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傘シェアの「アイカサ」 東京メトロ全駅に導入 30年使い捨て傘ゼロへ
2025年6月11日 17:01
東京メトロは、傘のシェアリングサービス「アイカサ」の提供を東京メトロ全駅に拡大する。6月11日より銀座線渋谷駅に設置し、全171駅に順次拡大予定。今後オリジナルデザインの傘も導入を予定している。
アイカサはNature Innovation Group(NIG)が2018年12月に開始したサービスで、現在12都道府県で展開。駅、オフィスビル、商業施設、街などへ合計1,800カ所に設置している。アプリ登録者は75万人を突破。利用料金は、24時間あたり140円の「使った分だけ」プランと、月額280円の「使い放題」プランの2種類を用意している。
東京メトロにおけるアイカサの設置は、22年6月に丸ノ内線後楽園駅と有楽町線新木場駅でスタート。今回の渋谷駅の設置で3駅目となる。
今後、東京メトロ171駅への設置が決定。「具体的な時期は言えないが、3~5年での設置完了が目標」(Nature Innovation Group 代表取締役 丸川 照司氏)としている。
なお東京メトロは180駅が存在するが、他社管理駅となる日比谷線北千住駅、中目黒駅、東西線中野駅、西船橋駅、千代田線代々木上原駅、有楽町線和光市駅、半蔵門線・副都心線渋谷駅、南北線目黒駅は設置対象外となり、171駅への設置となる。
日本ではビニール傘などの使い捨て傘が年間約8,000万本消費されており、街中で放置されたり、コンビニの傘立てに置いていく人も多い。傘の廃棄には費用が発生することがあるほか、生産から廃棄まで余分なCO2排出にもつながっている。こうした状況を変えるために、NIGは2030年までに使い捨て傘の廃棄ゼロを目指す「2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト」を発足。
2022年に中間目標として全国1,000駅への設置を掲げていたが、今回の東京メトロ171駅への設置により中間目標を達成でき、都内では約7割の駅でアイカサが利用可能となる。
東京メトロでは年間75,000本の忘れ物傘があり、10,000本は持ち主に戻るが、60,000本は廃棄されているという。
「アイカサを全駅に導入することで、東京メトロの駅に行けば傘があるという、新しい当たり前を作っていきたいと考えています。環境に関する課題に対しても、アイカサを利用することで資源を大切にする取り組みに参加できると思ってもらえるようにし、雨でも快適に歩ける街を作ることで安心安全とサステナブルな街づくりの発展につなげていければと思います」(東京メトロ 鉄道本部鉄道統括部長 川岸康人氏)
171駅の設置に伴い、東京メトロオリジナルデザインの傘も導入。和柄とモダンデザインをモチーフに、円満、調和といった意味がある七宝つなぎ柄を採用している。オリジナル傘は現在デザインを最終調整中で、4駅目以降の設置時での導入を目標としている。
日テレやつくばエクスプレスのオリジナル傘
「2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト」では、パートナー企業の参画を募っており、現在18社が参画。企業が運営する商業施設や駅などへアイカサを設置するとともに、オリジナルデザインの傘も展開している。
今回、新たに6社が新規参画し、オリジナル傘を制作した。HENNGEは渋谷区全域、東急コミュニティーは渋谷駅周辺、三菱地所・サイモンは佐賀県の鳥栖プレミアム・アウトレット、日本テレビは山手線全駅とみなとみらい線馬車道、桜木町駅、阪神電鉄は阪神全線、首都圏新都市鉄道はつくばエクスプレス線全20駅にオリジナル傘のアイカサを設置する。
なおオリジナル傘は初期設置となり、ユーザーが別のスポットへ返却した場合は元の場所に戻すといった再配置は行なわれない。「傘が旅するのもアイカサのコンセプトです。ユーザーの中には飛行機や新幹線に乗ってオリジナル傘を借り、また別の場所へ返すという人もいます」(丸川氏)
既存の参画企業である関電工と日本公認会計士協会東京会は、2025年モデルのオリジナル傘は晴雨兼用にリニューアル。日傘としても使え、熱中症予防としての利用も推奨している。
なお、佐賀県の鳥栖プレミアム・アウトレットへの設置は、都市圏以外での初の設置事例となる。
「鳥栖プレミアム・アウトレットは屋外型のアウトレットで、春・夏・秋・冬と季節を感じてもらえるのが特徴ですが、雨に関しては年中悩まされています。アウトレット担当者から雨に関して相談があり、今回三菱地所からアイカサさんに提案し、設置が決定しました」(三菱地所・サイモン マーケティング部 シニアマネージャー 泉竜治氏)
今後は地方圏にもアイカサを拡大し、東京だけでなく全国規模で使い捨て傘ゼロを推進していく。