薄い紙を切ったり、商品タグを外すために使う。これが大前提です。

刃を収納した状態の比較。持ち運んで危なくないよう、配慮されています

そうした限られた用途であっても、ミニはさみは十分に利便性の高い製品だと言えます。コンパクトな形状で、重量はどれも10~20gほど。カバンの中に入れておいてもほとんど負担になりません。慣れないうちは、持ち歩いていることを忘れてしまうほどでしょう。

それでいて、ボールペンのペン先や人間の歯・爪では絶対に代替できない機能を得られる。これがミニはさみの魅力でした。唐突ですが、筆者はリップクリームを自室やら上着のポケットやらカバンやら、そこかしこに準備してあるのですが、ミニはさみもまた、持ち歩くだけでなく、色々な場所に備え付けておけば、毎日がちょっと便利になりそうです。

ミニはさみが1つあれば、どこにいても袋をきれいに開けられます。便利ですよ

さて、紹介した4製品にはそれぞれの魅力があるので、「どれか1つオススメは?」と尋ねられると、答えに窮するところです。

ただ筆者の独断と偏見でよければ、プラスのフィットカットカーブ ツイッギー ポーチサイズは、細かな部分の作り込みに好印象を受けました。またクツワの携帯はさみ(淡色リリーズ)は、圧倒的にコンパクトなので、万一の備えとしてのニーズには特にフィットすると思います。

紹介した4製品以外にも、膨大な量のミニはさみが市中では流通しています。さらにカラーバリエーションも豊富です。どれを買うか迷ってしまうかもしれませんが、まずは身近な文具店に足を運んだ際、安いものであったりデザインが気に入ったものだとか、とにもかくにもまずは1つ、買ってみることをオススメします。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。