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核融合発電施設の候補地を全国公募 30年代に発電実証へ

Starlight Engineは、核融合発電実証を目指す「FAST」プロジェクトについて、実証施設の建設候補地の公募を開始した。核融合発電実証施設の候補地を全国公募する取り組みは国内初。また、初の第三者割当増資によって60.6億円を調達している。

対象は都道府県と政令指定都市で、公募期間は約3カ月。2027年から2028年にかけて候補地を評価、決定し、2035年の運転開始、2038年の発電実証、2040年代の商用運転を目指す。これまでに47都道府県のうち、17の広域自治体がFASTの誘致に関心を示しているという。ただし、具体的な自治体名などは明らかにしていない。

候補地の選定では、敷地面積や地質、災害リスクなどの「土地・自然条件」に加え、電力系統、用水、排水、道路、港湾といった「インフラ・建設条件」を評価する。地域住民や自治体との協力体制、地場産業や研究者を含む人材の集積状況も重視する。

核融合発電は、核分裂を利用する現在の原子力発電と比べ、重大事故に至りにくい特性を持つとされる。核融合反応は核分裂のような連鎖反応ではなく、燃料供給や電源が停止し、プラズマを維持する条件が崩れると反応は停止に向かう。このため、反応の暴走や、核分裂炉の炉心溶融に相当するメルトダウンは原理上起こらない。放射化した構造材から崩壊熱は発生するものの、核分裂炉に比べて限定的で、自然冷却などによって除去できるよう設計することが可能とされている。

一方、燃料として使用するトリチウムは放射性物質であるため、漏えいを防ぐための厳重な閉じ込めや、回収、貯蔵、監視が必要となる。核融合発電は従来の原子力発電より安全性が高いと期待されるが、放射性物質を扱う以上、適切な管理と安全対策が不可欠となる。核融合炉の建設では、候補地でこうした説明を行ないながら理解を得ていくことになる。

また、FASTの建設や運転には、数千人規模の人員が必要になる。地域の企業を含む国内サプライチェーンを構築し、発電実証だけでなく、将来の核融合産業の集積につなげる。

発電出力を最大76MWに拡大

FASTの設計変更も明らかにした。2025年に公表した概念設計では、装置の主半径を約3m、核融合出力を最大50MW、発電出力を最大10MWとしていた。新たな設計では主半径を4mに大型化し、核融合出力を最大200MW、発電出力を最大76MWへ引き上げる。

運転モードについても、外部からプラズマに与えるエネルギーに対する核融合出力の比率を示す「Q値」で、Q=2とQ=10の2種類を想定する。Q=2は投入した加熱エネルギーの2倍、Q=10は10倍の核融合出力を得る運転を指す。Q=2ではプラント全体の統合システムを検証し、Q=10では商用炉に近い条件で発電技術を確認する。

同社は当初の設計を詳細に検討した結果、発電実証から商用化につなげるには、装置を一定程度大型化する必要があると判断したとしている。

FASTは、重水素と三重水素を燃料とするD-T核融合反応を利用した発電システムの実証を目指すプロジェクトで、プラズマ閉じ込め方式として「トカマク型」を採用する。国際熱核融合実験炉(ITER)や日欧共同プロジェクト「JT-60SA」で蓄積された研究成果や、日本のものづくり基盤を活用する点が特徴。

高温超電導コイルを採用し、従来の大型トカマク型装置より小型化しながら、高い核融合出力を目指す。プラズマを発生させるだけでなく、熱の取り出しや発電、保守、遠隔メンテナンスを含むプラント全体の統合運転を検証する。

同社によると、FASTはすでに概念設計を完了しており、現在は工学設計と建設準備の段階に入っている。プロジェクトには京都フュージョニアリングのほか、日立製作所、日揮、丸紅、鹿島建設、京セラ、三井物産、三菱商事、三井不動産などの企業が参画・賛同しているほか、東京大学や東北大学、京都大学、九州大学などとの共同研究も進められている。

初の外部調達で60.6億円

Starlight Engineは、第三者割当増資によって60.6億円を調達したことも発表した。同社にとって初めての外部資金調達で、国内スタートアップとして最大級の規模になるとしている。

今回の資金調達では、グローバル・ブレインがリード投資家を務め、三井不動産、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、関西電力グループ系ファンド、KDDI系ファンド、フジクラ、古河電気工業、京都大学イノベーションキャピタルなど、電力、建設、金融、素材、大学系VC、海外VCを含む17の投資家が参加した。うち1者は非公表。

調達資金は、FASTの工学設計や要素技術の開発・実証、人員の拡充、大学・研究機関との共同研究、サプライチェーンの構築などに充てる。

同社は現在、比較的小規模な組織だが、今後2年間で従業員数を約200人まで拡大する計画。同社では計画の総事業費を1兆円規模と見込んでおり、2028年から2029年にかけては建設準備や長納期品の先行調達を始め、1,000億円オーダーの大型資金調達も実施する。

同社は、日本が蓄積してきたトカマク型装置の研究成果や製造技術を結集し、核融合エネルギーを日本の新たな成長産業に育てる方針。AIやデータセンターの普及に伴う電力需要の増加や、エネルギー安全保障上の課題への対応も掲げている。