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au Starlink Direct、SOS代行などサービス拡充 “先手必勝”狙う

KDDIは、スマートフォンと衛星の直接通信サービス「au Starlink Direct」のサービス内容を拡充する。ソフトバンクが4月10日から、NTTドコモが4月27日から“Starlink Direct”のサービスを提供する中、1年先行するKDDIは、実際に利用したユーザーのニーズやデータを武器に「先手必勝」(KDDI門脇氏)を狙うと意気込む。

代理で緊急通報する「SOSセンター」

国内ではまず、5月下旬から「au Starlink Direct SOSセンター」を立ち上げる。これは、110番といった緊急通報に対応していないスターリンクの弱点を補うもので、ユーザーから送られてきた通報内容を元に、SOSセンターが緊急通報受理機関に代理で通報するサービス。日常やアウトドアでのSOSを想定し、SOSセンターは24時間365日体制で稼働する。au Starlink Directのユーザーは無料で利用できる。

au Starlink Direct SOSセンター

SOSセンターはアプリ側で対応する必要があり、まずはKDDIのアプリ「auナビウォーク」「auカーナビ」が5月下旬から対応。夏にはKDDIの「家族の安心ナビ」と、サードパーティ製アプリとして「ヤマレコ」が対応する。

これらのアプリには「衛星SOS」といったボタンが用意され、ボタンを押すと通報内容を入力・選択する画面に遷移する。内容を入力後「通報」ボタンを押すと、所定のフォーマットに沿ったSMSのテキストメッセージが作成され、これを送信することでSOSセンターへの通報が完了する。メッセージ送信はRCSもサポートされる予定。

対応アプリには「衛星SOS」ボタン
通報内容を入力する
アプリで通報ボタンを押す
入力した内容がSMSのテキストメッセージ(下書きした状態)になる。これを送信すればSOSセンターにメッセージが届き、SOSセンターが代理で通報する

また、KDDIが開発に協力する形で、アプリ・サービス提供事業者が独自にSOSサービスを提供するケースもある。ヘリ捜索の「ココヘリ SOSダイレクト」は4月17日から、海上SOSの「マリンコンパス 衛星緊急発報SOS」は夏頃からサービスが開始される。

UQ mobile、対象プランでau Starlink Directが無料

UQ mobileの「コミコミプランバリュー」「トクトクプラン 2」を契約しているユーザーは、au Starlink Directを無料で利用できるようになる。すでにau Starlink Directを利用するためのプランに加入しているユーザーは、5月利用分から手続き不要で無料になる。

海外ローミングに3カ国追加

au Starlink Directの海外ローミングを拡充し、6月からカナダ、9月からフィリピン、2026年内にニュージーランドで使えるようにする。既存のアメリカとあわせ海外ローミングは4カ国に拡大する。対象国では、当面の間は申込み不要で利用できる。

IoT機器も衛星と直接通信

au Starlink Directの技術を応用すれば、LTE対応などのIoT通信モジュールも、衛星との直接通信が可能になる。KDDIは社会課題の解決に貢献するサービスとして「au Starlink Direct for IoT」を発表、これを推進していく。

KDDIは20年以上にわたりIoT向けに6,600万回線を提供。IoTはすでに、暮らしや産業に欠かせない社会インフラになっているという。一方で、地上に構築した通信エリアの人口カバー率が99.9%を実現していても、国土面積の約40%は圏外エリアとして残っており、IoT機器が本領発揮できる場面を制限してきた側面がある。

今後は、これまでIoT機器の設置が困難だった圏外エリアに、衛星と直接通信できるIoT機器を設置することで、大きな負担になっている「人による巡回や目視確認」を減らせるようになる。インフラの分野では、圏外エリアに点在する拠点の検針業務や、物流・集荷拠点の把握・管理について、人が出向かなくてもIoT機器でできるようになる。

また、例えば山間部の獣害対策では、人里から離れた場所に鹿や熊を警戒するセンサーを設置できることで、罠の稼働状況の検知などを含め、これまで以上に予防的な動物の生態調査が可能になるという。

担い手不足や安全面の確保といった課題にも対応。ため池の水位調査、水害対策における河川の上流の調査、山火事の警戒といった分野にも応用できるという。

なお、近年急増している熊の被害について、目撃現場にドローンを急行させて状況を把握する取組みを行なっているが、このドローンの通信機能をau Starlink Directに対応させる検証も進めていく。

「au Starlink Direct for IoT」を発表したKDDI ビジネスグロース事業本部 グロース事業開発本部長の鶴田悟史氏
「au Starlink Direct for IoT」対応のセンサーや通信機器

法人向けの閉域網接続に対応

法人向けの、閉域網の接続サービス「KDDI Wide Area Virtual Switch」(KDDI WVS)では、衛星アンテナで使う「Starlink Business」から閉域網に接続できるサービスを4月30日から提供する。

官公庁や医療機関、インフラ事業者などをはじめとした機密性の高い情報を扱う法人が対象で、災害時などに利用する衛星アンテナ経由の通信でもセキュアな通信環境を確保できるようにする。KDDI WVSは1回線あたり月額14万円だが、スターリンクに対応するプランは月額25万円程度になる見込み。

Starlinkの使いこなしで先行 “先手必勝”

2025年4月からスタートしたau Starlink Directは、利用したユーザーが400万人に上っているほか、対応機種はサービス開始時の倍となる89機種、1,100万台にまで拡大。「Apple Watchまで対応するのはauだけ」(KDDI 執行役員パーソナル事業統括本部長兼事業戦略本部長の門脇誠氏)とアピールする。

KDDI 執行役員パーソナル事業統括本部長兼事業戦略本部長の門脇誠氏

スターリンク関連のさまざまな技術をSpaceXと共同で開発しており、SpaceXからは「世界的にもユニークな取組み」と評価されているという。ドコモとソフトバンクが“Starlink Direct”を発表しており、競合が増える環境の中でも、「auだけがさらに一歩先を行く」(門脇氏)と意気込む。

「いろいろなデータ、ユーザーの声が集まっている。SOSセンターや海上のエリア拡大(24海里)などの改善は、先に提供しているからできること。今後も“先手必勝”でやっていく」(同)と、1年先行した分を強みに変えていく。