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顔写真から“むくみ”を推定し疾患発見 NECと筑波大が世界初

NECと筑波大学は、疾患や体調の変化などにより皮膚組織に水分がたまる症状である浮腫(むくみ)の度合いを、AIで顔映像から推定する技術を開発した。AIにより顔映像から浮腫を推定する技術は世界初。

浮腫は、腎疾患や心疾患、肝疾患など様々な原因で生じるが、その患者数は透析34万人、心不全120万人と推定されている。浮腫の状態を日常的に確認する技術は、原因となる疾患の状態の変化を把握し、慢性期の悪化防止や早期発見につながるため、その実現が期待されている。

従来、透析患者は浮腫の簡易計測手段として体重計を使用していた。今回開発した、透析患者の顔映像から浮腫の度合いを推定する技術は、従来の体重測定による計測を代替できる精度であることが確認できたという。

スマートフォンやタブレットのカメラで撮影した顔映像で推定が可能。外出先や車いすの利用者でも負荷なく利用できる。場所や環境の制限をうけずにデータが取得できるため、食事や排泄による浮腫度合いの経時変化の分析なども可能。

浮腫による顔の変化はごく僅かで、患者ごとに違いが表れる部分が異なる。そのため利用する患者ごとに浮腫による顔の変化を学習し推定モデルを構築する必要がある。しかし、一人の患者から大量のデータを収集することは患者の負担が大きい。

今回開発した技術では、複数の患者の顔映像から、顔に表出する様々な浮腫の情報を抽出するAIモデルを事前に学習。その際に、浮腫と相関のある体重を教師データとすることで、浮腫の有無や度合いを高精度に事前学習する方式を開発した。

事前学習したAIモデルをベースにすることで、利用する患者のデータが少量でも、その患者の浮腫に合わせたAIモデルを転移学習し、推定精度を高めることができる。人物の顔の検出には、NECの顔認証技術を応用。迅速かつ正確な検出を実現した。

技術検証では39名の透析患者データを使用。透析患者は透析前/後において、浮腫の有/無の変化が生じることと、その際の体重変化が余分な体液の変化とみなせることに着目し、客観性のある教師データとして使用している。

39名から取得した約2万枚の画像を検証した結果、正解率85%で浮腫の有無を判別し、体重変化の平均絶対誤差0.5kgで浮腫の度合いの推定が可能であることが確認できた。この平均絶対誤差は、人が外観から判断が難しい浮腫の変化が判別できる水準で、疾患の悪化の早期発見につながるという。

NECと筑波大学は今後も連携し、更なるデータ集積を図るとともに、医療介護・ヘルスケア分野での具体的応用に関して探索を継続。NECでは2024年度の実用化を目指している。