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Google、AI活用の次世代核融合開発でCFSと連携強化

Google DeepMindは、核融合エネルギーを開発するCommonwealth Fusion Systems(CFS)との提携を発表した。次世代核融合エネルギーの開発にAIを導入して開発を加速する。

核融合エネルギーの開発では、太陽のエネルギー源でもある核融合を地球上で機能させる必要があるが、このためには1億度を超える温度でプラズマを安定に保つ必要がある。核融合発電ではこれを核融合エネルギー装置内で実現するが、これには複雑な物理学の問題を解決する必要があり、GoogleはAIを使ってこれに取り組んでいる。

核融合エネルギー開発をさらに加速するため、Googleは新たに、CFSとの研究提携を発表した。CFSはトカマク式核融合装置の実証炉「SPARC」によって、核融合エネルギーの開発を行なっている企業。8月には三井物産や三菱商事らを筆頭とする日本企業のコンソーシアムなどから8億6,300万ドルの出資を受けている。また、Googleは6月にCFSと初の商業用核融合発電による電力購入契約も行なっている。

今回のパートナーシップは、Googleが2022年に発表した、AIによるトカマク式核融合プラズマの制御に基づくもの。ディープラーニングによってトカマクの磁石を制御し、複雑なプラズマ形状を安定化できる。この成果をCFSに持ち込むことで、核融合エネルギー発電の実現を加速させる。

トカマク式の運転には、磁気コイル電流、燃料噴射、加熱出力といった、さまざまな「つまみ」を調整する必要があるが、これには無数の選択肢がある。この方法を手動で見つけ出すことは非常に困難だが、オープンソースのプラズマシミュレーション「TORAX」などを活用することで、最も効率的で確実な制御方法を特定できるという。

SPARC断面

SPARCは全力運転を行なうと非常に大きな熱を発するが、この熱対策は、核融合炉内で中性子を受け止めるブランケットを保護するためには非常に重要な意味をもつ。こうした放熱制御にも強化学習を活用することで、従来のアルゴリズムよりも効率の良い制御を可能にすることを目指す。

SPARC内部のプラズマ対向材料(冷却剤)の位置

Googleは、AIの活用について、SPARCの運用最適化だけでなく、AIが将来、核融合発電所の中核となる適応性の高いシステムとなるための基盤を構築しているという。