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DeepL、吹き替え級のリアルタイム音声翻訳 AIエージェントも

DeepLジャパンは30日、企業向けソリューションに関する説明会を実施した。リアルタイム音声翻訳ソリューション「DeepL Voice」の開発中の新機能として、話者の声質を保ったまま別言語に音声翻訳できる「Voice to Voice翻訳」を発表したほか、企業向け自律型AIエージェント「DeepL Agent」なども紹介された。

まるで吹き替え「Voice to Voice翻訳」

DeepL Voiceは、国際会議での多言語コミュニケーションや、教育現場での双方向授業、グローバルなカスタマーサポートなどに適したリアルタイム音声翻訳ソリューション。

Microsoft TeamsとZoomに対応し、Web会議でリアルタイムに字幕生成する「DeepL Voice for Meetings」と、モバイルアプリで音声からテキスト翻訳ができる「DeepL Voice for Conversations」を提供している。

Voice to Voice翻訳のデモ動画

Voice to Voice翻訳は、話者の声質を維持したままリアルタイムで音声から音声への翻訳が可能な機能。音声を文字起こしする技術や話者の声を再現する技術、低遅延技術を組み合わせることで、発話から翻訳までの待ち時間をなくし、安定した音声翻訳を実現。自然でスムーズな多言語コミュニケーションが可能になるという。

同機能は現在開発中で、年内の正式発表と今後1年以内の提供開始を目指している。日本語への対応も予定している。

同僚のように仕事を進める「DeepL Agent」

DeepL Agentは、同僚のように機能する企業向け自律型AIエージェント。ユーザーが普段使用している言語で指示を出すと、人間が行なうようにPC画面を見て判断し、仮想のキーボードやマウスを用いてタスクを実行する。

CUA(Computer Using Agent)と呼ばれる仕組みを採用しており、API連携を必要とせず、幅広い業務に対応できる点を特徴とする。営業、人事、マーケティング、財務サポートなど、さまざまな部署の繰り返し作業を自動化でき、たとえば、営業リストの作成やデータの集計、レポート生成などを行なえる。

DeepL Agentは、企業利用を想定したセキュリティ要件を満たし、リアルタイム監視や一時停止、レビューなどの機能に加え、人による最終確認を行なえる仕組みも備える。DeepLの言語AIを基盤としており、多言語業務や文脈の理解に強く、グローバルな環境に適している。現在ベータテスト中で、近日中の一般公開を予定している。

なお、DeepLはDeepL Agentを含むソリューションの開発において、「コピー&ペーストを二度としたくない」を共通コンセプトに掲げているといい、各ソリューションの連携を強化して手作業の煩雑さを減らし、生産性向上を目指しているという。

パートナー企業と「言語の壁」解消へ

説明会では、DeepLのパートナー企業として、NECや、同日に提携を発表したマクニカが登壇し、導入の背景や活用状況、ビジネス戦略について話した。

NECは、2012年の事業存続の危機を契機にDXを進めており、現在は「クライアントゼロ」と位置づけて社内DXに取り組んでいる。その一環として、世界で初めてDeepL Voiceを導入し、経営層のメッセージを発信するグループ共通ポータルや、全社データを集約した経営コックピット/ダッシュボードの情報などを、社員が任意の言語で読めるようにしている。

業務プロセスの改革にも、DeepLのソリューションを採用した。海外を経由していた社内サポートの問い合わせ体制を見直し、グローバルヘルプデスクを廃止して日本のサービスデスクに統合。翻訳対応をDeepLが担うことで、対応がシンプルになり、コストは約70%削減。対応スピードの向上にもつながったという。

また、国内大手ディストリビューターとして初めてDeepLと提携するマクニカは、120社を超える販売パートナー網を活用して日本市場でのDeepLの拡大を加速する方針を示した。

あわせて、同社が扱う60以上のソリューションとDeepLを組み合わせた新ツールを開発し、クライアント企業内の言語の壁を解消しつつ、生産性向上を支援する。将来的には、海外市場への展開支援も視野に入れている。